悪役令嬢はポジティブすぎて死亡フラグもクソもない!!

空蝉ノ十八番

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え~ただいま私、サザンカ・ロベリー・エヴァーソンは説教の真っ最中であります!

手当てを終えれば公爵の部屋に呼ばれる。
中では既に机に待機するお父様。
両脇にはへロイスとフィリップを添えて、それはもう黒いオーラがもうもんと湧き上がる。
もうここは地獄か何かでしょうか。

「…それで?この神器を魔の森で見つけたと」
「は、はい…スロークが見えたのは私だけのようでしたし。それでいて神獣の頼みともあれば、やらないとなって」
「護衛騎士にナイルたった一人だと?それでドラゴンを倒したというんだな?」
「はい…その通りでございますれば、、、」

もう怖いよ~!!!!
お父様は静かに顔を下げれば溜息をつく。
部屋には沈黙が続き、更に気まずい状況となった。

「父上、サザンカがまたずるをしています」
「な、し、してないもん!」

入って早々、頭に乗せられた本。
落としたら謹慎にするとか脅すから、さっきから身動き一つ取れない。
直ぐ後ろが壁なので寄りかかればなんとか本を落とさずに済むかな~なんて考えてれば、勘の鋭いへロイスに見抜かれてしまった。

「サザンカよ…私は父親失格か?」
「え、、、」
「ロエナはオマエが行方不明と聞いて、ショックで寝込んでしまった」

な、なんだってー!!!!!!!
ロエナが自分のせいで寝込んでしまうとは。
これ一歩間違えたら、「おい、なに可愛いヒロインショック死させてんだ。殺すぞ」って言われるパターン!
だからバレないように細心の注意を払って外出したというのに。

「一体…なぜバレたのだ、、、」
「声が出てんだよ」
「あ、聞こえてた?お兄ちゃんって地獄耳だよね。そんな耳いいとトイレも安心してできないというか~って、ごめんごめんて!!そんな怒った顔しないで。てか魔法陣しまって!!!!」

ピキリ顔のへロイスからは魔法陣が出てくれば、慌てて謝るのに必死だ。
こんなところで殺されるなんてたまったもんじゃない。
お兄ちゃんと睨み合う中、不意にお父様からは「サザンカ」と声がかかる。

「ロエナが聖女に目覚めて以来、あの子には常に危険が伴うと、勝手に優先順位を疎かにしてしまったようだ。まさかその身一つで魔の森に立ち入るとは…」
「どうしても神器を取り戻したくて!それにお父様達の役に立ちたかったから~」
「それでもしオマエの身に何かあったらどうする!!!実際にボロボロではないか!」

ヘラヘラと笑ってれば公爵はしびれを切らした。
激怒した顔にはサザンカだけでなく、へロイス達もビクッと驚いてしまう。

「あ、えっと…あの、、、」

え…まさかそんなに怒るとは思わなかったな、、、
それにしてもロエナが寝込んでしまったとは。
心配だ…早く安心させてあげないと。

「はぁ…サザンカよ。オマエは私の大事な娘なのだ。この…エヴァーソン家の」

ゆっくりと歩み寄れば、その顔は泣きそうなほど悲しそう。
公爵は本を下ろせばサザンカの頭をそのまま撫でる。

「ロエナも大事だが、オマエも大事なのだ。父親としてもっと気を配ってやれば良かったと。ずっと後悔していたのだ。祝勝会で勇敢にも悪に立ち向かうオマエを見ていたら、自分の父親としての至らなさを酷く痛感したよ」
「お父様⁈いえ、そんなことはありません!」
「サザンカよ。どうか父に頼ってはくれないだろうか」
「!!」
「オマエは可愛い私の娘だ。父親としてオマエを守りたいだけだ」

(ど、どういうこと、、、?)

こんなシーン、ゲーム内でも起こらなかった。
公爵が好きなのはロエナ。
サザンカに向かってこんな風に言うなんて。


み『公爵が娘として愛してたのはロエナだけ。サザンカの悪行が多発してから目も向けなかったよ~』


公爵はヒロイン一途。
それが崩れることはなく、サザンカに向けられる愛とは程遠い。
もはや愛などあっただろうか。
数々の悪行と後妻の子供。
そんな不遇な立場から、こころなしか遠回しに扱われ孤独に苛まれたサザンカ。悪役令嬢として最後までバットエンド続きのまま死んでいく人生でしかない。
だから公爵の口から「父親」という名前が出てくるとは夢にも思わなかった。

「私は…お父様のこと、、、大好きです」
「!!」
「今回のことだって後悔はしてないんです。お兄様の祝勝会でロエナお姉様は狙われました。それを何とか食い止めて。今回だって同じです。いつ聖女の加護で魔の森を浄化するよう命令されるか分からない。そんな場所に優しいお姉様を行かせる未来を想像したくなかった」

そこに神獣の神器がなかったとしても…
王国が聖女のロエナに目を付けていない筈がない。
その力で大地を浄化し、悪に身を捧げろだなんだ!と古参貴族共が騒ぎ出すかもしれない。

「ドラゴンを倒すのは私の夢でもあったので!!それにポジティブに考えれば、自分が頑張れたからエヴァーソン家には神獣と神器が戻ってきたんです。私にしかやれないこと。少しはお役に立てて幸せです!!」
「……サザンカ」

ニコニコで笑ってれば、後方の二人はやれやれと呆れ返っていた。
だが無視だ!無視!!
その後、説教は比較的軽度で済んだ。

「もう部屋で休みなさい」
「は~い」

サザンカが退室すれば、へロイスが詰め寄る。

「納得しかねます!父上はアイツへの処分が甘いんです!!!」
「そう怒るなへロイス。分かっている。今回は本当に危なかったのだ」
「ではなぜ!あんな場所にサザンカ一人、、、あそこがどれだけ危険地帯なのか。魔法塔でも注意喚起を徹底している魔の巣窟。入った人間は二度と帰ってこれない死のエリアとの噂もあるのです!!…もしかしなくても妹が死んでたかもしれない。厳しく罰するべきです!兄上もそう思いますよね????」

納得いかず、へロイスはフィリップに顔を向ける。
すると今まで黙っていただけのフィリップが口を開く。

「父上、今回の件は俺もへロイスに同感です」
「フィリップ」
「例え神獣の頼みとはいえ、神器を取り戻す為に森へ入るなど。ロエナが夢でサザンカが消えたと。使用人が部屋を確認したら本当にいなかったのです」
「……」
「あの子は問題行動がただありますが。謎に一度決めた頑固さで人を救う器量は認めましょう。ですが万が一、それがあだとなってサザンカにもしものことが起これば」

珍しい…兄上がここまで誰かを褒め、心配するなんて、、、

へロイスは少し動揺が隠せなかった。
最近ではサザンカの影響からか、表情にはバリエーションが出てきたフィリップ。
それが今回に至っては誰よりもサザンカを心配しているようだった。

「そうだな…だがコイツはむしろ喜んでいるぞ?」

コイツ??
二人は不思議になっていれば、公爵は神器であるエヴァーソン家の剣を掲げた。
青く光る抜刀。
そこからは神獣のパワーがユラユラと立ち昇れば龍に変幻する。

「サザンカの奴…コイツを調教するとはなかなかやるではないか。流石は私の娘なだけある」
「あの…父上、その神獣って龍でしたよね?」

龍は本来、高貴な身分より、下位の者に従わない。
神から見た人間など、所詮その程度でしかないというのに。

「気に入ったということだろう。あの子の魂は明るく輝いている。その左目に刻印をしたようだから、加護による影響は絶大だ。だがエヴァーソン家にはますます敵が増えた」

敵が増える。
それは神獣の加護を手にしたサザンカが、聖女の加護を手にしたロエナと同じく狙われる危険を予知していることを告げる。
神への神域に異能を伸ばした人間。
それを上が利用しない筈がない。
今後は警戒がより一層強化されることになるだろう。
それを理解したへロイス達も身を引き締めた。

「ロエナといい…サザンカといい。我が家の娘達はなんと逞しいのだ。オマエ達もそうは思わないか?」
「「はあ…(この親バカめ)」」

だが同時に呆れもした。
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