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閑話・ラウム 6

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 一瞬、あれはもしかして例の物ではと思ったのだが、よくよく考えてみれば、そんな事ある訳ないかと、そう思った瞬間、

「エリクサーは、かなり手間取るから、エルマーナ様に飲ます直前までは出さない方がいいな…」

 その発言を聞き、私の体は固まってしまった。
 たけど、すぐ固まっている暇はないと、考えを巡らす。
 最初に思い浮かんだのが、ここで姿を現して、ノーリから話を聞くというものだったが、

『いや、それはまだ早計か…』

 ノーリが持っている物が本物かどうかも分からないし、かといって、ここで急に私が姿を現して、それは本物かどうか聞くのも、なぜその事を知っているのかと逆に怪しまれる可能性が高い。
 それに、今一度、落ち着いて考えを巡らせてみた所、何点か少し気になる事があった。
 この際、あれが本物かどうかはひとまず置いといて、どうしてあれを持っている事をグラディウスたちに教えないのか、それに、何故そんな貴重な物を、会って間もないエルに使用してくれるのか…

『分からない事だらけで、嫌になるわね…』

 でも、それでエルが助かる可能性があるのなら、それでいい。
 ただ本当に、あれが本物なのか分からないし、エルを助けてくれようとしている事は分かっているのだが、まだエルに危害を加える可能性がないとは言いきれないので、私は、継続してノーリの事を観察する。





 暫くしてから、ノーリが動き出した。
 アイテムボックスから、転移結晶を取り出したのを見届けた所で、私は先にエルの部屋へと移動する。
 エルの傍へ移動した所で、すぐにノーリも扉の近くに転移してきた。
 転移後すぐに、エルの寝ている近くまで来て、例の物を取り出し、ついでに私からしたら今更だけど、顔を隠す為のローブを取り出していた。
 そして、ノーリが、エルに例の物を飲ませる所を私は、じっと眺める。
 すると、徐々にエルの顔に赤みが戻ってくる。
 それを見て、あぁエルは助かったんだと込み上げてくるものがあった。
 その間にも、ノーリは、エルを寝かせ、すぐにでも転移結晶で、戻ろうとする。
 私は、目元をぬぐい姿を現せて、ノーリにお礼を伝えようか思った所で、エルが目を覚ました。
 エルの発した言葉に驚いたのか、戻ろうとしたノーリの手元から転移結晶が落ち、その音に気づいたエルがノーリに気づいてしまった。
 そのせいで、ここで私が姿を現して話をややこしくする訳にもいかず、お礼を伝えるタイミングを逃した私は、どうなるのかを見守った。
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