僕が可愛いって本当ですか?

さよ

文字の大きさ
4 / 21
本編

嘘だと言ってくれ 2

しおりを挟む
 鳥の鳴き声すら聞こえない静かな室内。朝になったのかすっかり明るくなっている。
 先程まで毛布に包まり眠っていた幸多は、寝起きでぼんやりした目をこすった。

「……なんで?」

 全身がだるい。考えたくはないけれど、尻に違和感があるような気もする。確認? いやいやいや…………触るなんて怖くてできない。

 そんなことを思いながら、幸多はもぞもぞと横向きの体勢になった。腰が痛いのは自分の増えに増えた脂肪のせいだけではないだろう。
 原因となった出来事を、鮮明に覚えているのだから。

「夢じゃないよねぇ……うん、知ってた」

 この部屋は明らかに幸多が生活していた部屋ではない。
 突然景色が変わったこともあり、いつか読んだ漫画のようなとんでもないことが自分の身に降りかかっているのではないか、と幸多は考えた。
 ……例えば、異世界に来てしまった、とか。

 窓から光が差し込み、見えるのは空と木々のみだが変わった色をしているというわけでもない。
 そこだけを見れば異世界とは思えないが、チラリと視線を動かしてみればランプも本も浮かんだままで、たまに本が開いては数ページだけパラパラとめくれていった。
 あのピンクの玉が入った瓶だけはフタがされ、棚に戻されたようだ。

 起き上がって見てみたい気持ちもあるが、腰が痛くて今日一日は確実に動けそうにない。

「はぁ……。ヒューさん、だっけ。いなくて良かった……」

 ヒューの家なのだろうから、いつかは帰ってくるはずだ。宿に放置とかじゃないよね? と不安になったが動けないのでどうしようもない。
 状況を説明するためにも、頭を整理して待つことにした。

 されたことを考えれば同じ空間にいることは危ないかもしれないが、頼れる人がいない。
 一瞬だけ幼馴染みの顔が浮かんだけれど、この世界にいるはずもない。

 ヒューに頼るとして、言葉は通じるがここでの常識が皆無で外に出ることも危ない場合、あわよくば生活に慣れるまでの衣食住を確保できるのではないかと欲がちらついた。
 それくらい望んでも良いんじゃないか?

(不法侵入だと言われて放り出される可能性もあるけれど。まあ、どう転ぶとしても相手の話を聞いてから僕のことを話そう)

 ある程度まとまったところで、毛布を引っ張り体に巻き付けながら寝返りを打った。
 あちらはまだ夏で、こんなに寒くなかったはずなのに。両親は気づいただろうか。帰れたところで僕の居場所は……と、再び考え始めた幸多の耳に、扉の開く音が聞こえた。

「あれ、起きてる……?」
「…………」
「あー、えーっと、その、……ごめん? っじゃなくて! ……申し訳ありませんでした!」
「!?」

 ガバッと勢いのある謝罪から始まり、ヒューはこれまでのいきさつを説明しだした。顔は青ざめていて、必死で言葉を発しているようで口も挟めずに幸多は眺める。

 家に帰ってくるまでを話したヒューは、何かできることはないかと言い出した。

「なんでも言ってほしい……と言いたいけれど、コータがどうやってこの場所に来たのかは先に聞いても良いかな? あと、これはコータの服で……」

 そう言われ、ずっと素っ裸だった幸多は着替えを渡されたものの思うように動けず、膝までのチュニックを上からかぶるだけにした。
 パンツもはいていないしスースーするが、仕方がない。なるべく気にしないようにして、詰まりながらもこの世界のことがわからないと話した。

 それを聞いたヒューは、魔力もないみたいだし誰かに飛ばされた気配もない、と、おとぎ話を思い出しながら納得していた。

 いつ頃から語られているのかはわからないが、過去に異世界から来た人間がいたらしい。
 苦難を乗り越え二人は幸せに暮らしました、というよくあるお話だった。子ども向けにかなり変更されているとは思う。

 異世界人であるその人が帰ったという文章は、どこにもなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する

雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。 ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。  「シェイド様、大好き!!」 「〜〜〜〜っっっ!!???」 逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。

召喚失敗、成れの果て【完結】

米派
BL
勇者召喚に失敗され敵地に飛ばされた少年が、多腕の人外に保護される話。 ※異種間での交友なので、会話は一切不可能です。

【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro
BL
「……僕、大人になったよ。だから……もう、───いいよね?」 最愛の人に先立たれて3年。今だ悲しみから立ち直れず、耐えられなくなった結(ゆい)はその生涯を終えようとする。しかし、次に目が覚めたのは、生命を見守る大樹がそびえ立つ異世界だった。 そこで亡き恋人の面影を持つ青年・ルークと出会う。 亡き恋人への想いを抱えながらも、優しく寄り添ってくれるルークに少しずつ惹かれていく結。そんなある日、ある出来事をきっかけに、彼から想いを告げられる。 「忘れる必要なんてない。誰かを想うユイを、俺はまるごと受け止めたい」 ルークの告白を受け入れ、幸せな日々を送る結だったが、それは突然終わりを迎える。 彼が成人を迎えたら一緒に村を出ようと約束を交わし、旅立つ準備を進めていた矢先、結は別の女性と口づけを交わすルークの姿を目撃してしまう。 悲しみの中で立ち止まっていた心が、異世界での出会いをきっかけに再び動き出す、救済の物語。 ※センシティブな表現のある回は「*」が付いてますので、閲覧にはご注意ください。   ストーリーはゆっくり展開していきます。ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

処理中です...