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第一章 恋愛編
第31話 クリスマスイブ(前編)
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今日は、クリスマスイブ。
そして、私の誕生日でもあった。
今日は、新田さんがクリスマスイブと私の誕生日を祝ってくれるようだ。
自宅マンションの前で待っていると、一台のタクシーが目の前で停車する。
「真由ちゃん、お待たせ!」
スマートカジュアルな服装に身を包んだ新田さんが現れた。
いつもと雰囲気が違い、格好良い新田さんであった。
「新田さん。格好良い服装ですね!」
「ははっ、そう?」
照れ臭そうに応える新田さん。
これからタクシーで食事に向かう。
震災から一ヶ月が経過し、東京は少しずつ活気を取り戻していた。
クリスマスのネオンが街を彩り、色鮮やかな光が空気を満たしていた。
私達のタクシーは銀座の一角で停車した。
訪れた場所は『海光』という名の天ぷら店だった。
この店は、三ツ星を誇る名店として知られている。
◇ 海光 ◇
雑居ビルの中にひっそりと佇む店舗は、和のイメージが美しく表現され、品位ある佇まいをしていた。
板前さんと対面するように設置されたカウンターに、丁重に案内されて腰を下ろす。
この場所ならば、揚げている様子を楽しんだり、揚げたての天ぷらをすぐに頂けるとのことのことだった。
私の目の前で、食欲をそそる揚げ物の香りが漂ってきた。
油が弾ける音がするたびに、私の期待もどんどん高まっていった。
現在旬な野菜や、一般的なイカやエビなどの素材だけでなく、フグや鯛、アワビのような食材も並ぶ。
未知の味わいを求めて、心は高揚する。
揚げたての天ぷらが目の前に現れた。
レンコンとカブの野菜の天ぷらだ。
サクサクとしたころもと、素材の食感を存分に楽しむことができる。
私は思わず感嘆の声を漏らし、新田さんと目が合った。
「美味しい!」
思わず声を上げて、新田さんと顔を見合わせた。
新田さんも微笑みながら、うなずいていた。
「初めて来たけど、こんなに美味しいとは思わなかったよ。マスター、最高だね!」
新田さんは、初対面相手でも臆せずに話しかけられる所は、凄い所だと思う。
彼に友達が多いのも頷ける。
その後も美味しい食材が次々と登場し、私たちのお腹は満たされたのであった。
「真由ちゃん、喜んで貰えた?」
「ええ、とっても!こんなに美味しい天ぷらは初めてです。」
「それは良かったよ。俺は真由ちゃんが笑顔で食べている様子を見るのが大好きなんだよな。」
「新田さん…。」
「あっ、そうそう。これ、真由ちゃんへの誕生日プレゼントだよ。おめでとう!」
新田さんが差し出したのは、腕時計だった。
ブランドのオシャレなデザインで、仕事に付けていても問題のない物である。
恐らくは、そこまで考えて選んでくれたのだろう。
「あ、ありがとうございます!でも、こんな高価な物頂いてしまっていいんでしょうか?」
「当たり前でしょ?真由ちゃんの為に買ったんだから、貰ってくれなきゃこっちが困るよ。」
「新田さん、ありがとうございます。」
「へへっ。喜んで貰えて良かったよ。」
新田さんから頂いたプレゼントは、大変高価な腕時計だった。
この店も高価だと思うし、新田さんのお財布は大丈夫なのだろうか…。
最後に締めのデザートを頂き、私たちは天ぷらの専門店を後にした。
名店と言われるだけあって、これまでの常識を覆す程の天ぷらは初めてだった。
新田さんとの会話も楽しく、心地よい時間を過ごすことができた。
食事を終え、再びタクシーに乗り込むと、車窓の風景が変わっていく。
街の喧騒から少し離れ、静かな夜の街を進んでいく。
私たちは、今度向かう場所である『夕涼みの丘公園』を目指していた。
その公園は、高台に位置しているため、一望に東京の夜景を見渡すことができるという。
近年評判のスポットであり、私たちも初めて訪れる場所に興味を引かれていた。
しかしながら、私はこれから新田さんに伝えなくてはいけないことを考えると、車から覗く美しい景色など楽しむ余裕は無かったのであった…。
◇ 夕涼みの丘公園 ◇
タクシーから降りて二人肩を並べて歩く…。
夜空が漆黒に染まり、東京の夜景をより美しく引き立てている。
私たちは、展望台へ足を運び夜景を眺める。
「わぁ。凄く綺麗!」
夕涼みの丘から見る夜景は、まるで宝石のようだ。
点々と輝くビルの灯りが、まばゆい光の海を作り出している。
遠くに見えるスカイツリーやレインボーブリッジは、幻想的で美しい。
夜風に吹かれながら、息を呑むほどの景色に心が躍る。
「そうだね、最後に真由ちゃんと見たかったから…。」
「えっ、最後って…。」
「真由ちゃん。俺に話があるんでしょ?大丈夫だから聞かせてくれないかな。」
(もしかしたら新田さんは…。)
私は覚悟を決めて口を開いた。
「ごめんなさい、新田さん。私は、大学時代からずっと想い続けている方がいます。元々は、お付き合いしていたんですけど、誤解が元で別れてしまいました。しかし、彼のことを忘れることができず、その後もずっと心の奥底で愛情を抱き続けていたのです。私は、ずっと望んではいましたが、彼との復縁は無理だと分かっていたいたのです。その矢先に新田さんのアプローチを受けました。お受けするか悩みましたが、新田さんの人柄や雰囲気を気に入り、お受けして今日に至ります。でも、彼に抱いた愛情は簡単に消すことができず、そのことを隠しながら新田さんとはお付き合いを続けてきたのです。」
「その彼というのが佐野君だね?」
「はい。拓弥君との再会は本当に偶然でした。地震があった日、いつもの様にウォーキングに出かけた先で彼に会ったのです。そして、話し始めた矢先に地震による地盤沈下に巻き込まれて、二人は地下の空間に閉じ込められてしまいました。約一日の間、協力し合いながら困難を乗り切りました。この時から、心の奥底に隠していた小さな火が炎に変わったのを実感したのです。その後も手術を受けた拓弥君のお見舞いをしたり、通院の時に何度か会うことになって、どんどん心の抑制が効かなくなっていったのです。新田さんという方がいながら申し訳ありません。」
「そうだったんだね。俺も真由ちゃんの心境の変化には気づいていたんだ。でも、真由ちゃんからの愛情を佐野君から勝ち取ることが出来なかった…。」
新田さんは遠くに浮かぶ夜景に目を送ると、寂しいそうな表情を浮かべながらそう言った。
「俺は、真由ちゃんを幸せにしたかった。真由ちゃんの笑顔を守りたかったんだ。でも、俺では役不足だと気づいてしまったんだよ。だから…俺は、俺の愛する真由ちゃんの笑顔を守る為に、後のことを彼に任せることにしたんだ。」
新田さんはそう言うと、後ろを振り向いてから茂みの方に向かって声をかけた。
「おーい!」
「えっ!?新田さん、どういうことですか?」
暗がりから姿を現したのは、拓弥君だったのだ…。
そして、私の誕生日でもあった。
今日は、新田さんがクリスマスイブと私の誕生日を祝ってくれるようだ。
自宅マンションの前で待っていると、一台のタクシーが目の前で停車する。
「真由ちゃん、お待たせ!」
スマートカジュアルな服装に身を包んだ新田さんが現れた。
いつもと雰囲気が違い、格好良い新田さんであった。
「新田さん。格好良い服装ですね!」
「ははっ、そう?」
照れ臭そうに応える新田さん。
これからタクシーで食事に向かう。
震災から一ヶ月が経過し、東京は少しずつ活気を取り戻していた。
クリスマスのネオンが街を彩り、色鮮やかな光が空気を満たしていた。
私達のタクシーは銀座の一角で停車した。
訪れた場所は『海光』という名の天ぷら店だった。
この店は、三ツ星を誇る名店として知られている。
◇ 海光 ◇
雑居ビルの中にひっそりと佇む店舗は、和のイメージが美しく表現され、品位ある佇まいをしていた。
板前さんと対面するように設置されたカウンターに、丁重に案内されて腰を下ろす。
この場所ならば、揚げている様子を楽しんだり、揚げたての天ぷらをすぐに頂けるとのことのことだった。
私の目の前で、食欲をそそる揚げ物の香りが漂ってきた。
油が弾ける音がするたびに、私の期待もどんどん高まっていった。
現在旬な野菜や、一般的なイカやエビなどの素材だけでなく、フグや鯛、アワビのような食材も並ぶ。
未知の味わいを求めて、心は高揚する。
揚げたての天ぷらが目の前に現れた。
レンコンとカブの野菜の天ぷらだ。
サクサクとしたころもと、素材の食感を存分に楽しむことができる。
私は思わず感嘆の声を漏らし、新田さんと目が合った。
「美味しい!」
思わず声を上げて、新田さんと顔を見合わせた。
新田さんも微笑みながら、うなずいていた。
「初めて来たけど、こんなに美味しいとは思わなかったよ。マスター、最高だね!」
新田さんは、初対面相手でも臆せずに話しかけられる所は、凄い所だと思う。
彼に友達が多いのも頷ける。
その後も美味しい食材が次々と登場し、私たちのお腹は満たされたのであった。
「真由ちゃん、喜んで貰えた?」
「ええ、とっても!こんなに美味しい天ぷらは初めてです。」
「それは良かったよ。俺は真由ちゃんが笑顔で食べている様子を見るのが大好きなんだよな。」
「新田さん…。」
「あっ、そうそう。これ、真由ちゃんへの誕生日プレゼントだよ。おめでとう!」
新田さんが差し出したのは、腕時計だった。
ブランドのオシャレなデザインで、仕事に付けていても問題のない物である。
恐らくは、そこまで考えて選んでくれたのだろう。
「あ、ありがとうございます!でも、こんな高価な物頂いてしまっていいんでしょうか?」
「当たり前でしょ?真由ちゃんの為に買ったんだから、貰ってくれなきゃこっちが困るよ。」
「新田さん、ありがとうございます。」
「へへっ。喜んで貰えて良かったよ。」
新田さんから頂いたプレゼントは、大変高価な腕時計だった。
この店も高価だと思うし、新田さんのお財布は大丈夫なのだろうか…。
最後に締めのデザートを頂き、私たちは天ぷらの専門店を後にした。
名店と言われるだけあって、これまでの常識を覆す程の天ぷらは初めてだった。
新田さんとの会話も楽しく、心地よい時間を過ごすことができた。
食事を終え、再びタクシーに乗り込むと、車窓の風景が変わっていく。
街の喧騒から少し離れ、静かな夜の街を進んでいく。
私たちは、今度向かう場所である『夕涼みの丘公園』を目指していた。
その公園は、高台に位置しているため、一望に東京の夜景を見渡すことができるという。
近年評判のスポットであり、私たちも初めて訪れる場所に興味を引かれていた。
しかしながら、私はこれから新田さんに伝えなくてはいけないことを考えると、車から覗く美しい景色など楽しむ余裕は無かったのであった…。
◇ 夕涼みの丘公園 ◇
タクシーから降りて二人肩を並べて歩く…。
夜空が漆黒に染まり、東京の夜景をより美しく引き立てている。
私たちは、展望台へ足を運び夜景を眺める。
「わぁ。凄く綺麗!」
夕涼みの丘から見る夜景は、まるで宝石のようだ。
点々と輝くビルの灯りが、まばゆい光の海を作り出している。
遠くに見えるスカイツリーやレインボーブリッジは、幻想的で美しい。
夜風に吹かれながら、息を呑むほどの景色に心が躍る。
「そうだね、最後に真由ちゃんと見たかったから…。」
「えっ、最後って…。」
「真由ちゃん。俺に話があるんでしょ?大丈夫だから聞かせてくれないかな。」
(もしかしたら新田さんは…。)
私は覚悟を決めて口を開いた。
「ごめんなさい、新田さん。私は、大学時代からずっと想い続けている方がいます。元々は、お付き合いしていたんですけど、誤解が元で別れてしまいました。しかし、彼のことを忘れることができず、その後もずっと心の奥底で愛情を抱き続けていたのです。私は、ずっと望んではいましたが、彼との復縁は無理だと分かっていたいたのです。その矢先に新田さんのアプローチを受けました。お受けするか悩みましたが、新田さんの人柄や雰囲気を気に入り、お受けして今日に至ります。でも、彼に抱いた愛情は簡単に消すことができず、そのことを隠しながら新田さんとはお付き合いを続けてきたのです。」
「その彼というのが佐野君だね?」
「はい。拓弥君との再会は本当に偶然でした。地震があった日、いつもの様にウォーキングに出かけた先で彼に会ったのです。そして、話し始めた矢先に地震による地盤沈下に巻き込まれて、二人は地下の空間に閉じ込められてしまいました。約一日の間、協力し合いながら困難を乗り切りました。この時から、心の奥底に隠していた小さな火が炎に変わったのを実感したのです。その後も手術を受けた拓弥君のお見舞いをしたり、通院の時に何度か会うことになって、どんどん心の抑制が効かなくなっていったのです。新田さんという方がいながら申し訳ありません。」
「そうだったんだね。俺も真由ちゃんの心境の変化には気づいていたんだ。でも、真由ちゃんからの愛情を佐野君から勝ち取ることが出来なかった…。」
新田さんは遠くに浮かぶ夜景に目を送ると、寂しいそうな表情を浮かべながらそう言った。
「俺は、真由ちゃんを幸せにしたかった。真由ちゃんの笑顔を守りたかったんだ。でも、俺では役不足だと気づいてしまったんだよ。だから…俺は、俺の愛する真由ちゃんの笑顔を守る為に、後のことを彼に任せることにしたんだ。」
新田さんはそう言うと、後ろを振り向いてから茂みの方に向かって声をかけた。
「おーい!」
「えっ!?新田さん、どういうことですか?」
暗がりから姿を現したのは、拓弥君だったのだ…。
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