2 / 9
1章 転生したら推しの婚約者でした。
1話 転生
しおりを挟む毎日毎日残業ばかり。それでも生きてこれたのは推しがいたからだ。転職を考えようにも資格も余裕もなくて、帰ってすぐにシャワーを浴びてベッドにダイブする。イーギス様の抱き枕を抱いて寝るのが唯一の癒しだった。イーギス様ーイーギス・グランドルは乙女ゲーム【麗しの花姫】の攻略対象の1人で、私の最推しなのだ。次に生まれ変わるなら、グランドル家の侍女になりたいと思うほど。
今日も体に鞭打って、電車の中で【麗しの花姫】をやりながら職場に向かっていた。昨日だって今日だって、明日だって変わらない毎日を送るはずだったんだ。駅を出て、会社に向かう途中に悲鳴が聞こえてきて目を見張った。車が、私の方に突っ込んでくる。逃げなきゃ、と思う前にドンッと鈍い音と全身に痛みが走り体は宙に浮いていた。すぐに私の体は地面に打ち付けられ、私はそのまま目を閉じた。
「ん、んん……」
なんか、眩しい。ここは天国だろうか。地獄ってことはさすがにないよね……?私は腕で光を遮り、ゆっくりと目を開ける。視界に見えたのは天窓とシャンデリア。私は手を止め、瞬きをする。ここは……、ここは!?
「転生した!?」
異世界の定番、貴族の屋敷。私は飛び起きて、周りを見渡す。乙女ゲームに出て来るようなお姫様の部屋。ドレッサーがあって、ぬいぐるみがあって。私はベッドの上に立ってジャンプしてみる。確かに轢かれたはずなのに、どこも痛くない。
「わぁぁぁぁ」
私はベッドを飛び降りて鏡を見る。可愛い!金髪に赤色の瞳の美少女が鏡を覗いていた。私は手の甲と手のひらを順に見て、にんまりと笑う。まだ子供だ。それからまた鏡を見た。この容姿からしてモブということはないだろう。転生の定番といえばヒロインか悪役令嬢。この髪色にこの瞳で、もう少し大人になった姿を想像してみる。考えてる最中に、コンコンとドアがノックされた。
「はーい」
「ナターシャ様、おはようございます。体調はどうですか?」
侍女が部屋に入って来る。今、ナターシャって言った?
「もしかして、ナターシャ・ユーリティス!?」
「は、はい。そうですが、まだ熱はありますか?」
わあ、なんて運が良いんだろう。いや、轢かれてるんだから運は良くないか。ナターシャ・ユーリティスとは、私の愛するイーギス様の婚約者でいわゆる悪役令嬢。イーギス様ルートをやった時は犯罪まがいのことを平気でするくらい凶悪で、本当に恐ろしかった。
「ナターシャ様?まだ体調悪いですか?」
「あ、ううん。でもね、ちょっと記憶が曖昧なの。あなたはだぁれ?」
転生のテンプレ、記憶喪失。侍女を見上げて尋ねると、驚いた顔をした後涙目で見られる。あ、ちょっと心痛い。
「私は侍女のキャシーですわ。お医者様をお呼びしますから、ベッドに横になっててください」
キャシーに手を引かれ、ベッドに戻される。離れる前に私はキャシーの手を掴んだ。
「ねぇ、私は今何歳?」
「もうすぐ7歳の誕生日ですわ」
7歳か。イーギス様と婚約するのはいつだろう。貴族令嬢だからもうそろそろだろうか。その後はキャシーが呼んだお医者様に診察され、お父様もお母様も心配そうに私を見ている。
「記憶がところどころ抜けてるようですが、体調は問題なさそうです」
「そうですか」
心配そうにしてるお父様にも、泣きそうになってるお母様にも申し訳ないけど私は大好きな世界に転生できたことがただただ嬉しかった。
「お母様、私元気ですわ!だから笑ってください」
「ええ、ええそうね」
お母様が私を抱きしめる。現世に残してきた両親のことを思うと胸が締め付けられるが、前の人生はもう終わってしまったんだ。両親の分まで、私はナターシャの親孝行をしようと思う。
4
あなたにおすすめの小説
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる