地獄の底から殺りに行きます

プリンケツ

文字の大きさ
8 / 11

第7話 契約

しおりを挟む
 レベッカは妖艶な笑みを浮かべながらミルに話しかける。

 「私は君に興味があってね...話をする前にお風呂にでも入ってきたらどうだい?」

 そういわれミルは初めて自分の姿を見た。
 髪はほとんど坊主のようなものだったが、ストレスで地毛は真っ白に変色し、血の色でそのほとんどが赤く染まっている。服などとうの昔にすべて食べられ素っ裸で体のいたるところに血が結晶化してへばりついている。特に胸の中心はほとんど食べられたこともなく特別大きな血の結晶がへばりついている。
 360年以上異臭のする空間に閉じ込められていたのだ。すでにミルの嗅覚はマヒし何も感じなかったが周りは相当な匂いを感じているだろう。

 ミルはこの格好で地上に戻っても困るだけだと静かにうなずく。

 「おいっ浴場へ案内してやれ」

 レベッカが号令を出すとわきからメイドのような恰好をした新たな悪魔が2名出てくる。
 彼女たちはミルの恰好を見るとかすかにほほを赤く染め転移門を開き浴場へ案内した。

 360年ぶりの風呂を満喫し用意された衣服に着替えると、転移門を通じて再び先ほどの部屋へ移動した。

 「では話を始めようか」

 レベッカは嬉々として話を始める。

 「担当直入に言うとな、私はミル君がほしいんだよ」

 ミルは突拍子のない話に眉をひそめた。周りにいる魔物たちも聞いていなかったのかにわかにざわつき始める。
 そんなのお構いなしにレベッカは話を続ける。

 「ミル君、君を是非私の婿に迎えたい。」
 「断る。頭沸いてんのか?」

 レベッカの突然の提案とミルの失礼な態度に周りの魔物たちもさらに騒ぎ始めた。
 一番に身を乗り出して口を開いたのはデウスだった。

 「レベッカ様ぁ!なにを!!」
 「黙れ」

 レベッカは冷たい目線で一蹴すると「うっ」と小声を上げデウスは隊列に戻った。

 「私は360年以上君を見続けているんだ。すでに君のファンなのだよ」

 冗談めかした口調でミルに話しかける。

 「さんざん人の体を食い散らかした魔物の長と結婚しろだと?笑えねぇよ」

 ミルはいっそこのままぶち殺してやろうかと殺気を放つ。
 レベッカはそれにも全く怯むことなくさらに話を続ける。

 「勘違いしないでくれ、これは命令ではなく提案だよ。言っただろう?私は360年間君を見続けていたと。君が魔物以外の人間や天使にも憎悪を向けていることはすでに分かっている。」

 レベッカはすべて見抜いているといわんばかりの顔をしている。

 「だったらなんだ?」
 「だが、いかに圧倒的な力を手に入れた君でも、1人で人間や天使を相手に復讐を遂げることはいささか無謀と言わざるを得ないのが現状だ。」

 ミルはイライラを募らせるがレベッカが言っていることが至極真っ当なことは理解していた。

 「そこでだ。君が私の婿になるのなら君の復讐を悪魔と魔物が総出で力を貸そうと言っているのだよ。」
 「それで...復讐を終えた後はどうなる?」

 確かにレベッカの提案は魅力的だった。たかが結婚という形をとるだけで悪魔や魔物の力を最大限利用することができ、特に魔物を使って人間たちを自分と同じ恐怖にたたき落とすことが可能になる。転移門を自由に利用できることも確かにプラスとなるだろう。
 だが問題は、その悪魔や魔物もミルにとっては復讐の対象であるばかりか、自分を見放した人間たちに次いで憎悪を向ける相手なのだ。

 「そのあとのことは特に条件はない。強いて言えば、私と子を作り君が寿命を全うするまで私と愛をはぐくむだけの話だ。」
 「てめぇと愛をはぐくむだと?マジで吐き気がするわ」

 周りの魔物たちはミルの失礼な態度の連発に今にも襲い掛かろうとしている。

 「これでも君の気持ちは理解しているつもりだよ。だが今では君1人では絶対に復讐を遂げることができない理由もあるんだ。」

 レベッカの発言にミルは眉をいそめる。

 「実は君が閉じ込められている1年の間に人間は天使と手を組んでしまってね。今では地上より上はすべて悪魔の敵なんだよ。バラバラの組織ならいざ知らず2つの組織を一気に相手取るのはいかに君でも無謀だろう」
 「初めからそっちが本題かよ...」

 ミルはあからさまに不機嫌そうな態度をとる。だがミルは状況を冷静に理解していた。ここでこの話を突っぱねれば、いきなり悪魔の長のいるこの場で最強の魔物66体を相手に無謀な戦いが始まり、負ければその時点で復讐は終わり。たとえ勝てたとしても人間であるミルは転移門を開くことができず永久に地獄に閉じ込められることになる。
 ミルはこの交換条件に断るという選択肢がないことはすでに理解していた。

 「わかった。だが、こちらも条件がある。」

 ミルの発言にレベッカは満面の笑みを浮かべる。

 「一つ目。実際てめぇと結婚して子供を作ってやってもいいだろう。その代わりそれはの復讐を済ませてからだ。そして俺は婿にはいかない。俺がお前を嫁としてもらう。」

 周りの魔物たちが一気に殺意をむき出しにする。悪魔の中の長が嫁に行くということはそれほどまでに大事なのだ。

 「一つ目といったな?他には?」
 「もう一つは、地上に戻り俺が復讐の旅をする際、お前自身に同行してもらう。結婚するなら別に一緒にいても構わないだろう?」

 これはミルのちょっとした反撃だった。正直な話どちらもミルにとってはどうでもいい話だったが、嫁にもらうといえば多少なりとも魔物に対して嫌がらせが出来、もしかしたら結婚の話もなくなるかもしれない。悪魔の長を同行させることはイコール人質を取ることと同義だった。

 「それだけか?」
 「あぁ」

 レベッカはあきれたような顔で笑う。

 「よし!一向にかまわん。これから羽を見えなくするための準備をするから待っていろ」

 すんなりと同意するとレベッカは席から立ち上がり転移門を開くとスタスタと消えてしまった。
 あっさりと思惑の外れたミルと困惑する魔物たちは巨大な部屋にポツンと取り残され微妙な空気が部屋に充満していた。

 それから小1時間ほどで準備が完了したレベッカは満面の笑みだった。

 「さて、復讐の旅に出ようか
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...