悪役令嬢はポジティブすぎて死亡フラグもクソもない!!

空蝉ノ十八番

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どうしたらもっと強くなれるのか。
魔法の特訓は順調だが、このままだと本番までに間に合わない。
攻撃に決まった今、チーム同士との衝突は避けようのない事実となってしまったため、自分が足を引っ張らないよう注意する必要がある。
なにより…あのネチネチ蛇君に馬鹿にされたことが腹にたって仕方なかった。

"異能もザコ、学力もザコ。そんな奴が試合で役に立つかよ"

「あ~!!思い出しただけで腹が立つ!!クッソ~絶対に本番でぎゃふんと言わせて見せるからな!!」
「何を騒いでいるんじゃ」
「スロークだ!!」

サザンカの前に現れたのはスロークだった。
この間の一件以来、姿が見えなかったので心配していたのだ。

「久しぶりだね」
「サザンカよ…急ですまぬが、例の約束、早急に頼めるだろうか」
「約束って封印を解放するって奴?」
「そうだ。様子を見ようと思っていたのだが…いよいよ本体の力が弱まってきてるようだ。分霊でいられるのも時間の問題。だから早く封印を解き放って貰いたい」
「それは大変だ!いいよ!!でもお父様も探して見つからなかった本体だよ?何処に封印されてるか分かるの?」
「もちろん!我の体は我が一番よく知っているからな」

そこでサザンカは夜遅く、屋敷を抜け出し龍の封印を解こうと決めた。
だが一人で先走るにはあまりにも危険な行動。
考えだした末、いい方法を思いついた。

「……んで、俺に護衛をして欲しいと」
「そうなんだよ~!ナイルならやってくれるよね??」


約一か月ぶりに家での謹慎をフィリップお兄様から許されたサザンカは衰えた筋肉を復活させるべく、向かったのはナイル所属の第二近衛隊訓練場だった。

「一か月ぶりに顔を出したと思ったら。開口一番に何を言い出すんすか?」
「急を要する案件なの。神獣の封印を解いてお父様の元に戻ってもらわないことには、エヴァーソン家に神獣の加護は未来永劫約束されない」
「だからってサザンカ様がその封印を解くと?どんだけ危ない事に足を踏み入れようとなさっているのか自覚しています?」

ナイルは真剣な眼差しでサザンカを捉える。
いつものおちゃらけた空気とは違う。
騎士としての顔そのもの。
この時間、訓練を終えた騎士達は既に宿舎に戻っており、周りにはサザンカとナイルしかいない。

「だから護衛騎士がいるんじゃん!いざという時にサポートが効くし。神獣相手にもしもの時があったら、ソードマスターレベルがいて貰わないと。でもお兄様には怖くて頼めない。ナイルしかいないの」
「ダメです。俺はやりません。危険すぎます。それに貴方はエヴァーソン家のお嬢様です。本来であれば訓練だってやるべきではないというのに」

ナイルの表情は硬い。
恐らく本気でサザンカを心配しているのだろう。
最初は嫌悪感しか向けてこなかった彼が、今ではサザンカを対等な目線で評価してくれている。
だからこそ、エヴァーソン家の公爵令嬢として。
騎士の務めを果たし、守らなければならないと。
そういった目でこの話を食い止めようと必死のようだ。

「ナイル…私ね、昔はどうしようもない人間だった。聖女に目覚めたお姉様にソードマスターのお兄様。天才魔法師のお兄ちゃん。そんな三人とは対称に何も才能に恵まれなかった。だからこそ、サザンカ・ロベリー・エヴァーソンは愛され聖女を目の敵にしてしまった」
「………」
「同じ公爵令嬢でも称賛されるのは決まって姉。それに馬鹿みたいに嫉妬して。ホントに悪いことしちゃった。だから変わるの。私は私のできることで皆を幸せにしたいから!お姉様に幸せになってもらいたいの」

転生した自分にできるのはヒロインの愛されを見届けること。
攻略キャラから上手くバッドエンドの未来を避けて、静かに暮らす。
悪役令嬢サザンカで終わるつもりなんてないから。

「ならば余計、ロエナ様を悲しませることをしてはいけないっす。あの方からすれば、サザンカ様はたった一人の可愛い妹。サザンカ様にだって幸せになる権利はありますよ」
「それでも!このまま何もしないで終わる自分だけは嫌!私は自分が諦めない限り、絶対に一度決めたことを投げ出したりはしない!今回の件は私にしかできないこと。だからやるの」

スロークは私にしか見ることができない。
だからいくら公爵家の人間達が神獣の在り方を突き止めようが、封印の居場所を導き出すことも解くこともできない。
ヒロインロエナでさえ叶わなかった問題。
どんなに危険が待ち受けていようが、この胸の高ぶりは抑えることはできない。

「お姉様の力でも見つからない神獣を私なら取り戻せる。だからナイル、お願い」
「…サザンカ様、なんか楽しんでます?」
「あは、バレた?けど覚悟は本気。だからお願い!!友達を助けると思って」

必死にお願いする。
ナイルはそれに何も言わない。
だが静かに溜息をつけばヘラリと笑った。

「全く……敵わないっすね。サザンカ様のせいで、俺もついにクビかもです」
「やった~!!ありがとうナイル!!」
「どんだけ俺をクビにしたいんすか。もう俺が可哀想ですよ」

ナイルは冷や汗をかいていた。
これで神獣探しに心強い護衛がついた。
サザンカがスロークを見れば、向こうは満足気であった。

「うむ、そうこなくてはな。ならさっそく向かうぞ」

馬を使えば出発する。
サザンカと後ろをナイルが護衛する。
夜中近いせいか、少し肌寒い。
スロークはうねうねとサザンカの周りを泳げば道案内をしてくれていた。

「それでスローク、本体はどこに封印されてるわけ?まさか隣国とか言うんじゃないでしょうね?」

そんな遠かったら間違いなく朝方までに戻ってなんてこれない。
見つからないよう、コッソリと家を抜け出してきたんだから。

「安心せい。そう遠くには行かん。これから『魔の森』に向かう」
「魔の森?ナイル、魔の森って知ってる?」

サザンカが振り返ればナイルは顔が真っ青。

「え!サザンカ様、今なんとおっしゃいました??」
「だから、魔の森」
「ダメです!やはり引き返しましょう!!」
「ちょっとちょっと!せっかくここまで来ておいてそれはないでしょ~」
「けど魔の森っすよ?あれがどんなに危険な所か、、、」

魔の森か~なんか聞いたことがあるような、、、


み:『神獣の封印は魔の森でされていたんだ。そこは暗い魔物やドラゴンが潜む危険度Sランクの禁忌スポットして物語でも有名で。歴代の黒魔術師が神獣を封印しちゃった場所なんだ』



思い出した…絶対に足を踏み入れるべきではない禁忌の森。
入れば魂を吸い取られ、二度と外に出ることができない。
ロエナが聖女なら、それに群がる魔物達に魂を吸い取られてしまうと、神獣は最後まで手に入れることができない最難関のステージだった気がする。
クリア率は驚異の0.5%。
どんな鬼畜プレイだよ!!って思うよね。
そこに今から行くだって?

「なんか…面白そう!行こう!!」
「サザンカ様~!!!」
「も~ナイルったら何を怯えてんのさ。神獣の封印さえ解けばいい。ここ大事!解けばいいの!気を強く持ってかかろうぜ!」
「何を悠長なこと言ってんすか?最悪俺ら死ぬんですよ?いいんすか?俺が死んでもいいんすか??」
「そん時は私も一緒に死んであげるから!!ナイルを一人にはしない」
「サザンカ様///…って、そういうことじゃない!!!」

ナイルが後方からギャアギャア言うのを無視すれば、ついに目的の場所までついてしまった。
目の前には立ち入り禁止の看板が立てられている。
先に続く細道は暗く不気味。

「あの先に…我の体があるのか」
「怖いの?」
「いや…だが何があるか分からない。サザンカよ、最悪命が危険だと判断すれば我をおいて逃げると約束して欲しいのじゃ」
「でもそうしたらスロークは一生封印されたままだよ?」
「それでもじゃ。分霊のこの身もここで朽ちるだろう。だがそれでもお主には感謝しとるからな」

スロークはユラユラと森へと続く道に進んでいく。
その後ろ姿を見つめていれば、サザンカの中には覚悟が決まった。
ナイルに合図すれば進んでいく。
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