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恐怖の学園編
暴かれた秘密⑧
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「好き勝手やってくれたな……――貴様を許すつもりはない。覚悟しろ」
真白は跳躍。
回転することで勢いをつける。
脚を勢いのまま振り下ろす。
九天は地面にたたきつけられバウンドする。
跳ね上がったところに蹴りを見舞う。
ぐっ、と呻き声とともに吹き飛び、壁を破壊する。
「やった!?」
いや……ダメだ。
破壊された壁の向こう。
土埃の中にシルエットがゆらめく。
「西洋の大妖怪ヴァンパイア……そんなものか?」
首を鳴らしながら笑う。
やはり力不足。
冬夜に血を分け与えたせいで、本来の実力の半分程度しか力が出せない。
不完全な覚醒。
白銀の髪は淡い桜色に染まっている。
深紅の髪が覚醒の証。
人格はヴァンパイアとして覚醒した真白だが、肉体は普段の真白と大差なかった。
身体が重い。
そして蹴りは軽い。
「アレが……九天の正体!?」
「妖狐、それが九天さんの正体……」
妖狐――狐の妖怪で、日本では玉藻前――九尾の狐が有名だ。
他の妖怪とは一線を画する存在。神格級の存在。
妖怪の中には神にも等しい存在が稀にいる。
高位の妖狐はそうした神格を得ることもある。
目の前の九十九は間違いなく神格級の存在だ。
ヴァンパイアの真衣も神格級の存在に違いはない。
だが、同じ神格級だったとしても、不完全な状態では戦えるはずもない。
(厳しいな……)
なんとか相打ちに持ち込む算段をしていると、背後で膨大な妖力が突如として発生。
!?
「ッ!? 望月冬夜!!? 死んだはずだ……人間があの焔で無事なわけが……」
「つまり、そういうことだろ?――冬夜は人間じゃない――妖怪だった、そういうことだ――」
九天が冬夜に気を取られている隙に背後に回り込み、羽交い締めにする。
「来い! 冬夜――ッ!!!」
(お前の力を貸せ!)
深紅の瞳を携えた冬夜が、一歩踏み出す。
膨大な妖力が冬夜を中心に渦を巻く。
歩みを速めて近づく。
「望月冬夜ァアアア!!?」
冬夜は九天目掛けて突っ込む。
逃れようとする九天を真白が締め付ける。
「――グガッ!?」
肺から空気が吐き出される。
逃がしはしない。
より拘束を強める。
握られた拳が炸裂する。
間一髪、真白は離脱する。
九天は後方へと飛んで行く。
真白が告げる。
「これで冬夜が人間じゃないことは証明されたな――」
冬夜は糸が切れた操り人形のように、前のめりに力無く倒れた。
「冬夜!?」
希望は駆け寄り、冬夜の身体を抱きしめる。
「安心しろ。傷はすでに治っている。今は体内の妖力を使い果たして眠っているだけだ」
「ありがとう……真白」
鼻を啜りながら希望はお礼を言う。
「気にするな。私も冬夜の血が飲めないのは困るからな」
「正直じゃないんだから」
笑う希望。
「二人とも、まだ気は抜けませんよ。九天を倒しても警備局は彼女一人ではありませんから」
登丸先輩の言う通りだ。
普段の三人であればいざ知らず。
満身創痍の身体で、冬夜を守りながら戦うとなると難しい。
「それに警備局には直轄に風紀委員と公安調査部があります。応援が来ると、さすがに私たちだけでは厳しいです」
「一刻も早くここを出なきゃ!」
「そうだな」
冬夜を担ぎ、警備局からの脱出を試みる。
…………
……
…
何だこれは……
三人は言葉を失った。
警備局内には局員がいた。
しかし、全員漏れなくのたうちまわっている。
うなされている。悪夢を見ているのだ。
「忍さん?」
「忍って人間研究の?」
「ええ、彼、催眠魔法とか得意だから、多分そう……」
「今のうちにここを出なきゃ、応援が来ちゃう」
「私が転移魔法を使えれば……」
「無い物ねだりしても意味はない。それに、あそこで先輩が時間を稼いでくれなければ、私たちはみんな殺されていた」
満身創痍のはずなのに、三人の脚取りは社に来るときより、軽やかだった。
真白は跳躍。
回転することで勢いをつける。
脚を勢いのまま振り下ろす。
九天は地面にたたきつけられバウンドする。
跳ね上がったところに蹴りを見舞う。
ぐっ、と呻き声とともに吹き飛び、壁を破壊する。
「やった!?」
いや……ダメだ。
破壊された壁の向こう。
土埃の中にシルエットがゆらめく。
「西洋の大妖怪ヴァンパイア……そんなものか?」
首を鳴らしながら笑う。
やはり力不足。
冬夜に血を分け与えたせいで、本来の実力の半分程度しか力が出せない。
不完全な覚醒。
白銀の髪は淡い桜色に染まっている。
深紅の髪が覚醒の証。
人格はヴァンパイアとして覚醒した真白だが、肉体は普段の真白と大差なかった。
身体が重い。
そして蹴りは軽い。
「アレが……九天の正体!?」
「妖狐、それが九天さんの正体……」
妖狐――狐の妖怪で、日本では玉藻前――九尾の狐が有名だ。
他の妖怪とは一線を画する存在。神格級の存在。
妖怪の中には神にも等しい存在が稀にいる。
高位の妖狐はそうした神格を得ることもある。
目の前の九十九は間違いなく神格級の存在だ。
ヴァンパイアの真衣も神格級の存在に違いはない。
だが、同じ神格級だったとしても、不完全な状態では戦えるはずもない。
(厳しいな……)
なんとか相打ちに持ち込む算段をしていると、背後で膨大な妖力が突如として発生。
!?
「ッ!? 望月冬夜!!? 死んだはずだ……人間があの焔で無事なわけが……」
「つまり、そういうことだろ?――冬夜は人間じゃない――妖怪だった、そういうことだ――」
九天が冬夜に気を取られている隙に背後に回り込み、羽交い締めにする。
「来い! 冬夜――ッ!!!」
(お前の力を貸せ!)
深紅の瞳を携えた冬夜が、一歩踏み出す。
膨大な妖力が冬夜を中心に渦を巻く。
歩みを速めて近づく。
「望月冬夜ァアアア!!?」
冬夜は九天目掛けて突っ込む。
逃れようとする九天を真白が締め付ける。
「――グガッ!?」
肺から空気が吐き出される。
逃がしはしない。
より拘束を強める。
握られた拳が炸裂する。
間一髪、真白は離脱する。
九天は後方へと飛んで行く。
真白が告げる。
「これで冬夜が人間じゃないことは証明されたな――」
冬夜は糸が切れた操り人形のように、前のめりに力無く倒れた。
「冬夜!?」
希望は駆け寄り、冬夜の身体を抱きしめる。
「安心しろ。傷はすでに治っている。今は体内の妖力を使い果たして眠っているだけだ」
「ありがとう……真白」
鼻を啜りながら希望はお礼を言う。
「気にするな。私も冬夜の血が飲めないのは困るからな」
「正直じゃないんだから」
笑う希望。
「二人とも、まだ気は抜けませんよ。九天を倒しても警備局は彼女一人ではありませんから」
登丸先輩の言う通りだ。
普段の三人であればいざ知らず。
満身創痍の身体で、冬夜を守りながら戦うとなると難しい。
「それに警備局には直轄に風紀委員と公安調査部があります。応援が来ると、さすがに私たちだけでは厳しいです」
「一刻も早くここを出なきゃ!」
「そうだな」
冬夜を担ぎ、警備局からの脱出を試みる。
…………
……
…
何だこれは……
三人は言葉を失った。
警備局内には局員がいた。
しかし、全員漏れなくのたうちまわっている。
うなされている。悪夢を見ているのだ。
「忍さん?」
「忍って人間研究の?」
「ええ、彼、催眠魔法とか得意だから、多分そう……」
「今のうちにここを出なきゃ、応援が来ちゃう」
「私が転移魔法を使えれば……」
「無い物ねだりしても意味はない。それに、あそこで先輩が時間を稼いでくれなければ、私たちはみんな殺されていた」
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