性悪エリート高校の「たのしいうんどうかい」

ゴオルド

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第一部 青蝶編

4 落ちこぼれの団長と副長

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 大勢の生徒が掲示板に詰めかけていた。入学時のクラス分けが事務的だったのとは対照的に、体育祭のチーム分けは随分と盛り上がっているようだ。誰もが期待と不安でこわばった顔をしている。

 チーム分け発表が掲示されたことは、ついさっき校内アナウンスで知らされたのだが、そこから全校生徒がいっせいに集まったのではないかというほどの黒山の人だかりができていた。

 俺はあっという間に人の波にのまれてしまい、もはや自由意思で動くこともできず、人の流れに乗って、どこに向かっているのかもわからず前に進んだ。

 やがて俺は、黄色い紙の前へと押し出されるみたいにして辿りついた。
 布団サイズの紙の上部には、「黄鹿きじかチーム メンバー一覧」と書いてある。
 黄色い鹿? なんだそれと思いつつ、リストにある名前を見ていった。どうやら学年混合チームのようで、1年から3年までいる。

 俺の名前はなかった。

 次に、隣の赤い紙のところへと押し流されていった。そっちは「赤猪あかいのチーム」と書いてある。赤いイノシシか。そこにも俺の名前はない。


 緑の紙、青い紙、どちらにも藪島の名前が見つからない。


 最後の一枚、白い紙のところに来た。
 ここにもなかったらどうしようと少し不安になる。

 ……あった。
 1年1組、藪島亮平。白月チーム。

 俺の学年と名前が書かれていた。どうやら俺は「白月はくつき」とかいうチームに入れられたようだ。白い月か。ホワイトムーン。どういう意味なんだろうな。
 うちのクラスから白月に入ったのは、どうやら俺だけのようだった。



 チーム分けが掲示された、その翌日のこと。

 帰りのホームルームで、担任は俺たちにグラウンドに行くよう指示した。
「これから体育祭のチームごとに分かれて、団長襲名式があるから、参席するように」
 ……団長襲名式って何だよ。襲名って?
 首をひねっているのは俺だけで、クラスメートたちは無反応で受け流している。襲名式……高校生活で使うようなフレーズなのか? なんでみんなスルーしてるんだよ。ネームインパクトに動じない連中なのか、襲名式に慣れているのか、どっちだ。


 謎の儀式のためにグラウンドに行ってみると、5色の旗が立てられていた。校舎に一番近いところで、黄色や赤の旗が揺れている。その少し離れたところに緑と青の旗があった。

 さて、俺が所属することになった白月はくつきはどこだ?

 広いグラウンドをぐるりと見回してみた。
 ああ、一番遠いところに白旗があった。グラウンドの端っこだ。というかグラウンドからはみ出てるな。グラウンド脇、いろんな高さの鉄棒が設置されている付近に、白旗を囲むようにして地面に座り込む集団がいた。あれだな。
 というか、なんで高校に鉄棒があるんだ……? 鉄棒を楽しむ高校生がいるのか? まあ、いてもいいけど。再び首をひねりながら、そちらへ向かおうとしたが、ぎょっとして思わず足を止めた。

 遠目にもわかった。白月チームのやばさが。

 あきらかに治安が悪そうな生徒が揃っている。

 うん……。何ていうかさ。あっちには行きたくないなって。
 俺、不良とか苦手なんだよな。あいつら血の気が多いだろ。いや、俺も人のこと言えた立場じゃないかもしれないけど、なんかオーラ? 空気感? が違うよな。俺なんてちょっとヒョロめなだけの普通の高校生男子だし。推薦入学するようなタイプだし。あっちに行きたくねえ。
 いやでも、行かないわけにはいかないか。げんなりとした気持ちで白月チームのところへと向かった。

 我がチームの生徒たちは、近くで見てみても、超絶おりこうさん高校の雰囲気ではなかった。

 なぜか猫背の生徒多数。肩を丸めてすごみのある上目遣いであたりを睨みつつ、ヤンキー座りをしている。制服を派手に着崩している生徒も多い。着崩しすぎてしまったのか、パンツ一丁で仰向けに倒れている男子もいた。おいおい服はどうしたよ? もしやいじめられている生徒なのかなと思ったが、にやにやと笑ったガラの悪そうな顔と派手な金髪を見て、あ、違うな、と理解してすぐに目をそらした。自分の意思で服をお脱ぎになられた生徒だ。

 景条館の生徒は、校則どおりの制服の着こなしで、髪も染めずピアスもあけず、表向きのルールはきちんと守るが人の心はないというのが多数派だ。しかし、白月チームの生徒の多くは、髪を染めたりパーマをかけたり、ネイルが凶器なみに長くてメイクの濃い女子とか、ネクタイをせずに胸元にジャラジャラとアクセサリーを光らせてる男子とか、うっすらタバコ臭い人もいるしで、同じ高校の生徒とは思えないほどだった。

 大変な世界に来てしまった。
 景条館にもいたんだな、ヤンキーとかギャルとかって。

 だが、そんな派手な集団のはじのほうには、地味な見た目の生徒たちも、まあまあいた。あえて存在感を消しているのか、もとから存在感が備わっていないのか、まるで目立たない。俺もそっち側だな、うん。地味な生徒たちに混じってしゃがんだ。

 やがてグラウンドを移動する者はいなくなった。生徒たちは5集団に分かれている。白月だけやけに人数が少ないのが気になった。人数が少ないと体育祭では不利なのでは?


 白旗近くに座っていた一人の男子生徒が立ち上がった。

 がっしりした体躯の男だった。髪は黒く、アクセサリーの類いは身につけていない。よく日に焼けた肌をしており短髪。何かスポーツでもやっていそうだ。おそらくは3年だろう。社会人だと言われても信じてしまいそうなほど大人びた顔立ちの生徒だった。

 まっすぐ前を向いた精悍な横顔に夕陽が当たり、少し眩しそうに顔をしかめてから咳払いをした。周囲から軽く拍手が上がった。

 男子生徒は、ハスキーな声で話し始めた。
「いまから白月はくつきチームの襲名式を始める。俺は3年3組の浅羽あさばしゅう。先代から指名されたので、本年は俺が団長をつとめる。おまえら、異議はないな!」

 みんなが熱烈に拍手しながら、「おう」と叫んだ。

「承認を受けたので、これより俺が団長だ。先代たちの努力を無駄にしないよう精いっぱい務めたいと思う。次、副長を指名する。山田!」
「うぇへへ」
 パンツ一丁の男子が半笑いで片手をあげた。細くて長い腕だった。拍手がわき起こる。

「山田、おまえがうちの副長だ。自己紹介しろ」

 男は奇妙に体をくねくねさせながら立ち上がった。かなり背が高い。だが、団長に比べると細身で、色も白かった。少し長めの髪を金色に染めていて、へらへらした顔は軽薄に見えた。わりと女子にモテそうだ、パンツ一丁じゃなければ。

「山田ぁ優斗ゆうとぉ、3年1組の落ちこぼれでありますっ! 好きな食べ物はぁ、ポテトチップスのり塩ッ!」

 丁寧にお辞儀すると、ひとりで馬鹿笑いしてから崩れるように地面に倒れた。おなかを撫でながら左右にごろごろ転がっている。パンツがいやにフィットしているな。ああ、あれパンツじゃなくて水着か。なんで水着でグラウンドにいるんだ、この人。そしてなんで誰も突っ込まないんだ。

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