転生したら推しの婚約者でした。悪役令嬢ですが執着されてます!

桜咲ちはる

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1章 転生したら推しの婚約者でした。

1話 転生

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 毎日毎日残業ばかり。それでも生きてこれたのは推しがいたからだ。転職を考えようにも資格も余裕もなくて、帰ってすぐにシャワーを浴びてベッドにダイブする。イーギス様の抱き枕を抱いて寝るのが唯一の癒しだった。イーギス様ーイーギス・グランドルは乙女ゲーム【麗しの花姫】の攻略対象の1人で、私の最推しなのだ。次に生まれ変わるなら、グランドル家の侍女になりたいと思うほど。

 今日も体に鞭打って、電車の中で【麗しの花姫】をやりながら職場に向かっていた。昨日だって今日だって、明日だって変わらない毎日を送るはずだったんだ。駅を出て、会社に向かう途中に悲鳴が聞こえてきて目を見張った。車が、私の方に突っ込んでくる。逃げなきゃ、と思う前にドンッと鈍い音と全身に痛みが走り体は宙に浮いていた。すぐに私の体は地面に打ち付けられ、私はそのまま目を閉じた。

「ん、んん……」

 なんか、眩しい。ここは天国だろうか。地獄ってことはさすがにないよね……?私は腕で光を遮り、ゆっくりと目を開ける。視界に見えたのは天窓とシャンデリア。私は手を止め、瞬きをする。ここは……、ここは!?

「転生した!?」

 異世界の定番、貴族の屋敷。私は飛び起きて、周りを見渡す。乙女ゲームに出て来るようなお姫様の部屋。ドレッサーがあって、ぬいぐるみがあって。私はベッドの上に立ってジャンプしてみる。確かに轢かれたはずなのに、どこも痛くない。

「わぁぁぁぁ」

 私はベッドを飛び降りて鏡を見る。可愛い!金髪に赤色の瞳の美少女が鏡を覗いていた。私は手の甲と手のひらを順に見て、にんまりと笑う。まだ子供だ。それからまた鏡を見た。この容姿からしてモブということはないだろう。転生の定番といえばヒロインか悪役令嬢。この髪色にこの瞳で、もう少し大人になった姿を想像してみる。考えてる最中に、コンコンとドアがノックされた。

「はーい」
「ナターシャ様、おはようございます。体調はどうですか?」

 侍女が部屋に入って来る。今、ナターシャって言った?

「もしかして、ナターシャ・ユーリティス!?」
「は、はい。そうですが、まだ熱はありますか?」

 わあ、なんて運が良いんだろう。いや、轢かれてるんだから運は良くないか。ナターシャ・ユーリティスとは、私の愛するイーギス様の婚約者でいわゆる悪役令嬢。イーギス様ルートをやった時は犯罪まがいのことを平気でするくらい凶悪で、本当に恐ろしかった。
 
「ナターシャ様?まだ体調悪いですか?」
「あ、ううん。でもね、ちょっと記憶が曖昧なの。あなたはだぁれ?」

 転生のテンプレ、記憶喪失。侍女を見上げて尋ねると、驚いた顔をした後涙目で見られる。あ、ちょっと心痛い。

「私は侍女のキャシーですわ。お医者様をお呼びしますから、ベッドに横になっててください」

 キャシーに手を引かれ、ベッドに戻される。離れる前に私はキャシーの手を掴んだ。

「ねぇ、私は今何歳?」
「もうすぐ7歳の誕生日ですわ」

 7歳か。イーギス様と婚約するのはいつだろう。貴族令嬢だからもうそろそろだろうか。その後はキャシーが呼んだお医者様に診察され、お父様もお母様も心配そうに私を見ている。

「記憶がところどころ抜けてるようですが、体調は問題なさそうです」
「そうですか」

 心配そうにしてるお父様にも、泣きそうになってるお母様にも申し訳ないけど私は大好きな世界に転生できたことがただただ嬉しかった。

「お母様、私元気ですわ!だから笑ってください」
「ええ、ええそうね」

 お母様が私を抱きしめる。現世に残してきた両親のことを思うと胸が締め付けられるが、前の人生はもう終わってしまったんだ。両親の分まで、私はナターシャの親孝行をしようと思う。
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