美術教師の檻――「描き終わるまで帰さない」画家の執着

紺碧のごんぎつね

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【第3章:逃避・追跡・対面】(第11~20話)

第15話「追跡の快感と自覚」

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月曜日、透也は学校に行った。もう顔色は最悪だった。

田中先生が心配そうに声をかけてきた。

「久我先生...本当に大丈夫? 病院に行った方がいいんじゃない?」 「大丈夫です...」

透也は作り笑いをした。だが、その笑顔の下に、渇望が隠れていた。

授業は何とかこなした。だが、集中力はもう限界だった。

放課後、透也はいつもと違うルートで帰ることにした。駅の反対側。住宅街を通る道。 人通りは少ないが、柊に会う可能性は低い。

だが——透也は本当にそう思っていたのか?

「今日は大丈夫だろう」

その言葉は自分への言い訳だった。実は、透也は——意識的に、柊が現れやすいルートを選んでいたのだ。

住宅街を歩く。背後に気配を感じた。

透也の心臓が跳ねた。

(来ている...柊さんが...)

だが、透也は振り返らない。ゆっくりと歩く。故意に、遅く。

気配が近づいてくる。見守られている。隠れて見つめられている。その感覚が、背徳的で、そして興奮を呼び起こす。

「気のせいか」

透也は呟く。だが、その呟きは演技だった。本当は気づいている。本当は柊だと知っている。

透也は歩くスピードを落とす。さらに落とす。意図的に、ゆっくりと。

気配がさらに近づく。

(このまま......どうなるのか...)

透也の中で、期待と恐怖が混ざっている。

だが、やはり怖い。

「くそっ...!」

透也は突然走り出した。後ろから足音が追いかけてくる。角を曲がる。一瞬、後ろを見る。 影が見える。人の形。

透也は悲鳴を堪える。だが、その悲鳴は——完全な恐怖からではなく、興奮からのものだった。

さらに走る。人通りの多い大通りへ。ようやく足音が消えた。

透也は立ち止まって後ろを振り返る。誰も追ってこない。

「誰だったんだ...」

全身が汗でびっしょりだった。

家に着いて、ドアを開ける。すぐに鍵をかけた。チェーンもかける。

透也は壁に背中を預けた。 全身が汗でびっしょりだった。 心臓が激しく鳴っている。

だが——それは恐怖だけではなかった。

透也は、自分の身体を見下ろした。 ズボンが、硬くなった部分で盛り上がっている。

「くそ...」

追いかけられて——興奮している。

その事実が、透也を苦しめた。

シャワーを浴びようと、服を脱ぐ。

鏡に映る自分の裸体。

柊に見られた身体。柊に触れられた身体。

透也の手が、自分の首筋に触れた。 柊が触れた場所。

ゆっくりと、指で肌をなぞる。

鎖骨。胸。腹部。

柊の視線を辿るように。

透也の息が荒くなる。

「柊さんは...こうやって、見てたのか」

自分の身体を、柊の視点で見る。

それだけで——身体が反応する。

透也の手が、硬くなった部分に触れた。

「ああ...」

シャワーを浴びる前に——透也は、床に座り込んだ。

自分の手で、自分を扱く。

「柊さん...」

その名前を呟きながら。

追いかけられた感覚を思い出しながら。 見られていた感覚を思い出しながら。

「ああ...ああ...」

透也は到達した。

白濁が、床に飛び散る。

荒い呼吸のまま、透也はうずくまった。

「また...」

また、柊のことを考えて——

透也は立ち上がった。 シャワーを浴びる。

だが、どれだけ洗っても——柊の視線の感触は、消えなかった。

「怖い...」

だが、その声は弱々しかった。

携帯を見ると、メッセージが届いていた。柊から。

『今日も学校の近くにいました』

透也の心臓が止まりそうになった。

『先生の姿を見られて嬉しかった』 『いつもと違う道を通ってましたね』

透也の背筋が凍った。

「見られてた...全部...」

メッセージを続けて読む。

『先生が学校を出るのは、いつも午後5時半』 『月曜と水曜は、部活指導で6時』 『駅までのルートは3つ』 『一番使うのは、商店街経由』

透也の目が見開かれた。

「全部...知ってるのか」

手が震える。

『でも、今日は住宅街を通りましたね』 『僕、驚きました』

透也は携帯を床に落とした。

「ストーカーだ...」

完全に、ストーカーだ。柊は透也のことを全部知っている。帰宅ルートも。時間も。全て。

「怖い...」

透也はベッドに倒れ込んだ。

だが、その直後——透也の手は、股間に向かった。明確な意図を持って。

メッセージを読みながら、自分を扱く。

「柊さん...」

その名前を呟きながら到達する直前、透也は自分の行動に気づいた。

「くそ...」

手を止める。だが、欲望は止まらない。

その夜、透也は何度も自分に触れた。その度に、柊への渇望が深まっていった。
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