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恐怖の学園編
暴かれた秘密⑦
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心臓が止まってどれだけ経った?
蘇生できるのか?
妖怪であれば大怪我で済んだかもしれない。
だけど、冬夜は人間だ。
妖怪とは違う。か弱い存在なのだ。
わかっていたはずなのに……
本当には分かっていなかったんだ。
私は――私には何ができる?
いつも与えられてばかりだ。
私はまだ何も冬夜に返せてない。
目の前では登丸先輩が時間を稼いでくれている。
この間になんとかしないと――、
希望が必死に妖力を冬夜の身体に送り込んでいる。
しかし、冬夜の身体は妖力に反応しない。
それは当たり前だ。冬夜の身体には元から妖力がない。生命の源が妖力の妖怪とは違う。
いくら妖力を注ぎ込んでも意味はない……、
本当にそうか?
何か方法はないのか? ひねり出せ。
なんとかしないといけないんだ。
………………………あ、もしかしたら行けるかも……でも、一か八かの完全な賭けだ。
それでも、やるしかない。
冬夜の身体を抱き寄せ、首筋に牙を立てる。
希望の制止を無視して噛み付く。
「なにやってるの、真白!? 血なんか吸ったら冬夜、余計に助からなくなっちゃうよ!!」
心から心配している瞳だ。
こんな時なのに喜んでいる自分がいる。
人とあやかしは分かり合えるんだ。
(冬夜くん、希望ちゃんも登丸先輩も、冬夜くんが人間でも関係なく助けにきてくれたよ)
噛み付きながら、涙が伝う。
首筋から牙を離す。
「大丈夫だよ……血を吸ったんじゃない。反対に冬夜くんに血をあげたの」
「血をあげる?」
「そう。私の――ヴァンパイアの血を冬夜くんの身体に送ることで、妖力に反応するようになるかもしれない。そうすればヴァンパイアの治癒力が冬夜くんを助けてくれるかもしれない!」
何の確証もなかった。
人間にヴァンパイアの血を与える。そのことが引き起こす事態など予期できない。
誇り高き大妖怪。ヴァンパイア。
他種族に自らの力の源を与えるようなことはしない。
だから血を与えることで何が起こるのか、真白にはわからない。
ただ、助けたかった。その気持ちだけだった。
「のぞみちゃん、少し貰うね」
首筋に手を伸ばし、頸動脈を確認。
噛み付く。
少しだけ血を貰う。
人とは違い妖力を持つからか、少量の血でも覚醒することができた。
「私は登丸先輩助けに行くから、真白は冬夜を見ていて」
真白は冬夜の胸に耳を当てる。
動いていない……
希望は九天と対峙している。
しかし、今の希望は冬夜に妖力を分け与え、少量ではあるが血――妖力を吸われている。
そう長くは持たないだろう。
帰って来い。死ぬな。
ドクンと心音が戻った。
ゆっくりと再開した生命維持活動に安堵する。
意識は戻っていないが、これで一命は取り留めただろう。
あとは……
目の前の敵を倒すだけだ。
蘇生できるのか?
妖怪であれば大怪我で済んだかもしれない。
だけど、冬夜は人間だ。
妖怪とは違う。か弱い存在なのだ。
わかっていたはずなのに……
本当には分かっていなかったんだ。
私は――私には何ができる?
いつも与えられてばかりだ。
私はまだ何も冬夜に返せてない。
目の前では登丸先輩が時間を稼いでくれている。
この間になんとかしないと――、
希望が必死に妖力を冬夜の身体に送り込んでいる。
しかし、冬夜の身体は妖力に反応しない。
それは当たり前だ。冬夜の身体には元から妖力がない。生命の源が妖力の妖怪とは違う。
いくら妖力を注ぎ込んでも意味はない……、
本当にそうか?
何か方法はないのか? ひねり出せ。
なんとかしないといけないんだ。
………………………あ、もしかしたら行けるかも……でも、一か八かの完全な賭けだ。
それでも、やるしかない。
冬夜の身体を抱き寄せ、首筋に牙を立てる。
希望の制止を無視して噛み付く。
「なにやってるの、真白!? 血なんか吸ったら冬夜、余計に助からなくなっちゃうよ!!」
心から心配している瞳だ。
こんな時なのに喜んでいる自分がいる。
人とあやかしは分かり合えるんだ。
(冬夜くん、希望ちゃんも登丸先輩も、冬夜くんが人間でも関係なく助けにきてくれたよ)
噛み付きながら、涙が伝う。
首筋から牙を離す。
「大丈夫だよ……血を吸ったんじゃない。反対に冬夜くんに血をあげたの」
「血をあげる?」
「そう。私の――ヴァンパイアの血を冬夜くんの身体に送ることで、妖力に反応するようになるかもしれない。そうすればヴァンパイアの治癒力が冬夜くんを助けてくれるかもしれない!」
何の確証もなかった。
人間にヴァンパイアの血を与える。そのことが引き起こす事態など予期できない。
誇り高き大妖怪。ヴァンパイア。
他種族に自らの力の源を与えるようなことはしない。
だから血を与えることで何が起こるのか、真白にはわからない。
ただ、助けたかった。その気持ちだけだった。
「のぞみちゃん、少し貰うね」
首筋に手を伸ばし、頸動脈を確認。
噛み付く。
少しだけ血を貰う。
人とは違い妖力を持つからか、少量の血でも覚醒することができた。
「私は登丸先輩助けに行くから、真白は冬夜を見ていて」
真白は冬夜の胸に耳を当てる。
動いていない……
希望は九天と対峙している。
しかし、今の希望は冬夜に妖力を分け与え、少量ではあるが血――妖力を吸われている。
そう長くは持たないだろう。
帰って来い。死ぬな。
ドクンと心音が戻った。
ゆっくりと再開した生命維持活動に安堵する。
意識は戻っていないが、これで一命は取り留めただろう。
あとは……
目の前の敵を倒すだけだ。
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