聖女の恋は始まらない

竹間単

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■第一章 出逢ってしまう運命

●第4話

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 今回の私は、人生四度目だ。
 死んだはずの私は、なぜか時間を遡ってしまった。それも三回も。
 最初の回帰では相当驚いたけれど、それが四度目ともなると慣れたものだ。
 またか。回帰の感想は、その三文字で終わりだった。
 私が国を滅亡させたから責任をとってやり直せ、ということなのだろう。
 そう。私は、これまでの三度の人生で、三度とも国を滅亡させている――――。



「キャーッ、助けてー!」

「森から魔物がやって来たぞ!」

 一度目の人生で、私は町民たちとともに魔物から逃げ回っていた。
 町に魔物の大群が押し寄せ、警備兵だけでは退治しきれなくなっていたのだ。
 魔物たちは町民を襲い、食料を奪った。さらに町民をいたぶることを楽しむ魔物もいた。
 しかし自分が聖女だとは思ってもいない私は、町民と一緒になって魔物から逃げていた。
 後になって思えば、私がもっと早く聖力を発動させていれば被害は少なかったのだろう。
 けれど私が聖力を発動させたのは、魔物に襲いかかられたとき。絶体絶命の状況になってやっと、私の聖力は発動した。



「聖女様。一緒に王城へ来ていただけますか?」

 聖力によって魔物を浄化した私は、王城への招待を受けた。

「ですが私はただの平民で……さっきのは偶然かと思います」

「偶然ではありません。偶然では聖力を使うことは出来ませんから。聖力を使えるのは聖女様だけです」

 兵士の圧に押し切られた私は、王城へと足を運んだ。



「ようこそ聖女様。お待ちしておりました。俺はこの国の第一王子、ルーベン・ヴァノワです」

 王城で待っていたのは、綺麗な衣装に身を包んだ青年だった。

「はっ、はじめまして。ただのジェイミーです」

「あはは。ただの、だなんて。聖女様が何を仰いますか」

 私の自己紹介を聞いたルーベンは、ふわりと柔らかい笑みを見せた。
 王城には怖い顔をした人ばかりがいると思っていた私は、太陽のような微笑みにひどく安堵した。

「私が聖女というのは、イマイチ実感が無いと申しますか……」

 私がもじもじしながら弱気なことを言うと、ルーベンはまた太陽の微笑みを見せた。

「実感は聖女の仕事をこなすうちに湧いてくるでしょう」

「そういうものですかね……?」

「そういうものです。一緒に頑張りましょう!」

 何の根拠もない励ましだったけれど、この太陽のような人の力になりたいと思った私は、聖女の仕事を精一杯こなすことにした。
 結界の作成を頼まれれば、西へ東へ国内のどこへでも出向き、結界を張った。
 魔物の退治を頼まれれば、おっかなびっくりしながら聖力で浄化した。
 最初はぎこちなかった聖女の仕事も、ルーベンの言う通り、数をこなすうちに慣れてきた。
 そしてだんだんと自分が聖女である実感が湧いてきた。



 このように第一印象から私の心を鷲掴みにしたルーベンは、日を追うごとに私の中で大きな存在になっていった。
 みんなが私のことを崇めてはくれるものの、友人のいない王城で、心を許すことが出来るのは太陽のようなルーベンだけだった。
 おかしな話だ。王城で心を許せるたった一人が、第一王子だなんて。
 そんな私がルーベンに求婚をされたのは、聖女として働き始めて一年が経った頃だった。

「聖女様……ではなく、名前で呼んでもいいですか?」

「はい。あなたには、役職名ではなく名前で呼ばれたいです」

 これまで私のことを聖女様と呼んでいたルーベンが、名前で呼びたいと申し出たとき、私は天にも昇る気持ちだった。

「ジェイミー、愛しています」

 この言葉を聞いたときには、本当に天に召されたかと思った。
 なんとかこの世にとどまった私は、もちろん肯定の返事をした。

「私もです。ルーベン様」

「あなたが聖女として城に来てくれて俺は幸せです。そのおかげでこうして一緒になれました」

「はい。私なんかに聖女が務まるか不安でしたけれど、今は聖女で良かったと思っています。聖女じゃなかったら、ルーベン様とは話すことさえ出来ませんでしたから」

 私とルーベンは熱い抱擁を交わした。

「愛しています、ジェイミー。死ぬまでずっと……いいえ、生まれ変わっても」

「私も同じ気持ちです。生まれ変わっても、あなただけを愛すると誓います」

 幸せの絶頂にいた私は、この後に起こることなど予想もしていなかった。



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