上 下
153 / 390

139話・逃げた先で…

しおりを挟む
 タブへと触れたかと思ったその瞬間、僕はタブと一緒に見知らぬ場所へと飛んでいた。
 見た感じ、どこかの部屋のようだ。

「ひぃ!!」

 タブが使った転移結晶で転移した際、掴んでいた部分を離してしまったのか、四つん這い状態で僕から距離をとりだした。僕が一緒について来た事に、かなりビビっているみたいだ。

「た… 頼む、金ならいくらでもやるから、見逃し… ん?」

 タブは、四つん這いのまま僕をジィーと見てくる。

「!!」

 少しして、驚いたような顔をした後、

「お前、どこかで見た事あるかと思ったら、役立たずの空箱だな。」

 ニヤリと口角を上げながら、そう言ってきた。
 どうやら、今気づいたようだ。

「どうして、お前なんて役立たずが、あの小娘と一緒にいたのか知らないが、お前ごときなら、俺でも何とかなる。」

 さっきまでの態度とうって変わって、かなり強気になった。でも、そんな漏らした状態で言われても…
 タブは、僕にむけて、手を前につき出しながら魔法の詠唱をしだしたので、詠唱が終わる前に、さっと近寄り、

「うぼっ!!」

 右頬を平手打ちする。一応、加減はしてある。
 それでもタブは、抵抗なく床を転がっていく。

「ぎ… ぎざま、俺の顔を…」

 上げたタブの顔は、鼻血を垂れ流していた。
 それでも、再び詠唱を始めようとしたので、今度は、逆の頬を平手打ちする。
 その後も、学習せず、無駄に詠唱を続けようとするので、交互に頬を平手打ちしてやった。
 両頬が、腫れ出した所で、

「や… やめひぇ… くはらい…」

 やっと、諦めた。
 グラディウスさんに心配をかけたくないので、次で、終わらせようと、拳を握り、タブに近寄る。

「やめ… たす…」

 タブは、後ろへ後ずさっていくが、一気に駆け寄り、拳を振り下ろした。
 気絶したタブを見下ろしながら、

「これで、彼女の仇が少しでもとれたかな…」

 そう呟いた後、アイテムボックスから、転移結晶を取り出し、気絶したタブを掴み、グラディウスさんのいる部屋へと転移した。





 私が、油断した隙に、あいつが逃げ出した。

「ちっ!!」

 私は、すぐ商会長へ駆け寄り、襟を掴みあげる。

「あいつは、どこに逃げた。すぐに言え!!」

「ひっ!! し… 知らない!!」

「ほう… あいつをまだ庇うの?」

「ち… 違う!! 本当に知らないんだ!! タブが、あんな事が出来る事すら知らなかった!!」

 どうやら、嘘じゃなさそうだね。

「あんたたちは、何か知ってる?」

 こっそり、逃げ出そうとしていた2人に尋ねる。

「「知りません!!」」

 こっちも、同じ答えだ。
 私は、これ以上意味はないなと判断し、3人を気絶させた。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,889pt お気に入り:1,756

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:40,988pt お気に入り:29,894

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,405pt お気に入り:3,460

処理中です...