あなたと歩む未来を取り戻したい。

飛燕 つばさ

文字の大きさ
30 / 51
第一章 恋愛編

第30話 決断

しおりを挟む
 佐々木先生との会話は、私が予想していた以上に洞察に富んでいた。

 驚くべきことに、私が以前から知っている佐々木恵美は、韓国まで整形手術を受けに行って、拓弥君を手に入れるため必死に美を磨いていたという。

 その行動は、彼女が拓弥君に対して非常に熱狂的な愛情を抱いていることを物語っていた。

 私も同じように拓弥君を愛しているが、私の心を悩ませる存在として、新田さんという現在交際している彼氏の存在もあった。

 新田さんは、私に真剣な愛情を注いでくれていることが分かっているし、彼は私を深く理解してくれる素晴らしい人物でもある。

 拓弥君の元へ行かず、新田さんとの未来を歩むことも、私には十分な選択肢であると考えている。

 一方、拓弥君も私との未来を考え、既に行動を起こしてくれていた。

 私が何もしていないのは自分自身の心の問題なのである。

「ねぇ、真由?何か考え事でもしているの?」

 職場のデスクで深刻な思考に耽っていた私の前に、同期であり、友人でもある酒井美鈴が姿を現した。

 美鈴は、私の恋愛事情について時折相談に乗ってくれる存在であり、拓弥君や新田さんについてもよく知っている。

「うん、少し悩んでいたんだ。美鈴、相談に乗ってくれる?」

「それなら、今晩一緒に夕食でも食べながら話そうよ。」

「いいね、ありがとう!」


◇ 魚綱 ◇

 夕闇が迫る中、遥か遠くに明かりが灯る町並みを背景に、私たちは『魚綱』という店に足を踏み入れた。

 美鈴が魚好きであることを理由に、今宵の夕食はここでと決めた。

「乾杯!」

 私たちは、ビールジョッキを音を立てながら合わせ、料理を口に運ぶ。

 繊細な味わいの刺身は、東京随一の市場から直接仕入れたものであり、舌を包み込む美味しさにうっとりする。

 アジやイカのフライも、サクサクの衣にジューシーな身が絶妙に調和している。

 ただ単に美味しいだけでなく、その一皿一皿に、料理人の技と心意気が感じられた。

「それで、一体何をお悩みなのかしら?」

「大学時代の交際相手の拓弥君のことなんだけど…。」

「ああ、悪女に嵌められて別れたっていう彼ね。」

「うん。最近になってお互いに誤解していたことが分かったのよ。」

「へぇ。それは良かったわね。それで?」

「私もだけど、彼もずっと私を想ってくれていたことが分かって、嬉しいんだけどさ…。」

「ああ。新田さんかぁ…。そりゃ悩むね。あれは、優良物件よ。馬鹿がつくほどお人好しだから。それでも元彼がいいから悩んでる?」

「うん。それにこれは私の心の問題で、新田さんには非はないから…。」

「それなら、元彼の方をを諦めるの?」

「諦めないわ。彼との未来は、大学時代からずっと思い描いていたことだもの。」

「そう。それがハッキリしているなら迷うことなんてないんじゃない?」

「うん。そうなんだけどさ…。」

「後は、あなたが正直な気持ちを新田さんにぶつけるだけだわ。それは、お互いが傷つく結果になると思う。でも、新田さんを大切に思うなら真摯に向き合ってしっかりとケジメをつけるべきだと思うわ…。」

「そうよね…美鈴、ありがとう!」

 その後も相談は続き、美鈴との時間は過ぎて行った…。


◇ 自宅マンション  21:38 ◇

「もしもし、真由ちゃん?どうした?」

 私は、自宅に着いて直ぐに新田さんに連絡をした。

 美鈴との話で覚悟が出来たことや、問題を先延ばしにできないと判断したからである。

「あの、新田さん。お話したいことがあるので、時間を作って貰えませんか?」

「うん。わかった…。24日のクリスマスイブの日はどう?」

「え…っと、その日はちょっと…。」

 自分の気持ちを正直に伝えるつもりなのに、私の誕生日でクリスマスイブは厳しいと思った。

「話って佐野君のことでしょ?俺は構わないから、その日にしよう。」

「えっ…。」

 新田さん、いきなり拓弥君の名前を上げてきた。

 私が何を言うつもりなのかわかっているのだろうか…。でも、新田さんなりに何か考えがあるのかもしれない。

「わかりました。」

「よし、決まり。じゃあ、当日はタクシーで迎えに行くから、食事しに行こう。」

「はい。ありがとうございます。」

 結局、クリスマスイブに会うことになってしまった。

 こんな特別な日に、私は特別な話がきちんとできるのだろうか?

 私は不安になっていたのであった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...