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番外編
デンドルムが出会ったヒューという男
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デンドルムはウェセターという国に生まれた。魔族と人間が入り交じるその国で、隠れ住むエルフ達しか見たことのないデンドルムは何も知らずに村を離れた。
「はぁ……こんな扱いを受けるとは思わないだろ……」
依頼を受けるにも組んでくれる者などほとんどいない。いくら回復役が必要と言っても、ある程度戦えるのならそれに越したことはないのだ。
それに、この見た目では話しかける前に避けられることも少なくない。
(オレ、ここに来るまで自分が醜いなんて思ってもいなかった。普通だとばかり……)
周りにいたエルフは皆似たような容姿をしていて、この顔が普通だった。
諦めて近場の弱い魔物を狙うか……と思い移動していたときのこと。
「最悪だよ。強ぇっていうから組んだのによぉ」
「怪我したのは俺だぞ。“最悪”は俺の言葉だ」
「ま、そうだな。……あいつ大怪我してたし帰ってきても死んじまうんじゃねぇか?」
「さぁな。もう俺らには関係ないだろ」
下品に笑いながら通り過ぎた人間を横目に、門へと歩いて行く。回復薬くらい持ってるだろ、と急いで店の前を通りしばらくして、ふと暗い道へ目を向けた。
「は!?」
血がこびりついた服でうずくまる男を見つけた。まさか……と思い顔をのぞき込めば自分と似たり寄ったりで、いいように利用されて何も処置されなかったのだと悟った。
もしかしたらすれ違った男達が言っていたやつかもしれない。
「おい、動けるか?」
「……」
「……ま、無理か。仕方ねぇ、今回だけだ」
男に向かって回復をかけ、治ったことがわかったので特に話しかけることもなく目的の場所へ向かう。
「回復の代金は」
「いらねぇよ」
そう言って、もう関わらないだろうとその日のことは忘れていった。
◇ ◇ ◇
最近、醜いが強いという者の名前をよく聞く。
一度だけ遭遇したときに見た顔は、以前血まみれで倒れていたやつと同じ顔だった。ヒューというらしい。
そいつに断られたからと回復役を多めに連れて魔物を狩るという集まりに誘われた。あまり信用はできないかもしれないけれど、生活もギリギリの状態だ。
渋々受けてここまで来たが……やはりダメだった。
「チッ……ふざけんな」
森を抜けた先の開けた草原。自分の実力に見合わない相手に挑んで、返り討ちに遭うなんて目に見えていた。しかも味方を刺すとはどういうことだ。
デンドルムの後ろにいた回復役がナイフを突き刺し、逃げていくのを見た。囮にしようとしたのだろう。そのもくろみは成功した。
逃げ足の速いそいつが離れてすぐ、デンドルムの体に衝撃が来る。横に吹き飛ばされ、何かにぶつかった。多分、木だ。森まで飛ばされたのだろう。
体重が軽いのは良かったのかもしれない。遠くに飛ばされた獲物よりも、近くにいる方へ行ったようで追いかけては来なかった。
「ぐっ……」
刺さったナイフを抜き取り、じくじく痛む傷口に回復をかける。他も治したいところだが、自分ばかりが働かされ魔力は底をつきそうだ。回復薬も他の者に使ってしまった。
すぐにでも移動したいけれど、しばらくここから動けそうにない。そんなことを考えていると、ガサガサと音が聞こえデンドルムの顔に影が落ちる。
「?」
「それ飲んで、さっさと帰りなよ」
ヒューが横にいた。手に持ってこちらへ渡そうとしているのは回復薬か。
受け取らずにいたら、ヒューは押しつけるようにそれを置いて去って行く。
「これ、お前んだろ?」
「……予備はあるから」
デンドルムが少し大きい声で言えば、立ち止まって振り返ることなくそう返事が返ってきた。
「あ、助けに来てくれたのか?」
「あんたがこっちに飛んできたからだよ。……まあ、借りもあるし」
その言葉を最後にヒューの姿は見えなくなった。
◇ ◇ ◇
「はぁ~……」
ため息をつきながら財布を見るが、何度見ても金額は変わらない。もう、仲間というものは諦めた方が良いのではないか、とデンドルムは落ち込んだ。
座り込んで財布を見つめて動かない。どんよりとした空気をまとっていて、誰もが避けて通っていた。そこへ近づく者が一人。
「なぁ。依頼を受けたいなら一緒に行くか?」
「え?」
うなだれていたデンドルムを見かねて、ヒューは声をかけた。
毎日同じ所に座り込んでため息をついて、いい加減うざったくなったのだ。
「……気が乗らないなら別に良いけれど」
「は……行く! 絶対行く! よっしゃ、これからよろしくな」
「誰も毎回とは言っていないよ……」
文句を言いつつ、会えば一緒に組んで仕事をした。数をこなせばこなすほど、お互いの動きもわかり難しい依頼も受けられるようになった。
後に、これほど長く組むことになるとは、とヒューはぼやくこととなる。
「はぁ……こんな扱いを受けるとは思わないだろ……」
依頼を受けるにも組んでくれる者などほとんどいない。いくら回復役が必要と言っても、ある程度戦えるのならそれに越したことはないのだ。
それに、この見た目では話しかける前に避けられることも少なくない。
(オレ、ここに来るまで自分が醜いなんて思ってもいなかった。普通だとばかり……)
周りにいたエルフは皆似たような容姿をしていて、この顔が普通だった。
諦めて近場の弱い魔物を狙うか……と思い移動していたときのこと。
「最悪だよ。強ぇっていうから組んだのによぉ」
「怪我したのは俺だぞ。“最悪”は俺の言葉だ」
「ま、そうだな。……あいつ大怪我してたし帰ってきても死んじまうんじゃねぇか?」
「さぁな。もう俺らには関係ないだろ」
下品に笑いながら通り過ぎた人間を横目に、門へと歩いて行く。回復薬くらい持ってるだろ、と急いで店の前を通りしばらくして、ふと暗い道へ目を向けた。
「は!?」
血がこびりついた服でうずくまる男を見つけた。まさか……と思い顔をのぞき込めば自分と似たり寄ったりで、いいように利用されて何も処置されなかったのだと悟った。
もしかしたらすれ違った男達が言っていたやつかもしれない。
「おい、動けるか?」
「……」
「……ま、無理か。仕方ねぇ、今回だけだ」
男に向かって回復をかけ、治ったことがわかったので特に話しかけることもなく目的の場所へ向かう。
「回復の代金は」
「いらねぇよ」
そう言って、もう関わらないだろうとその日のことは忘れていった。
◇ ◇ ◇
最近、醜いが強いという者の名前をよく聞く。
一度だけ遭遇したときに見た顔は、以前血まみれで倒れていたやつと同じ顔だった。ヒューというらしい。
そいつに断られたからと回復役を多めに連れて魔物を狩るという集まりに誘われた。あまり信用はできないかもしれないけれど、生活もギリギリの状態だ。
渋々受けてここまで来たが……やはりダメだった。
「チッ……ふざけんな」
森を抜けた先の開けた草原。自分の実力に見合わない相手に挑んで、返り討ちに遭うなんて目に見えていた。しかも味方を刺すとはどういうことだ。
デンドルムの後ろにいた回復役がナイフを突き刺し、逃げていくのを見た。囮にしようとしたのだろう。そのもくろみは成功した。
逃げ足の速いそいつが離れてすぐ、デンドルムの体に衝撃が来る。横に吹き飛ばされ、何かにぶつかった。多分、木だ。森まで飛ばされたのだろう。
体重が軽いのは良かったのかもしれない。遠くに飛ばされた獲物よりも、近くにいる方へ行ったようで追いかけては来なかった。
「ぐっ……」
刺さったナイフを抜き取り、じくじく痛む傷口に回復をかける。他も治したいところだが、自分ばかりが働かされ魔力は底をつきそうだ。回復薬も他の者に使ってしまった。
すぐにでも移動したいけれど、しばらくここから動けそうにない。そんなことを考えていると、ガサガサと音が聞こえデンドルムの顔に影が落ちる。
「?」
「それ飲んで、さっさと帰りなよ」
ヒューが横にいた。手に持ってこちらへ渡そうとしているのは回復薬か。
受け取らずにいたら、ヒューは押しつけるようにそれを置いて去って行く。
「これ、お前んだろ?」
「……予備はあるから」
デンドルムが少し大きい声で言えば、立ち止まって振り返ることなくそう返事が返ってきた。
「あ、助けに来てくれたのか?」
「あんたがこっちに飛んできたからだよ。……まあ、借りもあるし」
その言葉を最後にヒューの姿は見えなくなった。
◇ ◇ ◇
「はぁ~……」
ため息をつきながら財布を見るが、何度見ても金額は変わらない。もう、仲間というものは諦めた方が良いのではないか、とデンドルムは落ち込んだ。
座り込んで財布を見つめて動かない。どんよりとした空気をまとっていて、誰もが避けて通っていた。そこへ近づく者が一人。
「なぁ。依頼を受けたいなら一緒に行くか?」
「え?」
うなだれていたデンドルムを見かねて、ヒューは声をかけた。
毎日同じ所に座り込んでため息をついて、いい加減うざったくなったのだ。
「……気が乗らないなら別に良いけれど」
「は……行く! 絶対行く! よっしゃ、これからよろしくな」
「誰も毎回とは言っていないよ……」
文句を言いつつ、会えば一緒に組んで仕事をした。数をこなせばこなすほど、お互いの動きもわかり難しい依頼も受けられるようになった。
後に、これほど長く組むことになるとは、とヒューはぼやくこととなる。
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