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■第二章 とても長い一日
●第13話
しおりを挟む【side ジェイミー】
王城へと招かれた私は、この日はそのまま休むように指示をされた。
使用するように言われた部屋は来賓用のものらしく、掃除が行き届いていた。
そして翌朝、私はルーベンにこれまでの出来事を語った。
すべてを話すとあまりにも長くなるため要点だけをかいつまんで語ったけれど、それでもとても長い話になってしまった。
けれど私の長い長い人生の話を、ルーベンは文句も言わずにただ聞いてくれた。
「信じられませんね」
話を聞き終わったルーベンは、一言そう口にした。
「……そう、ですよね」
こんな嘘みたいな話は信じられるわけがないか、と肩を落とす私に、ルーベンが続けて言う。
「俺があなたを監禁した、だなんて。そこまでの独占欲を持っているつもりはありません」
「信じられないのはそこですか!?」
「だって自分が女性を地下牢に監禁するだなんて……信じられないと言うよりも、信じたくないと言った方が適切でしょうか」
ルーベンは溜息を吐きながら頭を抱えた。
確かに普段のルーベンは、常識的でとても誰かを監禁するような人間ではない。
しかし地下牢での監禁は、過去に実際に起こった出来事なのだ。
「ルーベンは自分のものにしたいから私を監禁したわけではなく、私を周囲の敵から隠して守るために監禁をしたのだと思います」
当時は理解できなかったけれど、今なら少しは分かる。
愛するものを失うことは、とても怖い。
失ってしまうくらいなら、大事に宝箱に入れて仕舞っておいた方が良いと考えても無理はない。
しかし私は宝物ではなく人間であり、自分の意思がある。
その意思を無視して誰の手も届かない場所に仕舞ってしまうのは、得策とは言えない。
それに。
「私はもう、昔の私ではありません。今の私は、守られるどころかルーベンを守るくらいの力を持ち合わせています」
人生を繰り返しても聖力が持ち越されたように、魔力の方も持ち越されているようだった。
今の私なら、兵士数十人に囲まれたとしても、負ける気がしない。
「頼もしい限りですね」
「今の私なら、兵士は魔力で、魔物は聖力で倒すことが出来ます」
「聖力……そうでした。ジェイミーは聖女なのですよね? 聖女が聖力以外で戦うなんて話は聞いたことがありませんが、魔法も得意なのですか?」
歴代の聖女は聖力を扱うことが出来る代わりに、魔法の扱いはあまり上手くなかった。
最初の人生での私もそうだった。
しかしこれは聖力と魔力が打ち消し合う性質があるわけではなく、単なる鍛練の結果なのだ。
「聖女だからと言って、魔力が皆無なわけではありません。聖力と魔力に相対関係は無いのです」
「ではなぜ歴代の聖女たちは魔法が苦手だったのでしょう?」
「聖力を自在に操れるようになるまでには、相当の年月がかかります。そのため通常、聖女は聖力を扱う鍛練のみに集中します。結果として魔法の腕が上達しないのでしょう」
だから無限の時間があれば聖女だって最強の魔法使いになることが出来るはずなのだ。
しかし聖女の責務として聖力の鍛練に時間と精神力をつぎ込むため、数十年程度では魔法の鍛練まで着手できない。
けれど人生を何度も繰り返した私は、この部分をクリアすることが出来たのだ。
「ジェイミーにはたくさんの時間があったことで、魔法の腕も上がったということですか」
「しかも理屈は分かりませんけれど、人生を経るごとに私の魔力と聖力は強くなっています。最初の私とは比べ物にならないくらい」
ここが不思議なところなのだけれど、前の人生で使った魔法よりも、次の人生で使った魔法の方が威力が高い気がする。
前の人生の記憶があることで、魔法の勉強をショートカット出来ることは分かるけれど、威力まで上がっていることには首を傾げざるを得ない。
もしかして前の人生の魔力と聖力が、次の人生にプラスされているのだろうか。
この私の疑問には、ルーベンがもっともらしい解答をくれた。
「たぶんですが。魔力や聖力の量が上昇したと言うよりも、経験が蓄積されているのでしょうね。経験を積んだことで、少量の魔力で効率よく魔法を使用することが出来ているのでしょう」
「経験……なるほど。記憶があることで、魔力や聖力の上手い使い方を理解していると言うわけですね」
それなら魔力や聖力の総量が増えたわけではなくとも、似たような結果が得られるかもしれない。
力を使う際の魔力使用量が少ないのなら、より威力の高い魔法を何回も使用することが出来るのだから。
……もしかして、今の私って最強?
「何度考えても、今の私なら、誰にも負ける気がしません」
「昨日負けたばかりの人が何を言っているのですか」
「あうっ」
痛いところを突かれた。
相手が複数人だったとはいえ、昨日の私はいとも簡単に組織の者たちに捕まってしまったのだった。
「ジェイミーは能力が高いのかもしれませんが、うっかりしたところがあるようですからね。あのような見え見えの罠に引っ掛かって組織のアジトに導かれてしまったのですから。能力が高いゆえの慢心なのですかね」
「……反省しています」
「次からは気を付けてくださいね。少なくとも、見え見えの罠には飛び込まないでください」
ルーベンがまた「見え見えの罠」と言った。
昨日のアレは、そんなに見え見えの罠だっただろうか。
確かに私もスムーズに事が運ぶなあとは思っていたけれど。
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