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「…エリーア?来てたのか?」
ゼノの部屋から帰るべく廊下を歩いていると、アランが向かいからタオルで汗を拭きながら歩いて来た。
「アラン」
「来てたなら言えば良いのに。何の用でーー」
「ゼノ様のところよ。流石に頻繁に顔を見せないと、ね?」
「……ついでにでも俺を訪ねないのか」
そう言われても困ってしまう。だって婚約者と会った帰りで友人と云えど他の男と会うのはどうだろうか。
あからさまに機嫌を悪くするアランに困ったのを気付いたのか、苦笑される。
「悪い、困らせるつもりは無かったんだ。ただ寂しいなと思って。…お前とは普段通りいつでも会えると思った」
「アラン…」
確かに私たちはいつでも会っていた。朝も昼も、夜だってアランが突然家に訪ねて来る事なんていくらでもあった。
確かにこんなに会わないのは本当に久しぶりだ。
「ごめんな。…お前の好きそうなクッキーがあったんだ、後で誰かに送らせる」
そうか、もう気楽には会えないのか。
「…あの」
どうせ会ったんだし、今から取りに行こうか。そう言おうとした時だった。
「おい」
背後から声がして振り返ると、ゼノが立っていた。
「…ゼノ様?」
「ゼノ」
アランの顔がまたもやあからさまに変わる。
「なんだ。何か用か?」
「…これは兄上、御機嫌よう。私が用があるのはエリーアだけなので」
「なに?」
見て分かるほど火花が飛んでいる。やはりこの二人ーーというかゼノが上の二人と仲が悪いのは分かっていたので仕方ないかと思う。
ゼノもゼノで口が悪そうだしアランも相手を煽るのが好きな性格なので、どっちもどっちだろう。
「流石に婚約者を一人で帰すのはどうかと思ってね、送って行こうと思ったんだけど。…どうして兄上と?」
これは変な誤解をされるのでは。
「ご安心下さい、偶然会っただけですわ」
「そう。でも二人きりだと誰かに見られた時に変な誤解を招くでしょう?ーーしばらくは私の婚約者と二人きりになるのは遠慮していただけますか、兄上?」
「お前…」
グッと拳を固めたアランに慌てて首を振る。
「…お気遣いありがとうございます、ゼノ様。…もう帰りますので」
「送ろう」
歩き出したゼノの後を慌てて追いかける。アランが何か言いたそうにしていたが、ゼノの言うことも一理ある。
「…クッキー待ってるわ」
そう呟くと、アランは驚いた顔をした後、嬉しそうに首を縦に振った。
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