7 / 20
第一章 これは恋じゃない
6話 酔っ払い
しおりを挟む「は?打ち上げに参加しない?お前が?」
「今日少し体調良くなくて」
先輩に打ち上げに行かなくていいか聞いたところ、先輩に驚かれた。いついかなる時も参加してたから無理もない。
「お前がライブ見て元気ならないわけないだろ、宮坂。華は多い方がいいしな」
ダメ、か……。私なんかが華にならないと思うけど。結局先輩に捕まってしまって打ち上げに参加する。私が居てもいなくても盛り上がりが変わるわけじゃないけど。端の席に座ってビールを頼む。周りの人と会話して、心配してた吉川くんたちとは席が離れてるから関わりがない。から安心してた。
「Voystは恋人いるの?」
そんな会話が聞こえてくるまでは。いませんね、と答える5人。同世代の話にホッとはしたものの、みゅうみゅうさんはともかく男性には結婚適齢期はないかと思い直す。
「タイプは?いい奴紹介してやろうか?」
先輩も調子に乗って会話に参加する。いやいや、とか遠慮がちな声が聞こえるのを無視してビールを飲み干す。意外に口が固いのか答えない5人に、女性が高らかに声を上げる。
「じゃあ私立候補しちゃおうかな~」
「やめとけ~、アーティストとの恋愛は禁止だぞ~」
アイドルの打ち上げではありえない会話。ノリで言ってるのはわかるけど。
「だってとわくんかっこいいじゃん!」
「とわだけかよ!」
確かに、みんな顔整ってるけど、吉川くんがダントツというか。高校の時からかっこよかったから想像通りというか、衰えてないことに驚くというか。
「とわはおとなしいタイプとか好きそうじゃん。この中だったら~、宮坂ちゃんとか!」
「「ぶっ……」」
思わずビールが口から出るのを慌てて手で押さえる。
「宮坂は全然おとなしくないっすよ!超強気」
「えー、マジ?従順そうに見えたけど」
自分が話の中心にいるなんて気まずい。
「宮坂ちゃーん!俺と付き合わない?」
「いいじゃん、お前別れたばっかなんだろ?」
中央から私に質問が飛んでくる。先輩も悪酔いしてる……。
「えっと、」
「戸惑ってる、可愛い~」
本当は断固拒否なんだけど、先輩の顔潰すことになりそうだし困る。
「酔いすぎですよ」
笑い声が聞こえてる中、吉川くんの落ち着いた声が聞こえる。
「え~、いいじゃん。俺結構稼いでるし、宮坂ちゃんもそろそろ結婚した方がいいでしょ」
「そういう話はちょっと、」
制止するとんだよ、とその人の機嫌が悪くなる。
「せっかくこっちが提案してやってるのに」
「……宮坂さんならもっといい人いるんじゃないすか?」
吉川くん……。
「あぁ?」
「酔いすぎですって!もうやめましょ~」
響さんが笑いながら止めてくれる。普段は慣れたメンバーだからこういうことはないけど、やっぱ初めての人だと距離感が掴めない。ここに居ても空気悪くするだけだし、私は謝って席を立った。
「大丈夫……?」
声をかけられて顔を上げる。いつの間にか横に吉川くんがいて驚いた。
「吉川くん……。ごめんなさい、空気悪くしちゃった」
「宮坂さんのせいじゃないでしょ。ちゃんと止めれなくてごめん」
それこそ吉川くんが謝ることないのに。私は首を横に振る。
「言われ慣れてはいるから」
「慣れ……、か」
男社会で生きてたらそう言われる。若い時はもっとひどかった。けど、別れたばっかだからこそグサッと刺さる言葉もあって。
「っ、」
涙が出てきて顔を背ける。
「さっき言ったのは本心だよ。宮坂さん真面目で仕事熱心だし、絶対良い人が現れるって」
「でもいっつもフラれる。俺のこと好きじゃないだろ、って」
何言ってんだろう私。本当に体調良くなかったのかな。酔いが回ってる。口を押さえると、吉川くんがそっか、と相槌を打ってくれる。
「宮坂さんの人生に必要なかっただけじゃない?」
それに、と吉川くんが一瞬言葉に詰まる。私は吉川くんを見上げた。
「宮坂さんは、すぐ顔に出る」
最初は意味がわからなかった。けど数秒して理解する。
「なっ、」
それは多分今じゃない。高校の時の、噂を否定しに行った時のこと……。
「忘れてください……」
「すみません。あ、タクシー呼びますか?戻りにくいですよね……」
吉川くんが気を遣って提案してくれる。私は手を左右に振った。
「電車で帰れるので大丈夫です!ありがとうございます。それじゃ」
私は吉川くんに頭を下げてその場を後にしようとした。
「宮坂さん!」
吉川くんが私を呼び止める。
「また、一緒に仕事出来たら嬉しいです」
冗談じゃない。こんな気まずい思い抱えながら仕事したくない。私は答えずに立ち去った。だけど、追加公演が決まったのはその次の日のこと。
「途中で投げ出すわけにはいかないじゃん……」
まさか追加公演が決まるとは、と思う反面あんなにファンが居るなら4公演だけじゃ足りないのもそりゃそうで。追加公演が決まったことは素直に嬉しくは思う。有無を言わさない先輩の出勤命令に返信して、私は今日の家事を終わらせる。私はふとMovingを開き、動画を再生した。Voystの。昨日まで聴いてた声や音で再生されるそれ。でも今までと違う。2人は、私の知ってる人たちだった。
「ふふっ、ふふふっ……」
幅広く活動してるVoystのゲーム実況を見る。相変わらず足立くんは淡々としてて、吉川くんは天然でそれに足立くんがつっこんで。あの頃、教室で聞こえた光景と似ていて懐かしくなる。私の通ってた高校から大物が出るなんて想像もしてなかった。気まずいのはもちろんだけど、彼らのやりとりをまた近くで見れるのはそれはそれで楽しみだった。
0
あなたにおすすめの小説
『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて
設楽理沙
恋愛
砂央里と斎藤、こじれてしまった糸(すれ違い)がほどけていく様子を描いています。
◆都合上、[言う、云う]混合しています。うっかりミスではありません。
ご了承ください。
斉藤准一 税理士事務所勤務35才
斎藤紀子 娘 7才
毒妻: 斉藤淳子 専業主婦 33才 金遣いが荒い
高橋砂央里 会社員 27才
山本隆行 オートバックス社員 25才
西野秀行 薬剤師 22才
岡田とま子 主婦 54才
深田睦子 見合い相手 22才
―――――――――――――――――――――――
❧イラストはAI生成画像自作
2025.3.3 再☑済み😇
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~
ねるねわかば
恋愛
悪路に閉ざされた貧しい辺境ルースライン領。
兄を支えたい子爵令嬢リゼは、視察に来た調査官のずさんな仕事に思わず異議を唱える。
異議を唱えた相手は、侯爵家の子息で冷静沈着な官吏ギルベルト。
最悪の出会いだった二人だが、領の問題に向き合う中で互いの誠実さを知り、次第に理解し合っていく。
やがてリゼが王都で働き始めたことを機に距離を縮める二人。しかし立ちはだかるのは身分差と政略結婚という現実。自分では彼の未来を縛れないと、リゼは想いを押し込めようとする。
そんな中、故郷の川で拾われる“名もなき石”が思わぬ縁を呼び、リゼの選択と領の未来を動かしていく――。
想いと責務の狭間で揺れる青年と、自分を後回しにしがちな少女。
すれ違いと葛藤の先で、二人は互いを選び取れるのか。
辺境令嬢の小さな勇気が恋と運命を変えていく。
※作中の仕事や災害、病、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
※8万字前後になる予定です。
マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった
naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】
出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。
マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。
会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。
――でも、君は彼女で、私は彼だった。
嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。
百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。
“会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです
ひふみ黒
恋愛
【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】
「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」
★あらすじ★
「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」
28歳の誕生日。
一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。
雨の降る路地裏。
ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。
「捨て猫以下だな」
そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。
そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。
「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」
利害の一致した契約関係。
条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。
……のはずだったのに。
「髪、濡れたままだと風邪を引く」
「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」
同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。
美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。
天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。
しかし、ある雷雨の夜。
美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。
「……手を出さない約束? 撤回だ」
「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」
10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。
契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。
元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー!
【登場人物】
◆相沢 美月(28)
ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。
◆一条 蓮(28)
ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる