あの日の約束が僕らを生かした

良樹の想い

俺は詩織さんのことを良樹に打ち明けた。鬱のこと、最近相談にのっていること、詩織さんを見放して奈織と楽しくしていていいのかという気持ち。全て話した。

「お前、何か勘違いしてねーか？お前は立派だよ。けどな、神様でもなんでもねえ、ただの公務員だ。特別でもなんでもねえ。知り合ったばかりの人のそんな相談にも親身にのってやって、自分のことのように頭悩ませて。凄いと思うよ。なかなかできることじゃない。そこら辺も、お前がモテる理由なんだろうよ。けどな。大事なものを見落としてるよ。お前、大事な人が今どんな思いしてるかわかってるか？お前の奈織へ対する気持ちは？前俺がいった言葉覚えてるか？時には、感情に従う・信じることも大切だって。俺は…お前みたいに人間できてないから、好きな人が1番幸せになってほしい。そんな単純なことしか考えられないけどな。」

奈織…。俺はここ数週間、奈織のことを考えていただろうか。でも…。

「でも、俺は…。俺は奈織といると幸せだ。それ以上の幸せはないだろう。けど、奈織には…もっと良い人もいるだろうし、俺じゃなくても…「それは、奈織が自分でそう言ったのか？奈織が、他の人で良いって。そう言ったのか？！」」

今にも飛びかかって来そうなくらい良樹は怒っていた。こんな良樹を見るのは初めてだった。

「お前らが話し合って、お互いが納得した上なら、俺の出る幕はないけどな、勝手な思い込みで、そうなってんなら俺は黙ってねーぞ。それと、中途半端に寄り添われても、詩織さんって人にも失礼だからな。お前のことだ、人の悩みであまり寝れてないんだろ。隈なんか作ってんじゃねーよ。…こんな時間に悪かったな。じゃあな。」

バタバタ。バタンッ。

そう言い残して、良樹は俺の家を後にした。