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第3章:第5節
不穏という名の……
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よいしょ、とセレスが声掛けして立ち上がったので、私も座り込んだ状態から腰に力を入れて立ち上がる。
「さてと、ワタクシはそろそろ学校行く支度をしなくちゃ」
「え?もう、そんな時間なの……?」
「かれこれ一時間半、経過してるわよ。」
リビングに掛けてある時間を見れば時刻は早朝5時に経過していた。
「もう一時間したらワタクシはここを空けるけど、今日は鎮痛剤を飲んで、部屋でちゃんと横になって安静しなさい!これは同室者であるワタクシからのお願いですわ!」
セレスは私に指を指してビシッと言い放った後、自室へ戻って行く。それを確認した私は、渡された鎮痛剤を手に自身の部屋に入って行った。
※※※※※※※※※※
(さてと、困ったものね………)
セレスは自室に入った後、壁に掛けてある制服に着替えながら神妙な顔つきになる。
(あの子の前ではああ言ったけど、ワタクシの見立てだと……既に症状は限界寸前だわ。)
セレスは机の上にある、まばゆく輝く白い花が埋め込まれている手の平サイズの水晶玉に目を移し、手に取る。
「本当に……災難だわ。」
支度準備を整えたセレスは、一旦心を落ち着かせてから部屋のドアを開けて、605号室を出る。
「………………」
一階まで降りて、食堂へと繋がる通路に通りかかる寸前、セレスの足が止まる。セレスはスッと目を細くして、そこにいるであろう人物の気配を一点見据える。
「元人間とはいえ、僕の気配を察知するなんて流石は夢音家の長子、いや…………ヴォルフレッド様の真の護衛隊、と言ったところでしょうか。」
通路のドア付近に気配を消していたその人物はセレスの前に現れ、淡々とした声で眼鏡をくいっと上げた。
(この子は確か、ヴァンパイアの………)
「いきなり、ワタクシの前に現れたと思えば……随分意味が分からないことを仰るのですね。」
セレスはいつもの表情に戻し口元に手を添えて、芝居がかかった口調で相手の出方を伺っていると青年は、自嘲気味で笑った。
「それは、どちらに対してですか?"貴方"がヴァンパイアだということですか?ヴァンパイアの王、ヴォルフレッド様の真の護衛隊であることですか?はたまた…………両方ですか?」
「後者に決まっていますわ。ワタクシが、ヴァンパイアの王であるヴォルフレッド様の……ましてや護衛隊だなんて、あり得ないことですのよ。」
「………………」
セレスの前に現れた青年……千夜葵もセレスを真っ直ぐ見据える。
「それで、それだけの為にワタクシを待ち伏せしていたのかしら?」
「まさか、それだけじゃありません。ですが、この時間帯で貴方が起きていたのは好都合です。この時間帯ならば皆まだ、眠りの中ですしそれに……」
言葉を区切り、葵はセレスをジッと見つめた。
「________"彼女"のことも気になりますからね」
「彼女…………?」
「言わなければ、分かりませんか?貴方と同室している____スノーセイレーンのことを仰っているのです」
セレスは葵に内心の半分は関心持ちながらも、もう半分は鋭いわねと驚いていた。実のところ、セレスがヴォルフレッドの護衛隊の一人というのは本当の話ではあるが、表向きでは別のヴァンパイア達が護衛隊をしており、セレス達の名前は公表されていない。言わば、彼らが……真の護衛隊である。
「スノーセイレーンって確か……ヴァンパイアハンターでしたわよね?」
「そうです」
「確かにワタクシの同室者はヴァンパイアハンターではあるけれど、彼女がスノーセイレーンかどうかなんて…………」
「貴方の同室者は間違いなく、スノーセイレーンですよ。」
確信を持った表情を浮かべる葵を見て、口元に手を添えたまま、彼を凝視した。
「何を根拠にそう仰っているんですの?」
「まず、女性のヴァンパイアハンターは、スノーセイレーンだけです。」
「それはここ日本では、でしょう?他国では、女性のヴァンパイアハンターが存在してる可能性も否定出来なくてよ?」
「あり得るかもしれませんが、僕が知る限り"日本で現在、在住してる"ヴァンパイアハンターはスノーセイレーンだけです。それに、銀色の髪という特徴がある人は、彼女以外いません。」
「ですが、ワタクシの同室者は黒い髪をしている方でしたわ。」
「彼女がスノーセイレーンであることを隠しているのならば、辻褄は合うと思いますし、同室者である貴方が彼女の正体を気付かないわけがないんです。まぁ仮に、スノーセイレーンだと気付きながら____彼女を匿うことに何か理由があるのですか?」
鋭い逆光で捉える葵に、成る程そうきたかとセレスは内心舌打ちした。
「……何のことでしょう?ワタクシには存じなくてよ?」
「____それでシラを切っているつもりですか。白々しいにも程があります。」
「事実を言ってるまでですわ」
「もし、僕達の間に知らない事が既に起きているのならば、僕達にも知らせる権利があると僕は思うのですがね。」
「何も知りませんので、ご心配なく」
セレスは葵の巧みなる言葉を上手くかわし、彼を横切っていく。
「____仮に何かを知っていたとしても、貴方方の力では到底及ばないことですわ。相手が手強いんですもの。」
そしてセレスが一旦、歩みを止めて葵に意味深の言葉を残してその場を離れて行った。
「………………」
(何でしょう、この胸騒ぎ…………)
何とも言えぬ空気の中、葵は神妙な顔つきで、考える仕草をする。
(悪い出来事が起こらなければ良いのですが…………)
そして暫くして後ろを向いて、このザワつきを感じながら食堂へと歩み始めた。
「さてと、ワタクシはそろそろ学校行く支度をしなくちゃ」
「え?もう、そんな時間なの……?」
「かれこれ一時間半、経過してるわよ。」
リビングに掛けてある時間を見れば時刻は早朝5時に経過していた。
「もう一時間したらワタクシはここを空けるけど、今日は鎮痛剤を飲んで、部屋でちゃんと横になって安静しなさい!これは同室者であるワタクシからのお願いですわ!」
セレスは私に指を指してビシッと言い放った後、自室へ戻って行く。それを確認した私は、渡された鎮痛剤を手に自身の部屋に入って行った。
※※※※※※※※※※
(さてと、困ったものね………)
セレスは自室に入った後、壁に掛けてある制服に着替えながら神妙な顔つきになる。
(あの子の前ではああ言ったけど、ワタクシの見立てだと……既に症状は限界寸前だわ。)
セレスは机の上にある、まばゆく輝く白い花が埋め込まれている手の平サイズの水晶玉に目を移し、手に取る。
「本当に……災難だわ。」
支度準備を整えたセレスは、一旦心を落ち着かせてから部屋のドアを開けて、605号室を出る。
「………………」
一階まで降りて、食堂へと繋がる通路に通りかかる寸前、セレスの足が止まる。セレスはスッと目を細くして、そこにいるであろう人物の気配を一点見据える。
「元人間とはいえ、僕の気配を察知するなんて流石は夢音家の長子、いや…………ヴォルフレッド様の真の護衛隊、と言ったところでしょうか。」
通路のドア付近に気配を消していたその人物はセレスの前に現れ、淡々とした声で眼鏡をくいっと上げた。
(この子は確か、ヴァンパイアの………)
「いきなり、ワタクシの前に現れたと思えば……随分意味が分からないことを仰るのですね。」
セレスはいつもの表情に戻し口元に手を添えて、芝居がかかった口調で相手の出方を伺っていると青年は、自嘲気味で笑った。
「それは、どちらに対してですか?"貴方"がヴァンパイアだということですか?ヴァンパイアの王、ヴォルフレッド様の真の護衛隊であることですか?はたまた…………両方ですか?」
「後者に決まっていますわ。ワタクシが、ヴァンパイアの王であるヴォルフレッド様の……ましてや護衛隊だなんて、あり得ないことですのよ。」
「………………」
セレスの前に現れた青年……千夜葵もセレスを真っ直ぐ見据える。
「それで、それだけの為にワタクシを待ち伏せしていたのかしら?」
「まさか、それだけじゃありません。ですが、この時間帯で貴方が起きていたのは好都合です。この時間帯ならば皆まだ、眠りの中ですしそれに……」
言葉を区切り、葵はセレスをジッと見つめた。
「________"彼女"のことも気になりますからね」
「彼女…………?」
「言わなければ、分かりませんか?貴方と同室している____スノーセイレーンのことを仰っているのです」
セレスは葵に内心の半分は関心持ちながらも、もう半分は鋭いわねと驚いていた。実のところ、セレスがヴォルフレッドの護衛隊の一人というのは本当の話ではあるが、表向きでは別のヴァンパイア達が護衛隊をしており、セレス達の名前は公表されていない。言わば、彼らが……真の護衛隊である。
「スノーセイレーンって確か……ヴァンパイアハンターでしたわよね?」
「そうです」
「確かにワタクシの同室者はヴァンパイアハンターではあるけれど、彼女がスノーセイレーンかどうかなんて…………」
「貴方の同室者は間違いなく、スノーセイレーンですよ。」
確信を持った表情を浮かべる葵を見て、口元に手を添えたまま、彼を凝視した。
「何を根拠にそう仰っているんですの?」
「まず、女性のヴァンパイアハンターは、スノーセイレーンだけです。」
「それはここ日本では、でしょう?他国では、女性のヴァンパイアハンターが存在してる可能性も否定出来なくてよ?」
「あり得るかもしれませんが、僕が知る限り"日本で現在、在住してる"ヴァンパイアハンターはスノーセイレーンだけです。それに、銀色の髪という特徴がある人は、彼女以外いません。」
「ですが、ワタクシの同室者は黒い髪をしている方でしたわ。」
「彼女がスノーセイレーンであることを隠しているのならば、辻褄は合うと思いますし、同室者である貴方が彼女の正体を気付かないわけがないんです。まぁ仮に、スノーセイレーンだと気付きながら____彼女を匿うことに何か理由があるのですか?」
鋭い逆光で捉える葵に、成る程そうきたかとセレスは内心舌打ちした。
「……何のことでしょう?ワタクシには存じなくてよ?」
「____それでシラを切っているつもりですか。白々しいにも程があります。」
「事実を言ってるまでですわ」
「もし、僕達の間に知らない事が既に起きているのならば、僕達にも知らせる権利があると僕は思うのですがね。」
「何も知りませんので、ご心配なく」
セレスは葵の巧みなる言葉を上手くかわし、彼を横切っていく。
「____仮に何かを知っていたとしても、貴方方の力では到底及ばないことですわ。相手が手強いんですもの。」
そしてセレスが一旦、歩みを止めて葵に意味深の言葉を残してその場を離れて行った。
「………………」
(何でしょう、この胸騒ぎ…………)
何とも言えぬ空気の中、葵は神妙な顔つきで、考える仕草をする。
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