転校生は朝ドラ女優!?

小暮悠斗

文字の大きさ
83 / 111
第三幕 新たな戦場――苦戦続きのバラエティー

ACT82

しおりを挟む
「なんや今日はおばあちゃんみたいやなぁ」

 この日の収録は終始いじられ役だった。
 何とかトークは返せるものの、常時身体を気遣うその様子はまさしくおばあちゃんそのものだった。
 
 いじられ役を一手に担う事になった私を、バラエティー(芸人たち)は容赦なく攻め立てる。
 特に真希は完全に悪ノリをしていた。

「局長。面白いですよホラ」

 そう言って私の脇腹を突く。

「ぴゃあ――ッ!!」

 私の奇声に合わせて真希が笑う。
 大口を開けて笑う。大爆笑である。
 何笑ってんだコラ!
 怒りの鉄槌を――と思ったのだが、身体が言う事を聞かない。
 拳を振り上げたまま私はフリーズする。
 電気が身体を駆け抜けた。
 痛っ。
 動けずにいると、すかさず真希が攻撃してくる。
 突く、揉む、叩く、その一つ一つが今の私にとっては脅威。面白がっているその顔は無性に腹が立つ。
 
 私が全快したら覚えてろ。
 そんな私の決意とは裏腹に、私はノックアウト寸前だった。


「で、ではまた来週~」

 浮かべた笑みは引きつっていたに違いない。
 収録が進むにつれて痛みを増す身体。
 番組の最後には完全におばあさんと化していた。

「はいOKでーす」

 お疲れ様でしたと至る所から声が飛ぶ中、私は地面にへたり込んだ。
 立っていられなかった。
 そんな私を真希は見下ろしながら笑う。
 ほんとにムカつく。

「結衣。今日のアンタ最高よ。てか何よその様は」
「身体中が軋んでるのよ」
「先週もそんな感じだったけど?」
「ぶり返したのよ」
「筋肉痛が遅れてきたみたいな感じ?」
「あー……そんなとこ……かな?」

 事の始まりは先週。
 ソファで寝たのが全ての元凶だ。
 ソファで寝てしまったがために身体を痛めた。
 そのまま収録に向かい、撮影。身体の不調を悟られない様に気丈に振舞った結果が身体の軋みの悪化である。
 悪化した身体の軋みは相当のもので、歩くことすらままならない。
 
 そんな状態で迎えた収録は……成功だったようだ。
 私個人としては失敗もいいところなのだが。番組的には成功だったようで、

「結衣ちゃん今日よかったでぇ」

「ほんまに。終始ボケまくってたからな」

 などと各々の感想を述べてくれる。
 一つ訂正するなら私はボケていたのではない。
 みんなが好き勝手に私に突っ込んでいただけである。

「来週もその調子でよろしくなぁ~」

 来週には全快してるわ!! ……たぶん……。

 それに明日はCM撮影がある。
 菓子屋ファミリーシリーズの撮影だ。
 MIKAが撮影に合流するのだ。
 全国ツアーの合間での撮影ということで、MIKAを中心にスケジュールが組まれている。
 私や真希はもちろん、他の共演者もMIKAに合わせてスケジュールの変更を余儀なくされた。
 特に真希なんかはそのことに憤慨していた。
 まあ、真希は今まで散々周りに迷惑をかけていたから、自分の身勝手さを知るちょうどいい機会だと思う。
 しかし、私を始めとする大多数の出演者はいい人(真面目)だからMIKAのスケジュールに付き合わされる筋合いは無い。
 もっと言えばMIKAが、私たちのスケジュールに合わせるのが普通である。

 芸能界のパワーバランス――均衡が崩れ始めていた。
 この綻びは新たなムーブメントの序章なのだろうか? いや、そんな簡単にムーブメントなんて作られてたまるか! 時代の中心は私たちだ(ちょっと調子に乗ってます(笑))。

 そんな訳で明日のCM撮影は戦い――戦場なのだ。
 気合の入った私は、要メンテナンスの身体とは対照的に気力は充実していた。
 真希にはムカついているけどいちいち腹を立てたりしない。

「お先に」

 一言。
 高野さんに肩を借りて私はテレビ局を後にした。

 …………
 ……
 …
 
 明日は勝負のCM撮影だ。
 そんな風に意気込んでいると、カーテンの隙間から朝陽が差し込んできた。
 あれ? もう朝?
 気が付けば時計の針は、片手の指の数では足りない時刻を指していた。
 もうすぐスマホで設定したアラームが鳴る時刻だ。
 
 3、2、1――ピピピピピピ……――
 素早くアラームを切ると、私は「よし」と短く言って布団に潜り込んだ。
 
 高野さんが迎えに来るまで、もう一眠り…………
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

煙草屋さんと小説家

男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。 商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。 ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。 そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。 小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。  

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

ユニークアイテムな女子(絶対的替えの効かない、唯一無二の彼女)「ゆにかの」

masuta
キャラ文芸
恋と友情、そして命を懸けた決断。青春は止まらない。 世界を股にかける財閥の御曹司・嘉位は、U-15日本代表として世界一を経験した天才投手。 しかし、ある理由で野球を捨て、超エリート進学校・和井田学園へ進学する。 入学式の日、偶然ぶつかった少女・香織。 彼女は、嘉位にとって“絶対的替えの効かない、唯一無二の存在”だった。 香織は、八重の親友。 そして八重は、時に未来を暗示する不思議な夢を見る少女。 その夢が、やがて物語を大きく動かしていく。 ゴールデンウィーク、八重の見た夢は、未曾有の大災害を告げていた。 偶然か、必然か……命を守るために立ち上がる。 「誰も欠けさせない」という信念を胸に走り続ける。 やがて災害を未然に防ぎ、再びグラウンドへと導く。 その中で、恋もまた静かに進んでいく。 「ずっと、君が好きだった」告白の言葉が、災害と勝負を越えた心を震わせる。 それぞれの想いが交錯し、群像劇は加速する。 一人ひとりが主人公。人生に脇役はいない。 現代ファンタジーとリアルが交錯する青春群像劇。 本作は小説家になろう、オリジナル作品のフルリメイク版です。

処理中です...