【ぼっち】は異世界でも 【ぼっち】を目指す

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④【ぼっち】―魔女に認定される―”魔女の呪い”で大ピンチ

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 僕は今、馬車に揺られて急いで王都を離れている。漸く、こちらの異世界に来て一月になろうかと言うのに。
 思えば、色々あったがデリク皇子のお陰でほぼ快適な異世界生活が送れていた訳だ。僕は、デリク皇子に文字を習いたいと言ったが、その必要は無かった。なぜなら・・・

 「どうかされましたか?ミドリ様」コールは僕のお世話係に任命され、読み書きや生活習慣も教えてくれる事になった。デリク皇子の信頼する部下の一人を僕付けにしてくれたのは、有り難い事だった。なにしろ、僕の王宮での生活は”針のむしろ”状態だ。おまけで付いて来た平民の分際で皇子の手を煩わせている―ずうずうしい奴―が僕の立ち位置だ。
 あれ?むしろ一人で放って置かれた方が目立たないで良かったのか??
 「ミドリ様?」
 「いえ、すいません。・・・ところでこの本は魔法書か何かですか?」僕の目の前には、コールが文字を覚える為にと、図書館より借りて来てくれた本が開かれている。
 「まさか、ごく普通の文字を覚える為の幼児用の本ですが」
 「そうですか・・・」僕はパラパラと、ページを捲っていった。

 僕はページを捲る度に目をしかめたり、見開いたりする。が、何度やっても同じ現象が起きる。
 
 文字がミミズのように動くのだ。

 最初に目にするのは、見知らぬ文字だ。だが、次の瞬間には、文字がバラバラになりミミズのように蠢き出したとおもったら、日本語へと姿を変えるのだ。どのページも同じようになる。

 「他の本を見せて貰えますか」
 「どうぞ、こちらは文字を覚えた子供用の物語の本ですが・・・」コールは訝しそうにするものの、僕の望み通りに二冊の本を差しだす。
 上側の本を手に取ると、題名が蠢き出し日本語を綴る。パラパラと捲り文字を追い、短い文章に目を通す。次に下側にある本を取り出し、同じようにページを捲る。
 どの本も、同じだ。文字が動く。いや、これは僕の方に原因があると言う事だ。これは所謂”チート”と言う物なのか・・・。便利そうだが、これではこちらの文字は覚えられないと言う事になる。

 あれ?もしかして、普通に話したり聞いたりしていたが、これも”チート”のお陰で異世界語から日本語に置き換えられていたのかな?黒崎さんも普通に話してたよな・・・。

 「ミドリ様?もしかして、文字が読めるのですか?」
 「う~ん、読めると言うか、何と言うか・・・読めるみたいです」
 (いや、余計な事は言わない方がいいだろう。一応味方だと思うけど、一人で生きて行くには隠し玉は多い方がいい)
 「書く方はどうですか?練習してみますか?」
 「今日は止めておきます。お時間を取らせて申し訳ありません」
 (あとで、こっそり書いてみよう。人前で、書いた文字が動き出したら、それこそ変だよね)
 「そうですか・・・では、お茶の用意をして来ますね」
 「有難う御座います」
 お茶くらい自分で入れると何度も押し問答したが、結局、それが仕事だと許して貰えなかった。世話をしてくれるのは有り難いが、ぼっちに慣れている自分に取って常に誰かが側にいるのはかえってしんどい。
 それに、この部屋は広くて豪華だ。置かれている家具や調度品は華美ではないが、どれも細工に手が込んでいて上品で超超高級品な気がする。おまけに僕が寝ているベッドは天蓋付きで、映画に出てくる王様のようなべッドだ。

 文字の心配がなくなった僕は図書館に通い出した。コールさんにも、もとの仕事に戻って貰う事が出来た。僕の移動は緑星宮から、図書館のみだ。食事等は緑星宮に厨房もあり、そこのメイドさん達が部屋まで持って来てくれるので、後はひたすら部屋に引き篭もっている。一人で移動するようになると、時々、足を引っ掛けられたり、すれ違いざま態と身体をぶつけて転ばせられるが、骨が折れる事もないようなので無視している。
 それが面白くないようで、最近では悪態や嫌味が付く様になった。暇人だな、お前ら。
 それ以外は概ね快適に暮らせている。緑星宮の執事やメイド、兵士達は皇子の人柄か、教育の賜物か平民の僕にも親切で、適度の距離で接してくれるので非常に有り難い。


 さて、冒頭の話に戻るが、なぜ、僕が快適に暮らしている緑星宮を出なければいけないかと言う話しである。
 
 この世界には魔法があるようだ。使えるのは王族と、一部の貴族。それに平民が少し。魔法が使える平民は王宮や、貴族。又、神官や、近衛に士官ができる。
 その神官と、王族の魔法に因って例の如く、異世界召喚の儀式で巫女たる黒崎さんと、おまけで僕が呼び出された。
 僕が図書館通いをしている間、黒埼さんは忙しいパーティの間を縫って(巫女の力を取り込もうと、色々な貴族から顔繋ぎのパーティやお茶会)巫女の修行が始まったようだった。
 巫女をわざわざ異世界から呼ぶのは、この世界の人達よりも大きな魔法(魔力)が使える為だ。その力を使い、あちこちに点在する魔力溜まりを祓うのだ。この魔力溜まりを放って置くと、その力に影響された森の動物達が獰猛な魔獣へと変態する。そして、その魔獣に殺された人間はゾンビとなって人間を襲に来ると言う構図が出来上がる。
 平時は魔力のある神官や近衛(魔法師団)、時には王族に依り討伐されるが、前回の巫女の召喚より二百年近くが経ち瘴気が濃くなりつつあるのが現状であるらしい。

 そこで、巫女である黒崎さんの出番だが、なかなか真面目に修行をしないらしい。そんな折、僕は、デリク皇子に招かれて参加したお茶会に彼女も呼ばれて来た。勿論、国王陛下もご一緒だ。

 「巫女の修行は如何ですか?」デリク皇子が黒崎さんに問う。
 「なかなか忙しくて、ねぇ、トートリス」どうやら、陛下も一緒にパーティ三昧のようだ。この時、僕は知らなかったのだが、黒崎さんは魔法の発動が上手く行かず、余計に修行から遠ざかるようにしていたらしい。
 「そうですか、修行が上手く行かないのなら陛下のお力をお借りしてはどうでしょう?」
 「それは、嫌味か?デリク。私より、お前の方が余程に魔力が高い」
 「とんでもない。私の力は陛下に並ぶ程も無いのです。それに、魔力誘導は近しい者の方が上手く行きます」
 「でも、私は魔法書が読めないの。時間が掛るわ」黒崎さんの言葉に僕は驚いた。
 「えっ?でも、異世界の言葉を喋っているよね?」
 「なによ!聞くのと、読めるのは違うでしょ・・・もしかして!読めるの?」途端に、険しい視線が飛んで来る。
 僕は、直ぐに頭をプルプル振った。デリク皇子が問いたげにこちらを見て来る。どうやら、コールから僕が文字が読めるようだと聞いてるみたいだ。
 国王陛下は訝しげに、大神官は探るような視線を向けてくる。
 やめてと、言いたい。僕はハッとして、皇子を見る。いつもの綺麗な笑顔でニッコリ笑い掛けられた。
 黒崎さんがギリギリ歯ぎしりしそうに口を結び、こちらを睨んでる。

 おかしいと、思ったのだ。僕がお茶に呼ばれるなんて。
 黒崎さんや、国王陛下が来るなんて一言も聞いて無い。
 嵌められたのだ。
 僕はダラダラと冷や汗を流す。
 修行をしない黒崎さん、そして、文字を読む事が出来ない黒崎さん・・・

 やおら黒崎さんが立ち上がり、僕の方を指差した。

 「この魔女の所為よ!を掛けられたのよ!」
 途端に部屋中から、鋭い視線を向けられる。

 「そんな馬鹿な・・・ミドリはただの老女ですよ」皇子が僕の肩を持ってくれる。
 「いや、巫女様の言う通りだ。最初から、怪しいと思っていたのだ。近衛団長、あ奴を捕えろ!」
 「待ってください!大神官殿、あなたもどうか巫女殿と国王陛下を止めてください」
 大神官は落ち着いた様子で、僕をじろじろ見ている。

 「まあ、デリク殿下の言う通りですな。老女からは、何の魔力も感じられません。巫女様も落ち着いてくだされ。ほれ、国王陛下も座られてはどうですかな」
 大神官の言葉に国王陛下も、しぶしぶ座る。だが、黒崎さんは座らない。甘いよ、巫女様はお年頃。彼女にこんな屈辱は耐えられない。彼女は、そのまま席を蹴って部屋から出て行ってしまう。
 「ま、待つのだ。巫女様!」国王陛下の言葉も空しく響く。彼は、扉の閉まった後を呆気に取られて見ていたが、直ぐに、僕と皇子を睨みつけた。
 「巫女殿が、修行を放棄したらどうしてくれる!責任は取って貰うからな!」そう言うと、足音高く部屋から出て行った。

 「ふう、巫女様にも、国王陛下にも困ったものです。が、煽り過ぎるのも問題ですな」
 流石わ大神官様、分かってらっしゃる。僕は彼の言葉にふんふんほくそ笑む。
 だが、そんな彼は皇子に苦言を呈した後、僕の方を指差した。

 「今後、このを巫女様の目に入らぬようにしてくだされよ。何が起こっても私は責任を持ちませんから。では、失礼する」そう言い捨てると、後も見ずに出て行った。
 そうでした、彼は決して僕の味方ではありませんでした。

 二人で部屋に残されると、皇子が謝って来た。
 「済まない、こんな事になるなんて。少しでも、修行に身を入れて欲しかったのだが・・・」
 甘いよ、殿下。彼女は、まだ十五歳。それも、甘やかされた十五歳。ちやほやしてやらなければならない種族。
 明らかに、読み違い。計算違いだね。
 僕はそっと、吐息を零す。
 皇子は、部屋の外で待機していたコールを読んで僕を緑星宮に送り届けるように言った。

 それから、二日後。僕は図書館の帰りに襲われた。だが、皇子が内緒で護衛を付けてくれたので事無きを得た。
 その後も、部屋が荒らされたりしたので、僕は王都を離れる事になり、今、まさに馬車に揺られている訳だ。
 皇子には、「済まないね」と謝られたが、あんたは精一杯庇ってくれたよ。
 
 それに、結局僕の願い通り、王都から離れて田舎暮らしの一人生活が始められるのだ。
 有り難い事だ。皇子には手を合わせたい気分だ。

 ガタッ、ガタガタ!ガガァアアーーー!僕は馬車の中でもんどり打った。

 僕も、結局、甘かったと言わざるを得ない。

 女は執念深いと・・・。

 急に止まった馬車から、引き摺り降ろされた。

 大ピンチだ!
 

 
 
 















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