悪役令嬢はポジティブすぎて死亡フラグもクソもない!!

空蝉ノ十八番

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魔の森での破壊が始まる。
騒ぎに気づいた魔物達がその場を撤退しようと逃げ失せていく中、サザンカの身は崖に向かって落ちていく。

「サザンカ様!!!」

ナイルが手を伸ばそうとしたその時、目の前には巨大な一匹の龍が現れた。
青色の鱗が輝く美しい龍は背中にサザンカを乗せて飛び上がれば、ドラゴンは断末魔を轟かせて完全に地の底に崩れ堕ちていった。やがて森には静寂だけが残る。

(な、なんとか…なった?)

目を開ければスロークの背中に乗っていた。
どうやら死なずに済んだようだ。
地上に降ろされれば、体はへなへなと力尽きたように座り込んでしまう。

「た、助かった~~~死んでない…死んでないよ!!!」
「サザンカ様!!!」

ホッと安堵の息を漏らしてればナイルが抱きしめてきた。
それにはビクッと反応してしまう。
だってまさか異性に抱きつかれたのなんて初めてなんだもん。
怖さより恥ずかしさが勝った。

「ちょ//急に抱きつくなんてどう…って、ナイルってば大丈夫⁈ボロボロじゃん!!めっちゃ怪我してるし!ごめんね!到着が遅れたせいで…」
「何をやってるんすか!!」
「え、」

不意に顔をあげたナイルは怒ってきた。

「なぜ逃げなかったのです!ドラゴン相手に一人で立ち向かっていくなど…一歩間違えたら死んでたかもしれないんすよ????」

無事でよかった…そう声を漏らす体は震えていた。
サザンカはハッと彼を見た。
魔物達を相手にしてたせいか服はボロボロ。
嚙みつき箇所からは血が滴り落ちている。
どう見てもまともに話せる状況じゃない。
重症だ。
なんとも痛々しい姿に自分がしたことを後悔した。

「ごめんねナイル。でも…あそこで逃げたら大切な友達を見捨てることになってた。それこそ悪役令嬢サザンカに逆戻りだよ。スロークの封印を解く為に強引に連れて来ちゃったわけだし。それでいて一人逃げるなんて。そんなことできるわけ、、、」
「それでも俺を置いて逃げるべきでした。騎士は主を守る為、時に命を差し出す。俺は…貴方を守りたかった/////」
「え…それはどういう…」

耳にかかる吐息が熱い。
サザンカが顔を上げればかち合う視線。
だが直ぐに顔を逸らせばナイルは立ち上がってしまう。
心なしかオレンジ色の髪に比例して耳が赤い。

「ナイル?」

その呼びかけには応じず、ナイルはそれから何も言わずに周囲を見渡した。

「敵はみんな消えたみたいです。さっさと戻りましょう。立てますか?」
「あ、うん」

自分も凄いボロボロで切り傷やらが目立つ。
髪はぼさぼさ。
顔にもドラゴンの炎を受けた代償からか、少し火傷の跡があった。
それでも手にはちゃんと神器を持っていた。

「酷い姿っすね。早く手当を受けないと」
「ナイルに言われたくない!」

笑う彼を睨めば、差し出された手。
立ち上がったタイミングで向こうからは黙ってマントを肩にかけられる。
見ればズボンがビリビリに破けて素足ガン見えからの出血だ。

「こんなボロボロになってまで神器を取り戻すなんて。…ロエナ様が知ったら悲しみます。嫁入り前の大切なお体をこうも粗末にするなど…」
「え~でも助かったんだから安パイじゃ~ん。それに傷ごときに文句を言う男なんかコッチからお断り。もしそれが原因で一生結婚できなかったら独身でもいいし~」

ヒロインが幸せになってくれればいいのだよ!
そんな意味を込めていつものぐっちょぶポーズ!!
それにはナイルも眉をひそめていた。
悪役令嬢サザンカとしてバットエンドさえ回避できればそれでいい。
その後はせっかくだし、悠々自適に他国にでも逃亡して自由ライフ送っちゃおうかな~なんてね☆

(何処に逃亡しようか、、、今から逃亡資金集めとかんと!!)

「それじゃ、俺が貰いますよ」
「…隣国とかなら仕事も……え、ごめん聞いてなかった。なんて?」

急にナイルが口を開いた。
だがちゃんと聞いておらず聞き返せば、何故かコッチをジッと見つめる顔。

「だから、俺が貰います。サザンカ様が結婚できなかった時…俺が貰えば一人にはならないっす」
「え、、、えっと…」
「……//////」

それから何も言わない彼。
顔は恥ずかしいのか赤くなっているし…
え、、、この子ってば…いきなり何を言い出すの?
ギョっとしてればまんざらでもない顔。

(いや、いやいやいや、、まさかね?)

だがそれを知った時、ボフンと顔が赤くなった。
心がドキッとしたのはここだけの話。

「も、もう~!!ナイルってば、何をバカなこと言ってんの⁈」

急なプロポーズとか心臓に悪いだろうがい!
私はヒロインでもなんでもない。
悪役令嬢サザンカ・ロベリー・エヴァーソンなんだぞ????

「急にプロポーズなんてするからビックリしちゃったじゃん。私をロエナお姉様と間違えてんじゃないの~(笑)。まあ例え冗談でも嬉しいけどさ!!!」

アハハ!と笑って背中を叩く。
向こうはそう言えば俯いていた。
しっかり私をヒロインと間違えてくれたようで安心した。
そのせいか恥ずかしくなってしまったよう。
うんうん!そうだよね~まあヒロインには恥ずかしくて言えないもんね~
ロエナは世界を救う!流石です!!

「…冗談なんかじゃないのに」

ボソッと呟いた言葉はサザンカには聞こえなかった。
当の本人は完全にロエナと間違えただなんて言ってる始末。
ナイルは内心、このよく分からない感情のモヤモヤに支配されつついた。
理由は分からない。
だが彼女を見れば、しっかりそれは波のような勢いで感情を歪ませる。
熱く…それでいて心が揺さぶられる。


「サザンカ!よくぞ我の体を取り返してくれた!!」

突如、空からは嬉しそうにスロークが降り立ってきた。
剣に宿りし力がようやっと、今日この日をもって解除に成功したのだ。
それを可能にさせたのはヒロインではなく、悪役令嬢サザンカ。
苦労してドラゴンを倒した甲斐があった。

「お主のお陰で封印が解けたのじゃ。これでエヴァーソン家に本来の加護を戻せる。礼を言うぞ」
「いえいえ~私はできることをしたまで」
「それでお主に礼をしたいと思ってな」
「礼?」

その言葉でサザンカを青い光が包んだ。
ビックリしてれば、次の瞬間、左目には鈍い痛みに続き、何やら星のような模様が浮かび上がった。

「我の加護をその身に授けよう。お主は神の神聖力を扱うことができるゆえ。ドラゴンを倒すこともできたのじゃ。力が欲しい時、我はいつでもお主を助けよう」
「は、はあ、、、え~っと…ありがとう?」
「うむ」

スロークは満足気に頷けば剣の中に吸い込まれていった。
なんだなんだ?
え、つまるところ、私は龍から加護を貰ったってことでいいの?
横ではナイルが顔を輝かせていた。

「サザンカ様、凄いっすよ!」
「え、何が??」
「エヴァーソン家の守護神がサザンカ様へ直属にその加護を授けて下さいましたよ!!」
「そんなに凄いの?」
「凄いなんてもんじゃないっす!普段は道具を介せでもしない限り、当主でさえ扱えない強力なパワーです。それを御身に承ったわけですから。実力的にはロエナ様の持つ聖女の加護と同等…もしくはその上か」
「えー!!!!!!」

そんなとんでもない力をぶち込んだのか?
しかもヒロインより強いだと!!
いやいや悪役令嬢がヒロインよりスキルアップしてどうすんねん!!!!
ナイルは物珍しさにサザンカの瞳を覗き込んでくるけれど…

「凄い…青色の星がちゃんと刻まれてるっすよ」
「どうしよう…こんなものが目に入ってるなんて。皆にバレちゃうよ!!!」
「そこっすか?もういいじゃないっすか。これは名誉の証っす。神獣の加護なんてもん、神直属の使い魔を使役できた人間は過去にもいない。サザンカ様は偉業を成し遂げたんすよ」
「そんな恐れ多い…ロエナお姉様ならまだしも、、、なんで私なんかに」
「ロエナ様は聖女として有名ですけど。あそこまで美しく洗礼な方はいませんよ。さ、帰りましょう」

どうすんだよ…これでまた大目玉くらうのは勘弁。
絶対にこんなの家族にばれる。
なんなら魔の森にいたことなんて知られてみろ。
もしかしたら謹慎期間が追加されるかもしれない。
大好きな騎士訓練生の筋肉も拝めない。
遊びに行くことも、学校に通うのだって禁止されるかもだし、、、

「だめだ…そうなったら生きていけない。ナイル!絶対に今回のことは他言無用で!!」
「え、流石にそれは…それに神器だって手に入れたのに」
「それはなんとかする!この瞳は…どうしよ、、、」

契約の印なのか知らないけど、肝心の印をつけた本人は剣に戻ってしまったし。
呼んでも出てきてくれない。
この役立たず神獣め!!!!

「俺が言うのもなんなんすけど…筋トレはやめておいた方が。基本、女性の騎士入隊は不可ですし」
「いいの!筋肉を愛して何が悪い。ほら見て!お腹だってここまで頑張ったんだから!!」

バサッと腹を見せる。
最近少し怠けてはいたけど、縦にほっそり縦線が出ていた。

「ちょ//////バカ何を見せてんすかー!!!」

ナイルは顔を真っ赤にさせて怒っていた。
早く服をしまうよう声がうるさかったので仕方ない。
もう少し自慢したかったのだが大人しく服を正せば、なぜかホッとされる。

「そんなに私の筋肉は弱いって言うの?だから見たくないって?」
「いえ…御立派な筋肉だと思いマス、、はい」
「ならよし!」
「…ですが、あまりそういうことは避けて下さい」
「なんで?」
「な、なんでって……」

それからナイルは言いにくそうに口を閉じてしまう。
全く意味が分からなかった。
顔は赤いままだし…熱でもあるのだろうか。

「ホントに…勘弁して下さいよ////」
「も~意味わかんない。ま、それはそうと早く帰らないと。また魔物が襲ってくるかもしれないし」

公爵邸についたのは明け方近くだった。
だが何やら門の辺りが騒がしい。
サザンカは嫌な予感がした。

「あ、サザンカ様!!公爵様!サザンカ様が帰られました!!!」

シャロンが叫べば、ガタン!!と音とともに公爵達が慌ただしく顔を出す。
サザンカと目が合えば、血相を変えて走ってくるのが見えた。

「サザンカ!!!一体何処に行っていたのだ!」
「お父様!実は…」
「ん?その手に持っているのはまさか…!それにその目にあるのは、、、!」
「あ、えっと…」

ダメだ…隠そうと思っていたのに。
屋敷では既に私の失踪が問題になっているようだし、言い逃れは効かないとみた。
ナイルはビクビクと顔を真っ青に「俺…クビだ、、」とこぼせば、公爵の指示で使用人に引きずられていった。


「サザンカ…部屋に来なさい」
「は、はい、、、」

お、終わった…
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