2 / 6
2 やっぱり怪しいと思ったんだよ!
しおりを挟む
懇親会は勉強会の後に居酒屋で開催されることになっており、下谷さんは不参加で、受験者だけで集まって、飲みながら交流を深めるのが恒例だった。
私も懇親会に参加してみたものの、参加者はイケメン男性ばかりなものだから緊張してしまい、周りを見る余裕もなく、黙って飲食し、たまに愛想笑いを浮かべるだけであった。
だが、何度か参加しているうちに緊張も取れてきたようで、トイレに立ったときにとうとう見てしまったのだ。居酒屋の片隅でマリコが男性参加者の股間に顔を埋めているのを。
マジか。ここ居酒屋だけど、マジなのかマリコ。衝撃のあまり、私は何も見なかったことにした。現実を受け止めかねるというか。
その後も、飲み会のたびにマリコのご乱行というか、ハレンチなものを目撃することとなった。飲みながら男性の服の中に手を入れているなんて日常茶飯事。イケメンの乳首をいじるマリコの隣の席になったとき、私は顔も上げられなかった。
私が動揺しているだけで文句を言わないことに安心したのか、マリコはさらにエスカレートした。飲み会の途中で男と二人でいなくなったり、帰ってきたと思ったらまた別の男といなくなったりという、もうアレだ、はっきり言えないけど大変なことになっておるな、という感じだ。
イケメンばかりを集めた勉強会は、つまりマリコの狩り場だったのだ。
私は勉強会に参加したはずなのに、間違えて淫行サークルに入ってしまったようなのだ。
しかし、全てのイケメンがマリコに食われていたわけではなかった。
性に奔放なマリコに引いている男性もいて、そういう男性は私の周りに集まるようになり、やがて勉強会は私の派閥とマリコの派閥で真っ二つに分かれるという事態となってしまったのだった。
当然マリコは面白くない。きっとこういう事態になるのを怖れて、女性は勉強会に誘わなかったのだろう。
この頃からマリコは私を悪く言うようになってしまった。当然家に行き来することもなくなった。
マリコと出会ったとき、私はいい友だちができたと思い、嬉しかったのだが、裏切られた気持ちだった。いや、マリコからしたら、狩り場に侵入してきた私のほうこそが裏切り者なのかもしれなかった。この勉強会とは関係ないところでは、あんなに仲良くしていたのに、と。
お互いが悲しんでいるのかもしれず、かといって、どう友情を修復したらいいのか、そもそも修復できるのかどうかも私もわからなかった。
マリコは私を見下すように笑うことが増えた。美人のはずのマリコの顔がひどく醜く思えた。
「北斗ちゃんって、オタサーの姫みたいだね。あはは」
そのころ私の派閥には四天王がいた。性的なものを勉強会に持ち込まれるのを強固に拒否している四人の男性だ。
私は懇親会だけでなく勉強会のときも、この四人に囲まれて座るのが常になっていた。マリコ派閥のイケメンたちは、最近では私にも淫行を仕掛けてこようとすることがあるので、それから守ってくれているのだ。
勉強会では、無口だが渋くて良い声の眼鏡イケメンである広田くんが、誰よりも早く席についており、「北斗さん、こっち」と、手招きして、私を隣に座らせる。
すると、おしゃれでレディーファーストが板についたイケメンの谷原さんが、「北斗さん、その席は空調の風が当たらない? 大丈夫? 広田くん、もっとそっちにずれて。うん、ありがとう」などと言って、私を挟むようにして座る。
その後、ボランティア活動も頑張っている熱血兄ちゃん系イケメンの増子《ましこ》くんが、「やべえ、やべえ」と騒がしく登場し、「昼飯食ってないから、倒れそう」などと言いながら、私の前の席に座り、こっちを向いた状態でおにぎりを食べ始める。顔の距離が近すぎる。のけぞるように背もたれにもたれかかると、「増子って、毎回毎回昼飯食ってないって言ってないか?」と背後から声がする。振り返ると、高学歴で会話もきれっきれな知的イケメンである陣ノ内さんがいつの間にか私の後部席にいる、といったぐあいだ。
前後左右を反エロス派に守られて座るというのが基本フォーメーションだ。大変心強い守護の布陣である。それがマリコからしたら気にくわない。オタサーの姫などと言ってくるのも、ブスなくせに男四人を従えていい気なもんね、そういう嫌味なのだ。
また、全てのイケメンを食べてしまいたいマリコからしてみれば、この四天王がエロの相手をしてくれないのも腹立たしいようだった。特にマリコが好意を寄せているジェントルマン谷原さんが反エロス四天王になってしまったため、マリコの怒りはマグマのようにふつふつと煮えたぎり、噴火のごとく口から飛び出すのであった。
「私にはとても北斗ちゃんの真似はできないなあ」
「……それって、どういう意味?」
「あえてヤラせないことで、気を引こうとしてるわけでしょう。そんなの男の人が可哀想」
公民館でトイレに立つたび、マリコがついてきて嫌味を言う。もうげんなりしてしまう。マリコの思い人である谷原さんは、誘いをのらりくらりとかわし、いつも私の隣に座るわけで、マリコのジェラシーはとまらない。やはり友情の修復は不可能であるように思われた。
「あ、逆かな。ヤラせないんじゃなくて、五人で変態っぽいことしてそう。そりゃ男たちも北斗ちゃんの言いなりになっちゃうよね」
エロで男を言いなりにしていると言いたいのだろう。もちろん言いがかりである。もし私が四天王と恋愛とかエロとかに発展していれば、そういう批判を受けてもしょうがないのかもしれない。だが、違う。
四天王は決して私を口説かないのだ。もちろん私だって口説かない。
彼らは「性的なやつ反対派の四天王」なのであって「北斗のしもべ四天王」ではない。私はあくまでも反エロ派の旗頭に過ぎないのだ。私たちは個人的な話もしない。あたりさわりのない雑談や勉強の話ばかりだ。しかしマリコにはそんなことはわからない。脳内がエロでいっぱいなので、目の前に男と女がいたら、全部が全部エロ関係に見えてしまうのだろう。
私も懇親会に参加してみたものの、参加者はイケメン男性ばかりなものだから緊張してしまい、周りを見る余裕もなく、黙って飲食し、たまに愛想笑いを浮かべるだけであった。
だが、何度か参加しているうちに緊張も取れてきたようで、トイレに立ったときにとうとう見てしまったのだ。居酒屋の片隅でマリコが男性参加者の股間に顔を埋めているのを。
マジか。ここ居酒屋だけど、マジなのかマリコ。衝撃のあまり、私は何も見なかったことにした。現実を受け止めかねるというか。
その後も、飲み会のたびにマリコのご乱行というか、ハレンチなものを目撃することとなった。飲みながら男性の服の中に手を入れているなんて日常茶飯事。イケメンの乳首をいじるマリコの隣の席になったとき、私は顔も上げられなかった。
私が動揺しているだけで文句を言わないことに安心したのか、マリコはさらにエスカレートした。飲み会の途中で男と二人でいなくなったり、帰ってきたと思ったらまた別の男といなくなったりという、もうアレだ、はっきり言えないけど大変なことになっておるな、という感じだ。
イケメンばかりを集めた勉強会は、つまりマリコの狩り場だったのだ。
私は勉強会に参加したはずなのに、間違えて淫行サークルに入ってしまったようなのだ。
しかし、全てのイケメンがマリコに食われていたわけではなかった。
性に奔放なマリコに引いている男性もいて、そういう男性は私の周りに集まるようになり、やがて勉強会は私の派閥とマリコの派閥で真っ二つに分かれるという事態となってしまったのだった。
当然マリコは面白くない。きっとこういう事態になるのを怖れて、女性は勉強会に誘わなかったのだろう。
この頃からマリコは私を悪く言うようになってしまった。当然家に行き来することもなくなった。
マリコと出会ったとき、私はいい友だちができたと思い、嬉しかったのだが、裏切られた気持ちだった。いや、マリコからしたら、狩り場に侵入してきた私のほうこそが裏切り者なのかもしれなかった。この勉強会とは関係ないところでは、あんなに仲良くしていたのに、と。
お互いが悲しんでいるのかもしれず、かといって、どう友情を修復したらいいのか、そもそも修復できるのかどうかも私もわからなかった。
マリコは私を見下すように笑うことが増えた。美人のはずのマリコの顔がひどく醜く思えた。
「北斗ちゃんって、オタサーの姫みたいだね。あはは」
そのころ私の派閥には四天王がいた。性的なものを勉強会に持ち込まれるのを強固に拒否している四人の男性だ。
私は懇親会だけでなく勉強会のときも、この四人に囲まれて座るのが常になっていた。マリコ派閥のイケメンたちは、最近では私にも淫行を仕掛けてこようとすることがあるので、それから守ってくれているのだ。
勉強会では、無口だが渋くて良い声の眼鏡イケメンである広田くんが、誰よりも早く席についており、「北斗さん、こっち」と、手招きして、私を隣に座らせる。
すると、おしゃれでレディーファーストが板についたイケメンの谷原さんが、「北斗さん、その席は空調の風が当たらない? 大丈夫? 広田くん、もっとそっちにずれて。うん、ありがとう」などと言って、私を挟むようにして座る。
その後、ボランティア活動も頑張っている熱血兄ちゃん系イケメンの増子《ましこ》くんが、「やべえ、やべえ」と騒がしく登場し、「昼飯食ってないから、倒れそう」などと言いながら、私の前の席に座り、こっちを向いた状態でおにぎりを食べ始める。顔の距離が近すぎる。のけぞるように背もたれにもたれかかると、「増子って、毎回毎回昼飯食ってないって言ってないか?」と背後から声がする。振り返ると、高学歴で会話もきれっきれな知的イケメンである陣ノ内さんがいつの間にか私の後部席にいる、といったぐあいだ。
前後左右を反エロス派に守られて座るというのが基本フォーメーションだ。大変心強い守護の布陣である。それがマリコからしたら気にくわない。オタサーの姫などと言ってくるのも、ブスなくせに男四人を従えていい気なもんね、そういう嫌味なのだ。
また、全てのイケメンを食べてしまいたいマリコからしてみれば、この四天王がエロの相手をしてくれないのも腹立たしいようだった。特にマリコが好意を寄せているジェントルマン谷原さんが反エロス四天王になってしまったため、マリコの怒りはマグマのようにふつふつと煮えたぎり、噴火のごとく口から飛び出すのであった。
「私にはとても北斗ちゃんの真似はできないなあ」
「……それって、どういう意味?」
「あえてヤラせないことで、気を引こうとしてるわけでしょう。そんなの男の人が可哀想」
公民館でトイレに立つたび、マリコがついてきて嫌味を言う。もうげんなりしてしまう。マリコの思い人である谷原さんは、誘いをのらりくらりとかわし、いつも私の隣に座るわけで、マリコのジェラシーはとまらない。やはり友情の修復は不可能であるように思われた。
「あ、逆かな。ヤラせないんじゃなくて、五人で変態っぽいことしてそう。そりゃ男たちも北斗ちゃんの言いなりになっちゃうよね」
エロで男を言いなりにしていると言いたいのだろう。もちろん言いがかりである。もし私が四天王と恋愛とかエロとかに発展していれば、そういう批判を受けてもしょうがないのかもしれない。だが、違う。
四天王は決して私を口説かないのだ。もちろん私だって口説かない。
彼らは「性的なやつ反対派の四天王」なのであって「北斗のしもべ四天王」ではない。私はあくまでも反エロ派の旗頭に過ぎないのだ。私たちは個人的な話もしない。あたりさわりのない雑談や勉強の話ばかりだ。しかしマリコにはそんなことはわからない。脳内がエロでいっぱいなので、目の前に男と女がいたら、全部が全部エロ関係に見えてしまうのだろう。
1
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる