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第2章:第4節
寮長の看病と俺様の抱く感情
しおりを挟む「おい!藤野!?」
俺は急に倒れた藤野のところに駆け寄り、頭を支える。
「…ガッ、ハ…ア゛ッ!」
(過呼吸状態になってやがる……!)
一目で藤野の呼吸がうまく吸い込めず、過呼吸状態に陥ってると気付いた俺は直ぐさま横抱きに抱える。リビングの隣である俺の寝室に運んで布団を引いてから"彼女"を布団の上に毛布を被せた。
「藤野、息をゆっくり吸うんだ。」
俺は寮長として藤野をゆっくり息をするよう誘導させる。寮長である俺が慌てるわけにはいかない。
「…ア゛ッ……グッ!」
「………難しいかもしれんが、ゆっくり、浅く吸うんだ。」
過呼吸により息苦しむ藤野に俺は誘導させながら話しかける。前にもこの事態が起きて情けねぇが、菜穂に助けを求めたことがある。その時に初めて起きた事態だったからだ。
(確かこんな感じだったよな…………)
この状態になったら慌てず話しかけるのが一番いいと菜穂が言っていた。それが患者にとって安心するからと。
「……グッ………」
「そうだ、ゆっくりだぞ。ゆっくり息を吸って……」
藤野の呼吸が少し戻ってきて、過呼吸が治り始める。
藤野が過呼吸状態になって三十分後には、スースーと藤野の鼻息が立てて一定のある呼吸に戻ってきた。
(……ハァー、一時はどうなるかと思ったぜ。)
いきなりの事態に俺はぐったりして腰をおろして畳に手をつく。
(俺が話してる時に過呼吸状態に陥るとは、相当ストレス溜まってたんだろうな…………)
俺は寝息を立てる藤野を見て申し訳ない顔をする。
(親父がヴァンパイアハンターだったし、スノーセイレーンについて聞いていたからなんとなく思ってたんだけどよ……)
手を伸ばして、布団を乗せる際に外した藤野の銀髪に触れる。
(まさか思わないだろう……藤野が実は女で、しかもあのスノーセイレーンだ、なんてさ。)
その銀髪は光沢がかかっているため、見た目で明らかに地毛であると分かる。染めた髪ではここまで綺麗な色は出せない。
(なんで藤野は男に成りすましてんだろう……)
触れた銀髪を放し、俺は今も寝息を立てる藤野の寝顔を眺めながら神妙な顔で浮かべた。
※※※※※※※※※※
「遅い………!」
俺はリビングにて、いつまで経っても来ないスピカに腕を組みながら剣幕なオーラを醸し出す。
(寮長である濱田に連れられて、既に二時間経過してんじゃねぇか……)
時刻は午後九時過ぎ、リビングに飾ってある時計を見ながらイライラしていた。俺は普段寮長を濱田さんと呼んでいるが心の中では呼び捨てにしている。
(……話だけでこんなに経つか!!)
先程の濱田とスピカが話す場面を思い浮かべ、俺は眉を皺に寄せる。
(濱田の顔を見た時、なんか知らねーけど物凄くイライラする……!)
スピカが俺以外の奴に話をしてるところを見ると、俺の胸はいつも抉られるような痛みが襲いかかる。こんなこと、今までなかったはずだ。
「クソッ!!」
俺は頭をぐしゃぐしゃと掻き回して、玄関を開けて507号室を出て学生寮の階段を登り屋上へと向かう。
そして屋上のドアに触れて、ガチャッと開ける。
屋上のフェンスまで歩み寄り空を見上げると、俺の目には満月が映り込む。
(成る程、そういうことかよ…………)
俺は夜空に浮かぶ月を見て納得した。よく見ると月の色は綺麗な黄色ではなく、少し赤みがかかっていた。
「……今日は月蝕だったんだな。どうりでイライラするはずだぜ!」
口ではそう呟くが本当にそれだけなんだろうか。俺のイライラは月蝕だけではないと心の何処かでそう思い始めていた。
……____俺が抱いてるこの感情は、嫉妬であることに。
だがこの時の俺は、このイライラは月蝕が原因だと決めつけていた。そして俺はこのイライラがおさまるまで、507号室に戻り自分の部屋に閉じこもった。
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