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48話 亜国
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「すごい…!本当に、空を飛んでるのね!」
歓声を上げた瞬間、私は生まれて初めて、広大な世界を空から見下ろしていた。
船体がふわりと浮かぶ感覚──浮遊石が空間を押し上げているらしく、まるで空そのものに抱きかかえられているようだった。
その一方で、飛空船のあちらこちらに取り付けられたプロペラが、魔導モーターの力によって「ウィィィン…。」という規則的な回転音を立てながら回っている。
空気を切り裂くプロペラの風が、甲板に柔らかな振動を伝えてくるたび、私はまさに空を滑っているという実感を得た。
飛空船が高高度に安定した頃、フリーゼの街並みが、まるで手のひらの上に置かれた模型のように小さくなり、やがて靄の向こうに飲まれるように消えていく。
胸の鼓動を感じる。
これからどんな景色が待ち受けているのだろう──そんな期待が、心の奥底から湧き上がった。
「喜んでもらえて何よりだ。──残るメモリーピースを手に入れるためには、この飛空船がどうしても必要だったからね。」
隣に立つレオさんが、いたずらっぽく目を細めて笑った。
陽光に照らされた黒髪が、風に揺れてきらめく。
彼が造り上げた飛空船は、白銀の船体を光らせながら大空を滑るように進んでいる。
私たちは今、西方の獣王国を離れ、遥か東にある「亜人の国」を目指していた。
「それにしても…レオさんって本当に規格外ですよね!どうやってこんな凄いものを…?」
思わず訊ねると、レオさんは肩をすくめた。
「前の世界で得た知識と、こっちの世界の錬金術、錬成術、魔導工学。それらを組み合わせた結果だよ。──あとは、獣王陛下から褒美にいただいた浮遊石の力もね。」
彼の興味深い話に、私は目を輝かせた。
「でも、こんなに高い空を飛んでいて、今どこにいるのか、分からなくならないんですか?」
「ふふ、いい質問だ。私自身の能力でも把握できるが、乗組員のために「GPS付きマップ」という魔導具を造ったのさ。」
「じーぴー…えす?」
「自動で現在地を地図上に示してくれる魔導具さ。これがあれば、迷うことなく最短ルートを進める。」
「へえぇ…。」
耳で理解しても、頭が追いつかない。私は首を傾げながら感嘆の声を漏らした。
「はは、無理もない。──さて、これから丸一日は空の旅だ。ゆっくりと楽しみたまえ。」
レオさんは軽やかに手を振り、船室へと去っていった。
甲板には心地よい風が流れている。強風を遮るための魔法障壁が張られているらしく、まるで春のそよ風に包まれているかのようだ。
私は風に髪を遊ばせながら、しばらく青空を眺めていた。
──世界はこんなにも広いんだ。
胸に込み上げる感動を抱きながら、私は船室へと戻った。
内部は、まるで王都の高級宿そのものだった。
五人分の個室、広々とした客室、気品漂うダイニングルーム、設備の整ったキッチン、そして贅沢な浴室──。
重厚なカーペットの上を歩くたび、心までもふわりと浮かぶようだ。
まさか、空の上でこんな贅沢な空間を味わえるとは思いもしなかった。
ふかふかのベッドの上に寝転ぶと、自然に瞼が重くのしかかっていった…。
* * *
「ガルーダ接近!」
突如、操縦デッキからバルドーさんの声が船内に響き渡った。
デッキに備え付けられた「拡声管」は、金属製のパイプを通じて船中のあらゆる場所に声を伝える仕組みだ。どうやらレオさんが考案したものらしい。
その声を耳にした瞬間、私は胸騒ぎを覚え、操縦デッキへ駆けつけた。そこでは既に仲間たちが集まっており、誰もが険しい表情でレオさんの指示を待っている。
「ガルーダ…?あの、巨大な怪鳥の?」
私はその名を聞いただけで背筋が凍る思いだった。
地上ですら、Aランク冒険者たちが束になって挑むような相手──空中でどう戦えというのだろう?
「…キサラギ氏、無理だ。この高さじゃ、まともに戦えない。」
グレイさんが苦々しく告げる。
確かに、ここは空。地に足がつかない戦場では、近接戦闘など絶望的だ。弓矢や魔法なら、可能性はあるかもしれないが──命中させる自信はない。
「空には空の戦い方がある。安心しろ──ニャメルネ、砲撃準備!」
レオさんが指示を飛ばす。
「はいニャア!」
ニャメルネさんは素早く、甲板に設置された小部屋へ駆け込み、大砲を操る。
突き出た砲身が、陽光を浴びて鈍く輝く。
「ニャメルネ、撃て!」
「ニャアッ!」
──《ドンッ!!》
雷鳴にも似た轟音が甲板に響き渡る。
火と煙が砲口から噴き出し、鋼鉄の弾丸が風を切って飛び出した。
「グギャァァァッ!!」
直撃…。
巨大な怪鳥ガルーダは、絶叫とともに羽ばたきを乱し、真っ逆さまに墜落していった。
「やったニャ!」
「よくやった、ニャメルネ!」
レオさんとニャメルネさんが満足げに笑い合う。
「レオさん、今のは……?」
「大砲だよ。火魔法と風魔法を組み合わせて、鉄球を撃ち出す魔導具だ。」
「なるほど…!」
私は砲台を見回した。
甲板には、ほかにも同じような砲台が並んでいる。これなら、誰でも簡単に扱えるかもしれない。
「レオさん、私にも扱えますか?」
「勿論だ!これは、魔法適正を無視して扱えるようにしてある。魔力充填し、狙いを定め、発射するだけ。簡単だろ?」
「なるほど、私にもできそうです。」
私はレオさんに大砲なる魔導具の取り扱いを習った。今後、魔物の襲撃があった際には役にたてそうだ。
この後も空の魔物に何度か遭遇したが、砲台の力でことごとく撃退できた。
「アニキ、見えたぜ!亜人の大陸だ。」
「ご苦労さま。最果てにあるあの集落の近くに着陸してみよう。」
「了解だ!」
──こうして私たちは、無事、「亜人の国」を見つけその地に足を踏み入れることになったのであった…。
歓声を上げた瞬間、私は生まれて初めて、広大な世界を空から見下ろしていた。
船体がふわりと浮かぶ感覚──浮遊石が空間を押し上げているらしく、まるで空そのものに抱きかかえられているようだった。
その一方で、飛空船のあちらこちらに取り付けられたプロペラが、魔導モーターの力によって「ウィィィン…。」という規則的な回転音を立てながら回っている。
空気を切り裂くプロペラの風が、甲板に柔らかな振動を伝えてくるたび、私はまさに空を滑っているという実感を得た。
飛空船が高高度に安定した頃、フリーゼの街並みが、まるで手のひらの上に置かれた模型のように小さくなり、やがて靄の向こうに飲まれるように消えていく。
胸の鼓動を感じる。
これからどんな景色が待ち受けているのだろう──そんな期待が、心の奥底から湧き上がった。
「喜んでもらえて何よりだ。──残るメモリーピースを手に入れるためには、この飛空船がどうしても必要だったからね。」
隣に立つレオさんが、いたずらっぽく目を細めて笑った。
陽光に照らされた黒髪が、風に揺れてきらめく。
彼が造り上げた飛空船は、白銀の船体を光らせながら大空を滑るように進んでいる。
私たちは今、西方の獣王国を離れ、遥か東にある「亜人の国」を目指していた。
「それにしても…レオさんって本当に規格外ですよね!どうやってこんな凄いものを…?」
思わず訊ねると、レオさんは肩をすくめた。
「前の世界で得た知識と、こっちの世界の錬金術、錬成術、魔導工学。それらを組み合わせた結果だよ。──あとは、獣王陛下から褒美にいただいた浮遊石の力もね。」
彼の興味深い話に、私は目を輝かせた。
「でも、こんなに高い空を飛んでいて、今どこにいるのか、分からなくならないんですか?」
「ふふ、いい質問だ。私自身の能力でも把握できるが、乗組員のために「GPS付きマップ」という魔導具を造ったのさ。」
「じーぴー…えす?」
「自動で現在地を地図上に示してくれる魔導具さ。これがあれば、迷うことなく最短ルートを進める。」
「へえぇ…。」
耳で理解しても、頭が追いつかない。私は首を傾げながら感嘆の声を漏らした。
「はは、無理もない。──さて、これから丸一日は空の旅だ。ゆっくりと楽しみたまえ。」
レオさんは軽やかに手を振り、船室へと去っていった。
甲板には心地よい風が流れている。強風を遮るための魔法障壁が張られているらしく、まるで春のそよ風に包まれているかのようだ。
私は風に髪を遊ばせながら、しばらく青空を眺めていた。
──世界はこんなにも広いんだ。
胸に込み上げる感動を抱きながら、私は船室へと戻った。
内部は、まるで王都の高級宿そのものだった。
五人分の個室、広々とした客室、気品漂うダイニングルーム、設備の整ったキッチン、そして贅沢な浴室──。
重厚なカーペットの上を歩くたび、心までもふわりと浮かぶようだ。
まさか、空の上でこんな贅沢な空間を味わえるとは思いもしなかった。
ふかふかのベッドの上に寝転ぶと、自然に瞼が重くのしかかっていった…。
* * *
「ガルーダ接近!」
突如、操縦デッキからバルドーさんの声が船内に響き渡った。
デッキに備え付けられた「拡声管」は、金属製のパイプを通じて船中のあらゆる場所に声を伝える仕組みだ。どうやらレオさんが考案したものらしい。
その声を耳にした瞬間、私は胸騒ぎを覚え、操縦デッキへ駆けつけた。そこでは既に仲間たちが集まっており、誰もが険しい表情でレオさんの指示を待っている。
「ガルーダ…?あの、巨大な怪鳥の?」
私はその名を聞いただけで背筋が凍る思いだった。
地上ですら、Aランク冒険者たちが束になって挑むような相手──空中でどう戦えというのだろう?
「…キサラギ氏、無理だ。この高さじゃ、まともに戦えない。」
グレイさんが苦々しく告げる。
確かに、ここは空。地に足がつかない戦場では、近接戦闘など絶望的だ。弓矢や魔法なら、可能性はあるかもしれないが──命中させる自信はない。
「空には空の戦い方がある。安心しろ──ニャメルネ、砲撃準備!」
レオさんが指示を飛ばす。
「はいニャア!」
ニャメルネさんは素早く、甲板に設置された小部屋へ駆け込み、大砲を操る。
突き出た砲身が、陽光を浴びて鈍く輝く。
「ニャメルネ、撃て!」
「ニャアッ!」
──《ドンッ!!》
雷鳴にも似た轟音が甲板に響き渡る。
火と煙が砲口から噴き出し、鋼鉄の弾丸が風を切って飛び出した。
「グギャァァァッ!!」
直撃…。
巨大な怪鳥ガルーダは、絶叫とともに羽ばたきを乱し、真っ逆さまに墜落していった。
「やったニャ!」
「よくやった、ニャメルネ!」
レオさんとニャメルネさんが満足げに笑い合う。
「レオさん、今のは……?」
「大砲だよ。火魔法と風魔法を組み合わせて、鉄球を撃ち出す魔導具だ。」
「なるほど…!」
私は砲台を見回した。
甲板には、ほかにも同じような砲台が並んでいる。これなら、誰でも簡単に扱えるかもしれない。
「レオさん、私にも扱えますか?」
「勿論だ!これは、魔法適正を無視して扱えるようにしてある。魔力充填し、狙いを定め、発射するだけ。簡単だろ?」
「なるほど、私にもできそうです。」
私はレオさんに大砲なる魔導具の取り扱いを習った。今後、魔物の襲撃があった際には役にたてそうだ。
この後も空の魔物に何度か遭遇したが、砲台の力でことごとく撃退できた。
「アニキ、見えたぜ!亜人の大陸だ。」
「ご苦労さま。最果てにあるあの集落の近くに着陸してみよう。」
「了解だ!」
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