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第7話 契約
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レベッカは妖艶な笑みを浮かべながらミルに話しかける。
「私は君に興味があってね...話をする前にお風呂にでも入ってきたらどうだい?」
そういわれミルは初めて自分の姿を見た。
髪はほとんど坊主のようなものだったが、ストレスで地毛は真っ白に変色し、血の色でそのほとんどが赤く染まっている。服などとうの昔にすべて食べられ素っ裸で体のいたるところに血が結晶化してへばりついている。特に胸の中心はほとんど食べられたこともなく特別大きな血の結晶がへばりついている。
360年以上異臭のする空間に閉じ込められていたのだ。すでにミルの嗅覚はマヒし何も感じなかったが周りは相当な匂いを感じているだろう。
ミルはこの格好で地上に戻っても困るだけだと静かにうなずく。
「おいっ浴場へ案内してやれ」
レベッカが号令を出すとわきからメイドのような恰好をした新たな悪魔が2名出てくる。
彼女たちはミルの恰好を見るとかすかにほほを赤く染め転移門を開き浴場へ案内した。
360年ぶりの風呂を満喫し用意された衣服に着替えると、転移門を通じて再び先ほどの部屋へ移動した。
「では話を始めようか」
レベッカは嬉々として話を始める。
「担当直入に言うとな、私はミル君がほしいんだよ」
ミルは突拍子のない話に眉をひそめた。周りにいる魔物たちも聞いていなかったのかにわかにざわつき始める。
そんなのお構いなしにレベッカは話を続ける。
「ミル君、君を是非私の婿に迎えたい。」
「断る。頭沸いてんのか?」
レベッカの突然の提案とミルの失礼な態度に周りの魔物たちもさらに騒ぎ始めた。
一番に身を乗り出して口を開いたのはデウスだった。
「レベッカ様ぁ!なにを!!」
「黙れ」
レベッカは冷たい目線で一蹴すると「うっ」と小声を上げデウスは隊列に戻った。
「私は360年以上君を見続けているんだ。すでに君のファンなのだよ」
冗談めかした口調でミルに話しかける。
「さんざん人の体を食い散らかした魔物の長と結婚しろだと?笑えねぇよ」
ミルはいっそこのままぶち殺してやろうかと殺気を放つ。
レベッカはそれにも全く怯むことなくさらに話を続ける。
「勘違いしないでくれ、これは命令ではなく提案だよ。言っただろう?私は360年間君を見続けていたと。君が魔物以外の人間や天使にも憎悪を向けていることはすでに分かっている。」
レベッカはすべて見抜いているといわんばかりの顔をしている。
「だったらなんだ?」
「だが、いかに圧倒的な力を手に入れた君でも、1人で人間や天使を相手に復讐を遂げることはいささか無謀と言わざるを得ないのが現状だ。」
ミルはイライラを募らせるがレベッカが言っていることが至極真っ当なことは理解していた。
「そこでだ。君が私の婿になるのなら君の復讐を悪魔と魔物が総出で力を貸そうと言っているのだよ。」
「それで...復讐を終えた後はどうなる?」
確かにレベッカの提案は魅力的だった。たかが結婚という形をとるだけで悪魔や魔物の力を最大限利用することができ、特に魔物を使って人間たちを自分と同じ恐怖にたたき落とすことが可能になる。転移門を自由に利用できることも確かにプラスとなるだろう。
だが問題は、その悪魔や魔物もミルにとっては復讐の対象であるばかりか、自分を見放した人間たちに次いで憎悪を向ける相手なのだ。
「そのあとのことは特に条件はない。強いて言えば、私と子を作り君が寿命を全うするまで私と愛をはぐくむだけの話だ。」
「てめぇと愛をはぐくむだと?マジで吐き気がするわ」
周りの魔物たちはミルの失礼な態度の連発に今にも襲い掛かろうとしている。
「これでも君の気持ちは理解しているつもりだよ。だが今では君1人では絶対に復讐を遂げることができない理由もあるんだ。」
レベッカの発言にミルは眉をいそめる。
「実は君が閉じ込められている1年の間に人間は天使と手を組んでしまってね。今では地上より上はすべて悪魔の敵なんだよ。バラバラの組織ならいざ知らず2つの組織を一気に相手取るのはいかに君でも無謀だろう」
「初めからそっちが本題かよ...」
ミルはあからさまに不機嫌そうな態度をとる。だがミルは状況を冷静に理解していた。ここでこの話を突っぱねれば、いきなり悪魔の長のいるこの場で最強の魔物66体を相手に無謀な戦いが始まり、負ければその時点で復讐は終わり。たとえ勝てたとしても人間であるミルは転移門を開くことができず永久に地獄に閉じ込められることになる。
ミルはこの交換条件に断るという選択肢がないことはすでに理解していた。
「わかった。だが、こちらも条件がある。」
ミルの発言にレベッカは満面の笑みを浮かべる。
「一つ目。実際てめぇと結婚して子供を作ってやってもいいだろう。その代わりそれはすべての復讐を済ませてからだ。そして俺は婿にはいかない。俺がお前を嫁としてもらう。」
周りの魔物たちが一気に殺意をむき出しにする。悪魔の中の長が嫁に行くということはそれほどまでに大事なのだ。
「一つ目といったな?他には?」
「もう一つは、地上に戻り俺が復讐の旅をする際、お前自身に同行してもらう。結婚するなら別に一緒にいても構わないだろう?」
これはミルのちょっとした反撃だった。正直な話どちらもミルにとってはどうでもいい話だったが、嫁にもらうといえば多少なりとも魔物に対して嫌がらせが出来、もしかしたら結婚の話もなくなるかもしれない。悪魔の長を同行させることはイコール人質を取ることと同義だった。
「それだけか?」
「あぁ」
レベッカはあきれたような顔で笑う。
「よし!一向にかまわん。これから羽を見えなくするための準備をするから待っていろ」
すんなりと同意するとレベッカは席から立ち上がり転移門を開くとスタスタと消えてしまった。
あっさりと思惑の外れたミルと困惑する魔物たちは巨大な部屋にポツンと取り残され微妙な空気が部屋に充満していた。
それから小1時間ほどで準備が完了したレベッカは満面の笑みだった。
「さて、復讐の旅に出ようか旦那様」
「私は君に興味があってね...話をする前にお風呂にでも入ってきたらどうだい?」
そういわれミルは初めて自分の姿を見た。
髪はほとんど坊主のようなものだったが、ストレスで地毛は真っ白に変色し、血の色でそのほとんどが赤く染まっている。服などとうの昔にすべて食べられ素っ裸で体のいたるところに血が結晶化してへばりついている。特に胸の中心はほとんど食べられたこともなく特別大きな血の結晶がへばりついている。
360年以上異臭のする空間に閉じ込められていたのだ。すでにミルの嗅覚はマヒし何も感じなかったが周りは相当な匂いを感じているだろう。
ミルはこの格好で地上に戻っても困るだけだと静かにうなずく。
「おいっ浴場へ案内してやれ」
レベッカが号令を出すとわきからメイドのような恰好をした新たな悪魔が2名出てくる。
彼女たちはミルの恰好を見るとかすかにほほを赤く染め転移門を開き浴場へ案内した。
360年ぶりの風呂を満喫し用意された衣服に着替えると、転移門を通じて再び先ほどの部屋へ移動した。
「では話を始めようか」
レベッカは嬉々として話を始める。
「担当直入に言うとな、私はミル君がほしいんだよ」
ミルは突拍子のない話に眉をひそめた。周りにいる魔物たちも聞いていなかったのかにわかにざわつき始める。
そんなのお構いなしにレベッカは話を続ける。
「ミル君、君を是非私の婿に迎えたい。」
「断る。頭沸いてんのか?」
レベッカの突然の提案とミルの失礼な態度に周りの魔物たちもさらに騒ぎ始めた。
一番に身を乗り出して口を開いたのはデウスだった。
「レベッカ様ぁ!なにを!!」
「黙れ」
レベッカは冷たい目線で一蹴すると「うっ」と小声を上げデウスは隊列に戻った。
「私は360年以上君を見続けているんだ。すでに君のファンなのだよ」
冗談めかした口調でミルに話しかける。
「さんざん人の体を食い散らかした魔物の長と結婚しろだと?笑えねぇよ」
ミルはいっそこのままぶち殺してやろうかと殺気を放つ。
レベッカはそれにも全く怯むことなくさらに話を続ける。
「勘違いしないでくれ、これは命令ではなく提案だよ。言っただろう?私は360年間君を見続けていたと。君が魔物以外の人間や天使にも憎悪を向けていることはすでに分かっている。」
レベッカはすべて見抜いているといわんばかりの顔をしている。
「だったらなんだ?」
「だが、いかに圧倒的な力を手に入れた君でも、1人で人間や天使を相手に復讐を遂げることはいささか無謀と言わざるを得ないのが現状だ。」
ミルはイライラを募らせるがレベッカが言っていることが至極真っ当なことは理解していた。
「そこでだ。君が私の婿になるのなら君の復讐を悪魔と魔物が総出で力を貸そうと言っているのだよ。」
「それで...復讐を終えた後はどうなる?」
確かにレベッカの提案は魅力的だった。たかが結婚という形をとるだけで悪魔や魔物の力を最大限利用することができ、特に魔物を使って人間たちを自分と同じ恐怖にたたき落とすことが可能になる。転移門を自由に利用できることも確かにプラスとなるだろう。
だが問題は、その悪魔や魔物もミルにとっては復讐の対象であるばかりか、自分を見放した人間たちに次いで憎悪を向ける相手なのだ。
「そのあとのことは特に条件はない。強いて言えば、私と子を作り君が寿命を全うするまで私と愛をはぐくむだけの話だ。」
「てめぇと愛をはぐくむだと?マジで吐き気がするわ」
周りの魔物たちはミルの失礼な態度の連発に今にも襲い掛かろうとしている。
「これでも君の気持ちは理解しているつもりだよ。だが今では君1人では絶対に復讐を遂げることができない理由もあるんだ。」
レベッカの発言にミルは眉をいそめる。
「実は君が閉じ込められている1年の間に人間は天使と手を組んでしまってね。今では地上より上はすべて悪魔の敵なんだよ。バラバラの組織ならいざ知らず2つの組織を一気に相手取るのはいかに君でも無謀だろう」
「初めからそっちが本題かよ...」
ミルはあからさまに不機嫌そうな態度をとる。だがミルは状況を冷静に理解していた。ここでこの話を突っぱねれば、いきなり悪魔の長のいるこの場で最強の魔物66体を相手に無謀な戦いが始まり、負ければその時点で復讐は終わり。たとえ勝てたとしても人間であるミルは転移門を開くことができず永久に地獄に閉じ込められることになる。
ミルはこの交換条件に断るという選択肢がないことはすでに理解していた。
「わかった。だが、こちらも条件がある。」
ミルの発言にレベッカは満面の笑みを浮かべる。
「一つ目。実際てめぇと結婚して子供を作ってやってもいいだろう。その代わりそれはすべての復讐を済ませてからだ。そして俺は婿にはいかない。俺がお前を嫁としてもらう。」
周りの魔物たちが一気に殺意をむき出しにする。悪魔の中の長が嫁に行くということはそれほどまでに大事なのだ。
「一つ目といったな?他には?」
「もう一つは、地上に戻り俺が復讐の旅をする際、お前自身に同行してもらう。結婚するなら別に一緒にいても構わないだろう?」
これはミルのちょっとした反撃だった。正直な話どちらもミルにとってはどうでもいい話だったが、嫁にもらうといえば多少なりとも魔物に対して嫌がらせが出来、もしかしたら結婚の話もなくなるかもしれない。悪魔の長を同行させることはイコール人質を取ることと同義だった。
「それだけか?」
「あぁ」
レベッカはあきれたような顔で笑う。
「よし!一向にかまわん。これから羽を見えなくするための準備をするから待っていろ」
すんなりと同意するとレベッカは席から立ち上がり転移門を開くとスタスタと消えてしまった。
あっさりと思惑の外れたミルと困惑する魔物たちは巨大な部屋にポツンと取り残され微妙な空気が部屋に充満していた。
それから小1時間ほどで準備が完了したレベッカは満面の笑みだった。
「さて、復讐の旅に出ようか旦那様」
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