34 / 39
■第三章 世界を変える力
●第34話
しおりを挟む「うっ……ぐすっ、ぐすっ」
旗色が悪いと思ったのだろうエディットは、泣き落としでこの場を切り抜ける作戦に切り替えたらしい。
器用にもすすり泣きを始めた。
「ルーベン殿下、どうか王城で勤勉に働いてきたわたくしのことを信じてください! 現れたばかりのジェイミー様よりも、長い年月を問題一つ起こさずに仕えてきたわたくしの方が信頼に値するはずです!」
「長年の付き合いを信じると言うなら……ジェイミーに軍配が上がるな」
「それは、どういう……」
「ルーベンと私は、つい最近出会ったばかりの仲ではないという意味ですよ」
ルーベンと私が見つめ合って微笑む様子を、エディットは唖然としながら眺めていた。
「ジェイミー様は、今年ルーベン殿下が森で出会った恩人だと伺っておりますが……それに王城に来たのはつい最近のことですし……」
「その話は、今はどうでもいいのです。話を引き延ばして、その間に逃げる方法を模索しているのかもしれませんけれど」
私が懐から取り出した杖をエディットに向けると、エディットはゆっくりとソファに座った。
それでいい。
別に私はエディットを攻撃したいわけではない。エディットからは話が聞きたいのだ。
「俺はジェイミーのことを誰よりも信頼している。君が何を訴えようとも、俺はジェイミーの言葉の方を信じる。ジェイミーが記録映像を捏造していないと言っているのだから、この映像は実際にあった出来事だ」
ルーベンが迷いの無いまっすぐな瞳でエディットを見つめた。
そんなルーベンの目を見て、捏造の話は聞き入れてもらえないと悟ったのだろうエディットが、ぎゅっと自身の手を握った。
「…………すみません。これは実際にあった出来事です」
「ではエディットは組織の内通者ということですね?」
私の確認に、エディットは首を横に振った。
そして震える声で告げる。
「この男性に紙を渡したことは事実です。ですが、内通者という話は誤解です。わたくしはただ、好みの男性を見つけて、連絡先を渡しただけなのです。相手も同じことを考えていたようで、あの一瞬で連絡先の交換が完了したのです」
まだ言い逃れをするつもりなのか。往生際が悪い。
組織の内通者だと判明したら重い刑罰が待っているから、足掻く気持ちは分からないでもないけれど。
「すれ違いざまに初対面の相手に連絡先を渡して、どちらも歩みを止めず振り返ることもなくその場を去ったと? そのような言い訳が通用すると、本気で思っているのですか?」
「……本当の、ことなのです」
さすがにこの言い訳は苦しいとエディット自身も思っているようだ。目が泳いでいる。
けれどこの状況で引くわけにはいかないのだろう。
しかし、私たちはこれ以上エディットの戯言に付き合っているほど暇ではない。
「いいでしょう。あなたが自分の意志で自白しないのなら、自白魔法によって自白させるだけです」
私は手に持った杖をくるくると回してみせた。
エディットが恐怖を滲ませた目で私のことを見上げている。
「有名な話ですから、エディットも自白魔法の後遺症は知っていますよね? 自白魔法を掛けたら後遺症で廃人になってしまいますけれど、仕方がありません。だってエディットが自分からは話してくれないのですから」
何かを言いたいものの何を言えばいいのか思いつかない様子で口をパクパクと動かすエディットの前で、ルーベンに自白魔法の使用許可を求める。
「ルーベン、自白魔法を使用しても良いですよね? 王子であるルーベンの許可があれば、使用しても問題は無いのでしょう?」
「そうですね。この状況なら、使用もやむを得ないでしょう」
エディットは口をパクパクとさせることをやめ、代わりに歯をガチガチと鳴らし始めた。
どうやら短時間であれば自白魔法を使用しても後遺症が残らないという話は、魔法使い以外の人間の間ではそれほど有名ではないようだ。
「エディット。自白魔法を掛けられる前に言い残すことはありますか?」
「…………申し訳ございません。わたくしは、組織に王城内の情報を流していました」
ついにエディットが落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
私が消えたその後で(完結)
毛蟹
恋愛
シビルは、代々聖女を輩出しているヘンウッド家の娘だ。
シビルは生まれながらに不吉な外見をしていたために、幼少期は辺境で生活することになる。
皇太子との婚約のために家族から呼び戻されることになる。
シビルの王都での生活は地獄そのものだった。
なぜなら、ヘンウッド家の血縁そのものの外見をした異母妹のルシンダが、家族としてそこに溶け込んでいたから。
家族はルシンダ可愛さに、シビルを身代わりにしたのだ。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私の療養中に、婚約者と幼馴染が駆け落ちしました──。
Nao*
恋愛
素適な婚約者と近く結婚する私を病魔が襲った。
彼の為にも早く元気になろうと療養する私だったが、一通の手紙を残し彼と私の幼馴染が揃って姿を消してしまう。
どうやら私、彼と幼馴染に裏切られて居たようです──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。最終回の一部、改正してあります。)
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます
ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。
理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。
……正直、めんどくさい。
政略、責任、義務、期待。
それらすべてから解放された彼女は、
聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。
毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。
何もしない、何も背負わない、静かな日常。
ところが――
彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、
一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが
異様なほど平和になっていく。
祈らない。
詠唱しない。
癒やさない。
それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。
「何もしない」ことを選んだ元聖女と、
彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。
これは、
誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、
いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる