美術教師の檻――「描き終わるまで帰さない」画家の執着

紺碧のごんぎつね

文字の大きさ
14 / 28
【第3章:逃避・追跡・対面】(第11~20話)

第14話「インターホンと決断」

しおりを挟む
午後8時、透也はシャワーを浴びて、少し落ち着いていた。

「もう、考えるのはやめよう」

そう決めた。だが——その時、インターホンが鳴った。

透也の心臓が止まった。

「え...」

モニターを見る。誰も映っていない。また鳴る。

「柊さん...」

透也は確信した。また、柊が来ている。

インターホンは鳴り続ける。5分おきに。

透也はドアに近づいた。ドア越しに気配を感じる。

「ドアの向こうに、柊がいる」

透也はドアに手を当てた。冷たいドアの感触。その向こうに柊がいる。

「開けたら...」

透也はドアノブに手を掛けた。

「もし開けたら...」

柊に抱きしめられる。あの大きな腕に。男の体温に包まれる。

ドアノブを少し回しかける。だが、最後の瞬間——恐怖が勝った。

透也はドアから身を引いた。

「開けちゃ、ダメだ...」

インターホンは鳴り続ける。午後9時。午後10時。午後11時。

その度に、透也はドアに近づく。そして引き戻される。その繰り返し。

そして——透也の身体は、インターホンが鳴る度に反応していた。

「くそ...」

透也は自分を見下ろした。また反応している。

「何で...」

だが分かっていた。柊がそこにいる。ドア一枚隔てて。その事実が透也を興奮させている。

午前1時、インターホンがようやく止んだ。透也は安堵した。

「やっと...」

だが、その安堵は一瞬で消えた。携帯が震えた。メッセージ。柊から。

『先生、家にいますよね』

透也の手が股間に向かった。既に硬くなっている。

『インターホンに出てください』

その言葉を読んで、透也の手はズボンの中に入った。

『話がしたいんです』

直接、硬くなった部分に触れる。透也の息が荒くなった。

『お願いです』

透也は自分の手で、自分を扱き始めた。柊のメッセージを読みながら。

「ああ...」

声が漏れる。小さく、だが確実に。

携帯を見る。次のメッセージ。

『先生...会いたいです』

その言葉に、透也の手の動きが速くなる。

「ああ...柊さん...」

『どうして、出てくれないんですか』

「ああ...」

『僕、先生のことが好きなんです』

その言葉。透也は到達した。

「ああっ...!」

身体が震える。白濁が手に付着する。

透也は荒い呼吸のまま、床に座り込んだ。

「くそ...また...」

自己嫌悪。だが——携帯を見る。最後のメッセージ。

『もう、諦めた方がいいですか』

その言葉を見た瞬間、透也の心臓が止まった。

「諦める...?」

その可能性が、透也を恐怖させた。

「ダメだ...」

透也は気づいた。柊に諦められることが——一番怖い。

「会いたい...」

その感情が明確になった。

透也は携帯を握りしめた。返信すべきか。

『諦めないでください』と。

だが——指が震える。結局、送信できなかった。

朝まで眠れなかった。柊の顔が浮かぶ。泣いている顔。「孤独だった」という言葉。

透也の胸が少し痛む。だが——同時に、身体はまだ反応していた。

その夜、透也は何度も、自分に触れた。柊のメッセージを読み返しながら。到達する度に自己嫌悪。だが、止められなかった。

そして——月曜日が、やってくる。

透也は決意した。

「もう一度...会おう」

でも、今度は違う。逃げるのではなく——向き合うために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

好きなわけ、ないだろ

春夜夢
BL
放課後の屋上――不良の匠は、優等生の蓮から突然「好きだ」と告げられた。 あまりにも真っ直ぐな瞳に、心臓がうるさく鳴ってしまう。 だけど、笑うしかなかった。 誰かに愛されるなんて、自分には似合わないと思っていたから。 それから二人の距離は、近くて、でも遠いままだった。 避けようとする匠、追いかける蓮。 すれ違いばかりの毎日に、いつしか匠の心にも、気づきたくなかった“感情”が芽生えていく。 ある雨の夜、蓮の転校の噂が流れる。 逃げ続けてきた匠は初めて、自分の心と正面から向き合う。 駅前でずぶ濡れになりながら、声を震わせて絞り出した言葉―― 「行くなよ……好きなんだ」 誰かを想う気持ちは、こんなにも苦しくて、眩しい。 曇り空の下で始まった恋は、まだぎこちなく、でも確かにあたたかい。 涙とキスで繋がる、初恋の物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

その執着、愛ですか?~追い詰めたのは俺かお前か~

ちろる
BL
白鳳出版に勤める風間伊吹(かざまいぶき)は 付き合って一年三ヶ月になる恋人、佐伯真白(さえきましろ)の 徐々に見えてきた異常な執着心に倦怠感を抱いていた。 なんとか元の真白に戻って欲しいと願うが──。 ヤンデレ先輩×ノンケ後輩。 表紙画はミカスケ様のフリーイラストを 拝借させて頂いています。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...