照明スタッフの私が、絶対好きになってはいけない演者ーー初恋の人と再会してしまいました。

桜咲ちはる

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第一章 これは恋じゃない

Prologue

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「ねぇ、若葉って3組の吉川くんのことが好きらしいよ」

 そんな噂が最初に流れたのはいつからだろう。私に聞こえないようにコソコソ話で、視線だけが向けられる違和感に居心地の悪さを感じていた。人の視線が怖くて、教室から出るのが億劫になっていったそんな時に友達が私の腕を引っ張った。

「若葉って吉川くんのこと好きなの?3組の」
「えっ……」

 誰にも言ってないはずなのに、知られてることに顔が熱くなる。慌てて首を横に振っても上手く誤魔化せなかったみたいで、友達が私の背中を撫でる。

「落ち着いてね。噂になってるから、吉川くんにも知られてると思う。てか全校生徒が知ってるかも」

 その言葉に青ざめた。恥ずかしい、迷惑かけた、学校にいたくない。色んな考えが頭をよぎる。私は教室を飛び出して、隣のクラスに向かった。

「吉川くん!」

 教室にいた吉川くんがこっちを見る。恥ずかしい、吉川くんは私のこと認識すらしていないだろうけど。

「私が吉川くんを好きだって噂、あれ嘘だから!迷惑かけてごめんなさい!」

 それだけ言って返事も聞かずに教室に戻って、鞄を持って早退した。一晩経って、私は先週告白してくれた人と付き合うことにした。なんてタイミングなんだと思うけど、一刻も早くその噂を消したかった。吉川くんと付き合いたい、とかそんなことすら考えたことなくて。ただただ恥ずかしさと気まずさだけが残った。私に彼氏が出来たことで噂は消え、吉川くんとはそれから一度も話すことなく高校を卒業した。

 忘れたくても忘れられない私の黒歴史。後にも先にもあんなにも恥ずかしい思いをしたのはその時だけだろう。友達も信じられなくなって疎遠になったけど、あれから12年。私はそれなりに普通の人生を歩んでいる。
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