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本編
嘘だと言ってくれ 2
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鳥の鳴き声すら聞こえない静かな室内。朝になったのかすっかり明るくなっている。
先程まで毛布に包まり眠っていた幸多は、寝起きでぼんやりした目をこすった。
「……なんで?」
全身がだるい。考えたくはないけれど、尻に違和感があるような気もする。確認? いやいやいや…………触るなんて怖くてできない。
そんなことを思いながら、幸多はもぞもぞと横向きの体勢になった。腰が痛いのは自分の増えに増えた脂肪のせいだけではないだろう。
原因となった出来事を、鮮明に覚えているのだから。
「夢じゃないよねぇ……うん、知ってた」
この部屋は明らかに幸多が生活していた部屋ではない。
突然景色が変わったこともあり、いつか読んだ漫画のようなとんでもないことが自分の身に降りかかっているのではないか、と幸多は考えた。
……例えば、異世界に来てしまった、とか。
窓から光が差し込み、見えるのは空と木々のみだが変わった色をしているというわけでもない。
そこだけを見れば異世界とは思えないが、チラリと視線を動かしてみればランプも本も浮かんだままで、たまに本が開いては数ページだけパラパラとめくれていった。
あのピンクの玉が入った瓶だけはフタがされ、棚に戻されたようだ。
起き上がって見てみたい気持ちもあるが、腰が痛くて今日一日は確実に動けそうにない。
「はぁ……。ヒューさん、だっけ。いなくて良かった……」
ヒューの家なのだろうから、いつかは帰ってくるはずだ。宿に放置とかじゃないよね? と不安になったが動けないのでどうしようもない。
状況を説明するためにも、頭を整理して待つことにした。
されたことを考えれば同じ空間にいることは危ないかもしれないが、頼れる人がいない。
一瞬だけ幼馴染みの顔が浮かんだけれど、この世界にいるはずもない。
ヒューに頼るとして、言葉は通じるがここでの常識が皆無で外に出ることも危ない場合、あわよくば生活に慣れるまでの衣食住を確保できるのではないかと欲がちらついた。
それくらい望んでも良いんじゃないか?
(不法侵入だと言われて放り出される可能性もあるけれど。まあ、どう転ぶとしても相手の話を聞いてから僕のことを話そう)
ある程度まとまったところで、毛布を引っ張り体に巻き付けながら寝返りを打った。
あちらはまだ夏で、こんなに寒くなかったはずなのに。両親は気づいただろうか。帰れたところで僕の居場所は……と、再び考え始めた幸多の耳に、扉の開く音が聞こえた。
「あれ、起きてる……?」
「…………」
「あー、えーっと、その、……ごめん? っじゃなくて! ……申し訳ありませんでした!」
「!?」
ガバッと勢いのある謝罪から始まり、ヒューはこれまでのいきさつを説明しだした。顔は青ざめていて、必死で言葉を発しているようで口も挟めずに幸多は眺める。
家に帰ってくるまでを話したヒューは、何かできることはないかと言い出した。
「なんでも言ってほしい……と言いたいけれど、コータがどうやってこの場所に来たのかは先に聞いても良いかな? あと、これはコータの服で……」
そう言われ、ずっと素っ裸だった幸多は着替えを渡されたものの思うように動けず、膝までのチュニックを上からかぶるだけにした。
パンツもはいていないしスースーするが、仕方がない。なるべく気にしないようにして、詰まりながらもこの世界のことがわからないと話した。
それを聞いたヒューは、魔力もないみたいだし誰かに飛ばされた気配もない、と、おとぎ話を思い出しながら納得していた。
いつ頃から語られているのかはわからないが、過去に異世界から来た人間がいたらしい。
苦難を乗り越え二人は幸せに暮らしました、というよくあるお話だった。子ども向けにかなり変更されているとは思う。
異世界人であるその人が帰ったという文章は、どこにもなかった。
先程まで毛布に包まり眠っていた幸多は、寝起きでぼんやりした目をこすった。
「……なんで?」
全身がだるい。考えたくはないけれど、尻に違和感があるような気もする。確認? いやいやいや…………触るなんて怖くてできない。
そんなことを思いながら、幸多はもぞもぞと横向きの体勢になった。腰が痛いのは自分の増えに増えた脂肪のせいだけではないだろう。
原因となった出来事を、鮮明に覚えているのだから。
「夢じゃないよねぇ……うん、知ってた」
この部屋は明らかに幸多が生活していた部屋ではない。
突然景色が変わったこともあり、いつか読んだ漫画のようなとんでもないことが自分の身に降りかかっているのではないか、と幸多は考えた。
……例えば、異世界に来てしまった、とか。
窓から光が差し込み、見えるのは空と木々のみだが変わった色をしているというわけでもない。
そこだけを見れば異世界とは思えないが、チラリと視線を動かしてみればランプも本も浮かんだままで、たまに本が開いては数ページだけパラパラとめくれていった。
あのピンクの玉が入った瓶だけはフタがされ、棚に戻されたようだ。
起き上がって見てみたい気持ちもあるが、腰が痛くて今日一日は確実に動けそうにない。
「はぁ……。ヒューさん、だっけ。いなくて良かった……」
ヒューの家なのだろうから、いつかは帰ってくるはずだ。宿に放置とかじゃないよね? と不安になったが動けないのでどうしようもない。
状況を説明するためにも、頭を整理して待つことにした。
されたことを考えれば同じ空間にいることは危ないかもしれないが、頼れる人がいない。
一瞬だけ幼馴染みの顔が浮かんだけれど、この世界にいるはずもない。
ヒューに頼るとして、言葉は通じるがここでの常識が皆無で外に出ることも危ない場合、あわよくば生活に慣れるまでの衣食住を確保できるのではないかと欲がちらついた。
それくらい望んでも良いんじゃないか?
(不法侵入だと言われて放り出される可能性もあるけれど。まあ、どう転ぶとしても相手の話を聞いてから僕のことを話そう)
ある程度まとまったところで、毛布を引っ張り体に巻き付けながら寝返りを打った。
あちらはまだ夏で、こんなに寒くなかったはずなのに。両親は気づいただろうか。帰れたところで僕の居場所は……と、再び考え始めた幸多の耳に、扉の開く音が聞こえた。
「あれ、起きてる……?」
「…………」
「あー、えーっと、その、……ごめん? っじゃなくて! ……申し訳ありませんでした!」
「!?」
ガバッと勢いのある謝罪から始まり、ヒューはこれまでのいきさつを説明しだした。顔は青ざめていて、必死で言葉を発しているようで口も挟めずに幸多は眺める。
家に帰ってくるまでを話したヒューは、何かできることはないかと言い出した。
「なんでも言ってほしい……と言いたいけれど、コータがどうやってこの場所に来たのかは先に聞いても良いかな? あと、これはコータの服で……」
そう言われ、ずっと素っ裸だった幸多は着替えを渡されたものの思うように動けず、膝までのチュニックを上からかぶるだけにした。
パンツもはいていないしスースーするが、仕方がない。なるべく気にしないようにして、詰まりながらもこの世界のことがわからないと話した。
それを聞いたヒューは、魔力もないみたいだし誰かに飛ばされた気配もない、と、おとぎ話を思い出しながら納得していた。
いつ頃から語られているのかはわからないが、過去に異世界から来た人間がいたらしい。
苦難を乗り越え二人は幸せに暮らしました、というよくあるお話だった。子ども向けにかなり変更されているとは思う。
異世界人であるその人が帰ったという文章は、どこにもなかった。
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