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『7信3疑』
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───────────────────────
どう………なったんだ?
さっきまでの腹の激痛がなくなってるけど………ン~……確認しようにも体が動かない。
目も開けられないから真っ暗で何も見えん………。それに耳も聞こえないし、声も出せない………。あとは……匂いとか……温度も分からないな。
身体というものを通して今まで俺が感じ得られていた感覚がほぼ無くなっている。唯一残ってると自覚できているのはこれまでの記憶と、こうして何かを考えるための思考能力くらいだけど……。
えっ…………と……っでこれは………どっちなんだ?
俺は死んでんのか? それともワンチャン助かってて、ここは病院とかで全身麻酔かかってるけど脳だけ目覚めたパターンとかだろうか。
ん~今俺が突き付けられて絶望するとするなら、間違いなく後述ではあるけどなぁ~。
この時、死んで魂以外何も持たないタナロウは何も理解することができていなかった───────────
今、自分自身が生きているのか死んでいるのかも。
今、エメラルド色の柔らかな光と優しい木々のせせらぎを帯びた三日月形のマシュマロのような彼の魂が【白の上から秘色色の雪華文が描かれたローブを纏う青年】に抱き抱えられていることすらも。
タナロウの魂を抱いている青年は空色のとても澄んだ瞳をしており、まるで絶景が埋め込まれたかのように秀麗である。
整った美形の肌は白く・少し青みがかったパール色の前髪が度々瞳を隠す。内へとくるみ込まれた長い後ろ髪は三つにまとめられ階段のような段差になっており、一段一段に蝋燭立ての形をベースにした違う種類の髪飾りが施されている。その美麗な姿を求肥のように柔らかく、雪に反射しているかのような眩しい光が彼を包み込む。
外見だけではない。
彼の一つ一つの所作・その一挙一動から繰り出される音、息の吐く音まで全てが美しい。
これだけ近くにいる彼がそれを認識できていないことが気の毒で仕方がないと思えてしまう程だ。
「バウワウブーブー。ねっ伝わってるっ?」
わいーーーーっツッッ!!!!?
………………。
なっ……………なんだっ?
何か急に聞こえたんだが…………知らない声だ。
すると突然タナロウは急に何かを思い出したかのように焦りだし、自身の声が出るようになっていないか確かめ始めた。
ふぃ~~っ、良かったぁ~~っ!
思いがけず人前で堂々と驚いてしまったが、声は出ていないみたいだ。
タナロウは声が聞こえたと表現したが実際、突然きたそれは彼にとって聞こえたという感覚ではなく何か理解できたというおかしな感覚だった。
そうかぁ……はぁ。
バウワウブーブーなんて適当なことを言う神様なんている訳ないだろうしなぁ~……。きっとここは病院で今話掛けてくれているのは病院にいる誰かだろう。
もしこの声の主が俺を助けた人ならお礼言わなきゃだし返事も返すべきなんだろうけど、生憎返事を返す手段がないというコミュ障の俺とって好都合な状況なんだよな…………。
「よしっ! お互いにちゃんと伝わってるみたいだねっ。それじゃあ~喋ろうっ!」
えっ? おいおいなんか独りでに仮想会話始め出したぞこの人ぉ~っ。
まだどこのだれか存じませんが、今すぐにそれをやめることを薦めますよ~~っ!
これから聞かされる俺は恐怖だし聞かれてるあなたも俺に聞かれていたことを知ってしまったらきっと、後々人生最大の羞恥を抱くことになってしまうと思いますよ~~っ!
「えーと……ゴメン。それはさすがに出来ないかなっ。たとえ君が怖くても僕が恥ずかしくなったとしても、それじゃ止められないくらいに大事な話だからね」
……………。
なんか奇跡的に俺の意思の中と噛み合ってるし……エスパーかいっ!
「あ~道理でボクの話をちゃんと聞いてくれないと思ったら……そういうことかっ。
ねータナロウくんさ。どうやら君はまだ自分の生きてた世界に居るつもりで話してるみたいだけど、病院だとかエスパーだとか今僕と君がいるこの場所には存在してないよっ?」
ん??????????????
タナロウくん?…………って俺の名前だ。
名前まで心の中で言ったつもりはないけど、何で知ってるんだ? てか、生きてた世界に居るつもりって…………。
タナロウは少し考えて、何となく状況を整理出来たところで嬉しそうに意思を発した。
「なるほど、やっぱ俺死んだんですねっ!」
正直まだ7信3疑なところではある。だがあの状況から奇跡的に助かった後に全身麻酔状態でエスパーに遭遇するよりかは、死んで神様に出会ったという方が俺にとっては余程信憑性がある。
まーどっちにしろこの意思疎通から逃れられないことに変わりはない訳だし、夢でも見てると思ってどうせなら信じたい方信じて良い夢にしようじゃないか。
本当に死んでるならもちろん聞く必要がある話だろうし、もし生きていたとしても良い夢だったと目覚めて能なしコミュ障を再起動させるだけだ。
それと初めて知ったことだけど、どうやら俺は人見知りではあるが神様見知りとエスパー見知りではないらしい。意思で話すってのは口で会話する時にいつもかけてたフィルターがない分、心なしか気楽に話せる。
「それではつまりここは病院ではなく死後の世界で、あなたはエスパーではなく神様という認識でお間違いありませんでしょうか?」
「う~~ん………うんっ!! 二連続お間違いしてるねっ!
死後の世界っていうのは君にとっては確かにそうなんだけどね、僕にとってはそうじゃないし。それから神様っていうのもここにはいないよ?
ここは【トエータウリャ】で、僕は【ログンメ】。
ちなみに僕今、君の魂を抱っこしてるよっ」
「…………へ?」
ダメだ。このまま彼の話を鵜呑みにすれば、キャパオーバーで俺の思考が停止してしまう。
取り敢えずトエータウリャっていう死後の世界でログンメという名前の神様に今、俺の魂?が抱えられているという呈ならなんとか理解できるから…………一旦それでいこう。
「あのっログンメ様。
この魂の状態では出来ることがほぼ皆無なのですが、他の魂の皆さんもずっとこのような状態で過ごされているのでしょうか?」
そう聞かれたログンメは、不思議そうな顔でタナロウの魂を見つめた。
「ん? ここには君と僕以外の魂は存在してないけど」
「?」
「そもそも人間や生物の魂は普通じゃトエータウリャにはやって来られないよ?」
「…………じゃあ、どうして俺だけここに来たんですか?」
「それはごめん、僕のせいなんだっ。
実を言うと僕は君が生きていた頃から君の魂に目を付けていてね、それで君が死んだ後直ぐに君の次の命で使う体をアイツらに勝手に創られて決められる前に僕が君の魂を横取りしてここに連れてきたんだ」
神様が俺に目を付けていた? 俺みたいな能なしコミュ障に? 俺なんかより目立つ操行が良い人・悪い人なんてざらにいると思うんだが…………あっ、もしかしてあれかっ。自分ではあまり自覚はなかったけど、俺が話せた人ほぼ全員俺は挙動不審だと言われたっけ。確かに外に出歩く度に必ずと言っていい程俺は、近くを通った人に見られてはコソコソと何か陰口を言われていたな。そういった意味では俺も人より目立っていたのか。
まーそれはさておき。
「俺に次の命とかあるんですか?」
「うん。あるって言ってたよ。
そこで僕が君をここに連れて来た理由なんだけど、タナロウくんが次の命を始めるにあたって是非君にここで僕の創った体を一つ選んで行ってもらいたいんだ。
タナロウくんの優しい魂で、僕の創った体を最高の命として羽ばたかせてほしいんだっ!!」
「?」
タナロウに今顔があったら渾身の困り顔を見せているだろう。
死後の世界を信じていたタナロウにとって、今いる謎の世界とログンメの存在を受け入れるまではなんとか可能であった。
だがしかし、その後の次の命だの創った体を選べだのという話はタナロウにとって漫画やアニメ・ラノベ小説だけに限った世界で、自分がその世界線に行き着くなんてとこまでは考えたことはなかった。
「とりあえず今の俺には何も見ることができないので、もしよろしければどんな体を創られたのかお教え頂けませんか?」
「うんっ、いいよっ。
まずはね~大聖剣を持つ勇者に~世界最強の魔王でしょ~それから魔力量上限なしの天才魔法使いに~全てを凍らせる力を持つ雪男っ。絶対に壊れない肉体を持つメタルフッドとか望んだものを全てを反射させる鱗を持つ大蛇~どんな相手の持ち物もたちまち盗めてしまう大盗賊~何もかもを逃げさせてしまう最強の威嚇能力を持つゴブリン~──────────────────────────────────────────────────────────────────────────」
ログンメがタナロウに紹介した体の数は、計541体。
「まーいってどの体の力もいずれ君が頑張りを経て最終的に得られるものだから、生まれ変わった直後の期待はしないでね?」
「………はい」
と受け入れたフリをしてみたものの……………………何ですかそれェェ~ッ!!? 仮にこの状況が現実だったとしたらどれ選んでも俺、ほぼ来世チート無双確定じゃないですかぁぁ~~っ!!!!
いや待てっ!
聞くもの聞くものがそういう異世界ファンタジーっぽいもんばっかで勝手にそういう世界に行く想像をしてしまっていたが、もしもモンスターとか選んだ先が前と同じような世界だったら俺に待ち受けるのは間違いなく孤立異物生活だ。
あんな世界に戻るんなら俺は平穏一択を望みたいが、俺の存在がバレた瞬間きっとそれも終わる。ありとあらゆるメディアに晒された後、それを見たネット民におもちゃにされ、挙げ句の果てに現実世界ではお調子者共が俺をからかいにくるに違いない。
力でそいつらを全員黙らせるというのは容易いだろうが、俺には多分出来ないだろうし。仮に俺が力を振るったとして、おそらくその瞬間に全世界が俺の敵になるだろう。
また人間に脅かされて生活するのなんてもう御免だっ!
「ログンメ様、俺の次行く世界がどんな世界か分かっていたりしませんか? それと度重ねて申し訳ないのですが、体の方も出来れば人型の体でお願いできませんでしょうか?…………」
「ごめん、申し訳ないけど君の次行く世界については一切の情報も持ってないんだ。
そもそも僕にはタナロウくんの生存していた世界が視覚できなくてね、真っ白な空白の中に生物達の色や質・輝き・性格の違うカラフルな魂が点々と見えてるだけなんだ。勿論ここみたいに視覚できる世界もあるんだけどね。
それから体のことに関しても、体の選び方には決められたルールがあるんだ」
それからログンメは、キャパオーバーにより理解力が乏しくなったタナロウがしっかり理解できるまで説明を何度か繰り返した。
なるほど。
ログンメ様が橋を渡り始めたら、それ以降に俺が意思を発した時点でログンメ様が止まってたとこにあった体が俺の新しい体になるってわけか。
ただ少々問題なのは、ログンメ様からどこにどの体があるか教えてもらうのも、余計なこと考えて雑念が入った状態で意思の発するのも禁止で純粋な自分自身の意思を発しないといけないってところだ。破ればログンメ様の創った体共々、俺の魂も消滅か……。
ログンメに抱えられたタナロウの前に続く道は、巨大な砂時計のようなものがいくつも連なって出来た橋。砂時計でいう中心のノズル部分がトンネル状の歩ける道となっており、砂時計の上部にはログンメが創った体の上半身・下部には体の下半身がそれぞれ宙に浮いた状態で入っている。
橋の前に立つログンメが橋を渡り始める前、タナロウに最後の確認をする。
「最後に確認だけど僕が出発の合図を出した以降、君が意思を発したその時点で僕達が立っていた所にある体が次の君の体になるから、そこはいいねっ?
それとタナロウくん優しいから再度忠告させてもらうけど、体選びをしている間は絶対に自分のこと以外は何も気にしちゃダメだよ? 僕はいくら歩いても疲れないしどれだけ歩こうと何とも思わないし大丈夫だから、君は只自分の魂に直感が巡るその時まで好きなだけ待ち続けてくれればいい」
「…………分かりました。
それなら俺も来世の一生かかってるので、御言葉に甘えて遠慮なく決めさせて頂きます!」
「よしっ!
それじゃ~っお散歩開始~っ!」
リィーン
ログンメが橋に足をつけると、美しい風鈴のような接触音がトエータウリャ中に響いた。
ログンメの合図を受けたタナロウは真っ暗な中で只ひたすらに意思を発するタイミングを伺い続け、その間ログンメが長い道を何度も何度も繰り返し往復する。
──────────────────────────
──────────────────────────
──────────────────────────
──────────────────────────
──────────────────────────
──────────────────────────
──────────────────────────
そこに時という概念があればおそらく300年は経った頃だろうか。
ログンメの歩く姿勢・歩幅・息遣い・全てにおいて往復を始めた当時から、一ミリたりとも変わっておらず美しいままだ。
タナロウが意思を発したのはその時だった。
「ここでお願いします」
タナロウが意思を発したと同時、ログンメが足を止める。
するとその直後、彼の立ち止まった場所にあった体を除き他の全ての体は瞬く間に銀の砂へと化した。
サアァァ──────
どう………なったんだ?
さっきまでの腹の激痛がなくなってるけど………ン~……確認しようにも体が動かない。
目も開けられないから真っ暗で何も見えん………。それに耳も聞こえないし、声も出せない………。あとは……匂いとか……温度も分からないな。
身体というものを通して今まで俺が感じ得られていた感覚がほぼ無くなっている。唯一残ってると自覚できているのはこれまでの記憶と、こうして何かを考えるための思考能力くらいだけど……。
えっ…………と……っでこれは………どっちなんだ?
俺は死んでんのか? それともワンチャン助かってて、ここは病院とかで全身麻酔かかってるけど脳だけ目覚めたパターンとかだろうか。
ん~今俺が突き付けられて絶望するとするなら、間違いなく後述ではあるけどなぁ~。
この時、死んで魂以外何も持たないタナロウは何も理解することができていなかった───────────
今、自分自身が生きているのか死んでいるのかも。
今、エメラルド色の柔らかな光と優しい木々のせせらぎを帯びた三日月形のマシュマロのような彼の魂が【白の上から秘色色の雪華文が描かれたローブを纏う青年】に抱き抱えられていることすらも。
タナロウの魂を抱いている青年は空色のとても澄んだ瞳をしており、まるで絶景が埋め込まれたかのように秀麗である。
整った美形の肌は白く・少し青みがかったパール色の前髪が度々瞳を隠す。内へとくるみ込まれた長い後ろ髪は三つにまとめられ階段のような段差になっており、一段一段に蝋燭立ての形をベースにした違う種類の髪飾りが施されている。その美麗な姿を求肥のように柔らかく、雪に反射しているかのような眩しい光が彼を包み込む。
外見だけではない。
彼の一つ一つの所作・その一挙一動から繰り出される音、息の吐く音まで全てが美しい。
これだけ近くにいる彼がそれを認識できていないことが気の毒で仕方がないと思えてしまう程だ。
「バウワウブーブー。ねっ伝わってるっ?」
わいーーーーっツッッ!!!!?
………………。
なっ……………なんだっ?
何か急に聞こえたんだが…………知らない声だ。
すると突然タナロウは急に何かを思い出したかのように焦りだし、自身の声が出るようになっていないか確かめ始めた。
ふぃ~~っ、良かったぁ~~っ!
思いがけず人前で堂々と驚いてしまったが、声は出ていないみたいだ。
タナロウは声が聞こえたと表現したが実際、突然きたそれは彼にとって聞こえたという感覚ではなく何か理解できたというおかしな感覚だった。
そうかぁ……はぁ。
バウワウブーブーなんて適当なことを言う神様なんている訳ないだろうしなぁ~……。きっとここは病院で今話掛けてくれているのは病院にいる誰かだろう。
もしこの声の主が俺を助けた人ならお礼言わなきゃだし返事も返すべきなんだろうけど、生憎返事を返す手段がないというコミュ障の俺とって好都合な状況なんだよな…………。
「よしっ! お互いにちゃんと伝わってるみたいだねっ。それじゃあ~喋ろうっ!」
えっ? おいおいなんか独りでに仮想会話始め出したぞこの人ぉ~っ。
まだどこのだれか存じませんが、今すぐにそれをやめることを薦めますよ~~っ!
これから聞かされる俺は恐怖だし聞かれてるあなたも俺に聞かれていたことを知ってしまったらきっと、後々人生最大の羞恥を抱くことになってしまうと思いますよ~~っ!
「えーと……ゴメン。それはさすがに出来ないかなっ。たとえ君が怖くても僕が恥ずかしくなったとしても、それじゃ止められないくらいに大事な話だからね」
……………。
なんか奇跡的に俺の意思の中と噛み合ってるし……エスパーかいっ!
「あ~道理でボクの話をちゃんと聞いてくれないと思ったら……そういうことかっ。
ねータナロウくんさ。どうやら君はまだ自分の生きてた世界に居るつもりで話してるみたいだけど、病院だとかエスパーだとか今僕と君がいるこの場所には存在してないよっ?」
ん??????????????
タナロウくん?…………って俺の名前だ。
名前まで心の中で言ったつもりはないけど、何で知ってるんだ? てか、生きてた世界に居るつもりって…………。
タナロウは少し考えて、何となく状況を整理出来たところで嬉しそうに意思を発した。
「なるほど、やっぱ俺死んだんですねっ!」
正直まだ7信3疑なところではある。だがあの状況から奇跡的に助かった後に全身麻酔状態でエスパーに遭遇するよりかは、死んで神様に出会ったという方が俺にとっては余程信憑性がある。
まーどっちにしろこの意思疎通から逃れられないことに変わりはない訳だし、夢でも見てると思ってどうせなら信じたい方信じて良い夢にしようじゃないか。
本当に死んでるならもちろん聞く必要がある話だろうし、もし生きていたとしても良い夢だったと目覚めて能なしコミュ障を再起動させるだけだ。
それと初めて知ったことだけど、どうやら俺は人見知りではあるが神様見知りとエスパー見知りではないらしい。意思で話すってのは口で会話する時にいつもかけてたフィルターがない分、心なしか気楽に話せる。
「それではつまりここは病院ではなく死後の世界で、あなたはエスパーではなく神様という認識でお間違いありませんでしょうか?」
「う~~ん………うんっ!! 二連続お間違いしてるねっ!
死後の世界っていうのは君にとっては確かにそうなんだけどね、僕にとってはそうじゃないし。それから神様っていうのもここにはいないよ?
ここは【トエータウリャ】で、僕は【ログンメ】。
ちなみに僕今、君の魂を抱っこしてるよっ」
「…………へ?」
ダメだ。このまま彼の話を鵜呑みにすれば、キャパオーバーで俺の思考が停止してしまう。
取り敢えずトエータウリャっていう死後の世界でログンメという名前の神様に今、俺の魂?が抱えられているという呈ならなんとか理解できるから…………一旦それでいこう。
「あのっログンメ様。
この魂の状態では出来ることがほぼ皆無なのですが、他の魂の皆さんもずっとこのような状態で過ごされているのでしょうか?」
そう聞かれたログンメは、不思議そうな顔でタナロウの魂を見つめた。
「ん? ここには君と僕以外の魂は存在してないけど」
「?」
「そもそも人間や生物の魂は普通じゃトエータウリャにはやって来られないよ?」
「…………じゃあ、どうして俺だけここに来たんですか?」
「それはごめん、僕のせいなんだっ。
実を言うと僕は君が生きていた頃から君の魂に目を付けていてね、それで君が死んだ後直ぐに君の次の命で使う体をアイツらに勝手に創られて決められる前に僕が君の魂を横取りしてここに連れてきたんだ」
神様が俺に目を付けていた? 俺みたいな能なしコミュ障に? 俺なんかより目立つ操行が良い人・悪い人なんてざらにいると思うんだが…………あっ、もしかしてあれかっ。自分ではあまり自覚はなかったけど、俺が話せた人ほぼ全員俺は挙動不審だと言われたっけ。確かに外に出歩く度に必ずと言っていい程俺は、近くを通った人に見られてはコソコソと何か陰口を言われていたな。そういった意味では俺も人より目立っていたのか。
まーそれはさておき。
「俺に次の命とかあるんですか?」
「うん。あるって言ってたよ。
そこで僕が君をここに連れて来た理由なんだけど、タナロウくんが次の命を始めるにあたって是非君にここで僕の創った体を一つ選んで行ってもらいたいんだ。
タナロウくんの優しい魂で、僕の創った体を最高の命として羽ばたかせてほしいんだっ!!」
「?」
タナロウに今顔があったら渾身の困り顔を見せているだろう。
死後の世界を信じていたタナロウにとって、今いる謎の世界とログンメの存在を受け入れるまではなんとか可能であった。
だがしかし、その後の次の命だの創った体を選べだのという話はタナロウにとって漫画やアニメ・ラノベ小説だけに限った世界で、自分がその世界線に行き着くなんてとこまでは考えたことはなかった。
「とりあえず今の俺には何も見ることができないので、もしよろしければどんな体を創られたのかお教え頂けませんか?」
「うんっ、いいよっ。
まずはね~大聖剣を持つ勇者に~世界最強の魔王でしょ~それから魔力量上限なしの天才魔法使いに~全てを凍らせる力を持つ雪男っ。絶対に壊れない肉体を持つメタルフッドとか望んだものを全てを反射させる鱗を持つ大蛇~どんな相手の持ち物もたちまち盗めてしまう大盗賊~何もかもを逃げさせてしまう最強の威嚇能力を持つゴブリン~──────────────────────────────────────────────────────────────────────────」
ログンメがタナロウに紹介した体の数は、計541体。
「まーいってどの体の力もいずれ君が頑張りを経て最終的に得られるものだから、生まれ変わった直後の期待はしないでね?」
「………はい」
と受け入れたフリをしてみたものの……………………何ですかそれェェ~ッ!!? 仮にこの状況が現実だったとしたらどれ選んでも俺、ほぼ来世チート無双確定じゃないですかぁぁ~~っ!!!!
いや待てっ!
聞くもの聞くものがそういう異世界ファンタジーっぽいもんばっかで勝手にそういう世界に行く想像をしてしまっていたが、もしもモンスターとか選んだ先が前と同じような世界だったら俺に待ち受けるのは間違いなく孤立異物生活だ。
あんな世界に戻るんなら俺は平穏一択を望みたいが、俺の存在がバレた瞬間きっとそれも終わる。ありとあらゆるメディアに晒された後、それを見たネット民におもちゃにされ、挙げ句の果てに現実世界ではお調子者共が俺をからかいにくるに違いない。
力でそいつらを全員黙らせるというのは容易いだろうが、俺には多分出来ないだろうし。仮に俺が力を振るったとして、おそらくその瞬間に全世界が俺の敵になるだろう。
また人間に脅かされて生活するのなんてもう御免だっ!
「ログンメ様、俺の次行く世界がどんな世界か分かっていたりしませんか? それと度重ねて申し訳ないのですが、体の方も出来れば人型の体でお願いできませんでしょうか?…………」
「ごめん、申し訳ないけど君の次行く世界については一切の情報も持ってないんだ。
そもそも僕にはタナロウくんの生存していた世界が視覚できなくてね、真っ白な空白の中に生物達の色や質・輝き・性格の違うカラフルな魂が点々と見えてるだけなんだ。勿論ここみたいに視覚できる世界もあるんだけどね。
それから体のことに関しても、体の選び方には決められたルールがあるんだ」
それからログンメは、キャパオーバーにより理解力が乏しくなったタナロウがしっかり理解できるまで説明を何度か繰り返した。
なるほど。
ログンメ様が橋を渡り始めたら、それ以降に俺が意思を発した時点でログンメ様が止まってたとこにあった体が俺の新しい体になるってわけか。
ただ少々問題なのは、ログンメ様からどこにどの体があるか教えてもらうのも、余計なこと考えて雑念が入った状態で意思の発するのも禁止で純粋な自分自身の意思を発しないといけないってところだ。破ればログンメ様の創った体共々、俺の魂も消滅か……。
ログンメに抱えられたタナロウの前に続く道は、巨大な砂時計のようなものがいくつも連なって出来た橋。砂時計でいう中心のノズル部分がトンネル状の歩ける道となっており、砂時計の上部にはログンメが創った体の上半身・下部には体の下半身がそれぞれ宙に浮いた状態で入っている。
橋の前に立つログンメが橋を渡り始める前、タナロウに最後の確認をする。
「最後に確認だけど僕が出発の合図を出した以降、君が意思を発したその時点で僕達が立っていた所にある体が次の君の体になるから、そこはいいねっ?
それとタナロウくん優しいから再度忠告させてもらうけど、体選びをしている間は絶対に自分のこと以外は何も気にしちゃダメだよ? 僕はいくら歩いても疲れないしどれだけ歩こうと何とも思わないし大丈夫だから、君は只自分の魂に直感が巡るその時まで好きなだけ待ち続けてくれればいい」
「…………分かりました。
それなら俺も来世の一生かかってるので、御言葉に甘えて遠慮なく決めさせて頂きます!」
「よしっ!
それじゃ~っお散歩開始~っ!」
リィーン
ログンメが橋に足をつけると、美しい風鈴のような接触音がトエータウリャ中に響いた。
ログンメの合図を受けたタナロウは真っ暗な中で只ひたすらに意思を発するタイミングを伺い続け、その間ログンメが長い道を何度も何度も繰り返し往復する。
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そこに時という概念があればおそらく300年は経った頃だろうか。
ログンメの歩く姿勢・歩幅・息遣い・全てにおいて往復を始めた当時から、一ミリたりとも変わっておらず美しいままだ。
タナロウが意思を発したのはその時だった。
「ここでお願いします」
タナロウが意思を発したと同時、ログンメが足を止める。
するとその直後、彼の立ち止まった場所にあった体を除き他の全ての体は瞬く間に銀の砂へと化した。
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はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
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