<第一部 完結> お前がなれるわけがない!

mokono

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第1部 第62部

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エディたちが、所長の行方などを探している頃、トウの町では、選挙も終盤に差し掛かる大事な時期なのに、候補者であるアッシュの体調が頗る悪いようだ。



まあ、原因はあれらしく・・・



「あぁ、やっぱり・・」



青い顔をしながらも、選挙活動に挑むアッシュに、ロビン一人が同情の視線を送っていた。



「うっ・・・」



時折、胃の辺りを押さえたり、また、歩く姿もへっぴり腰で、あのケーシーとバッティングした日、アッシュと別れたのはたった半日だったはずなのに、その半日で、アッシュは一気に老化していた。



食事も、ロビンがメイに準備させたスープを口にする様は介護食?のようである。



「追い込まなきゃいけない時期なんじゃないのかよ!」



アッシュに代わり、ロビンがラドに文句を垂れるが、ラドは「はァ?何だって?」と、こちらも急な老化?現象が起きたフリで、ロビンの言葉を躱してくれる。



「あれじゃぁ!街頭演説どころじゃないじゃないかっ!」



失礼なのはわかってはいるが、ロビンはアッシュに指差して憤る。



だが、ラドは目を細めるだけで、取り合わないでいた。



「すまん、ロビン、静かにしてくれ・・」



ケーシー一族が営む酪農の地へ赴いてから、既に、二日が過ぎている。



あの日、示談を済ませ日が暮れかかる中、トウの中心部を目指したアッシュたちだが、当然、行きのような速度がアッシュには出せず、帰宅は夜更けとなった。



何だ!夜だし時間掛けての走行で、ゆっくり帰宅したんだね?と思ったら大間違い、速度が出せないのはアッシュであって、その速度が出ない馬をラドは足蹴るなどして追立てて、馬上で手綱を握るアッシュはただただ恐怖の乗馬となったのである。



生きて帰れたことを、何度、神に感謝したことか・・・



そんな訳で、アッシュは精神がそがれ、一気に老け込んだのであった。



アッシュは生気が抜けた状態で、翌日は起き上がることすら出来なかった。



仕方がないから、ロビン達は、その日の演説場所にアッシュ抜きで赴き、選挙活動に励んだのであるが、それからも、アッシュは仕事が存分に熟せる状態では無い為に、ロビンがため息を零してしまったのだった。



「馬車にすれば良かったんだ!」



尚も、ロビンがグチグチ言いまくり、室内は重たい雰囲気になっている。



「うるさいぞ!アッシュも言っているだろうが!」



さすがに、ラドもイライラしてきたようで、ロビンにきつく言い返しだした。



「いや、元はと言えば、馬の乗り方に問題あるんだよ!どうせ、あの日のうっ憤を吹き飛ばす意味で変な速度で走行したんだろう!」



しかし、ロビンもここは乗馬の仕方に常に疑問もあったこともあり、なかなか引かず、ラドに食い下がりだして、尚も攻撃は止まらない。



「はァん!馬走らせたくらいで、気持ちが晴れるか!アホか!」



唸るアッシュを傍に置きながら、二人は互いのうっ憤を晴らすかのように、派手な言い合いになっていく。



「ぉ、おね、がいだ、ゃめろォ」



小さなうめき声を上げながら、アッシュが二人の仲裁をしだした。



だが、二人には届かないようで・・・



そんな時、珍しく、事務所にメイがやって来たのだった。



「こ、こんにちは・・・」



メイの声は、何故かこちらも小声で、何か怯えて伺うような訪問の仕方であった。



そんなメイに、さすが夫のロビンはすぐに気付き、メイに駆け寄る。



「あれ?どうしたのさ?珍しいね?」



「う、うん・・」



訪ねて来たのに、何だか歯切れの悪い物言いのメイに、ロビンは首を捻る。



それに、顔色もアッシュまではいかないが、今朝、出かける際に見た顔色とは格段に違う。



「何かあったの?」



ロビンは、メイの態度を怪訝に思い、尚も問い掛ける。



「あっ、うん・・」



メイは言いよどみながら、兄のアッシュを見やる。



そんなメイの視線に気づき、アッシュも首を捻り、自分の顔を人差し指で指し示す。



すると、メイが、目を左右に数度動かしてから、小さく頷いた。



「ど、どうした?」



さすがに、アッシュも恐怖の乗馬から頭も心も切り離して、メイの話に向き直る。



「あ、あのね、さ、さっき、家に、役場のさ、縁故採用のケントが来たのよ・・」



メイから出たケントの名前に、その場に居た皆が頭に疑問を浮かべだす。



こんな時期に、何で、ケントが来たのかと?



「で、ケントがどうしたの?」



メイの傍にいたロビンが先を促すように聞いてくる。



「そ、それが、に、に、にいさんが、そ、そのう、お、横領していた過去が見つかったとかで・・・」



一瞬、皆が固まり、そして、その目が一斉に、アッシュに向けられた。



「えっ!?わ、わたし?や、やってないぞ!」



アッシュは、さっきとは違う意味で青くなったが、直ぐに、状況を理解して、今度は怒りで顔を赤らめていく。



「はあ!何だって!じょ、冗談じゃない!横領しているのは、お前らだろ!」



バンっ!と、目の前にある机に手をついて、アッシュは立ち上がった。



「それで、ケントは何だって?」



ロビンが再び、メイにケントが何を伝えに来たのかを聞きだした。



「そ、それで、にいさんに、候補を降りろと、降りれば、この件はもみ消してやるって・・」



メイは涙目になりながら、そんな話を教えてくれた。



「に、にいさん、ほ、本当はどうなの?」



不安からか、メイは縋るような目線を兄に向ける、が、アッシュはぎっと睨みつけ返した。



「ば、バカ野郎!私は、そんなことはしていない!するわけないだろう!」



アッシュもここは大きな声を出して、妹の失礼な思い込みを叱責する。



「そうだよ、メイ!お義兄さんがそんなことやるはずないよ!やるなら、ケントなんかにはわからないように出来るはずだよ!」



ロビンのフォローになってない言葉に、アッシュは「はあ?!」と、今度はロビンに向けて怒りそうになったが、当のメイは、夫ロビンの言葉に、「そうだよね!兄さんなら、ケントなんかには暴けないやり方してそうだわ」と納得していた。



それって、アッシュの頭脳の高さを褒めているのか?、ただ、ケントがバカだと言いたいのか?、ちょっと解りにくい例えだが、何故か、ロビンとメイ夫婦にはすとんと落ちたようだ。



アッシュは複雑な顔をしながらも、ケントの行動には沸々と怒りが込み上げてくる。



選挙も終盤もいいところ、ここに来て、そんな手を使い、追い落とそうとはなんという卑劣な奴だ!



前から、低俗で、嫌な奴ではあったが、ここまでクズだったとはな!



「でね、この話、ここに来るまでに町に流れてて」



メイが、再び悲痛な顔をして言い出した。



「やばいな・・」



メイから齎された話を聞いていたラドが、ここに来てそう口にした。



今の役所は、不当な追加徴税のことで、町の人から不信感が持たれている。



そこに、少し前まで役場に勤めていたアッシュが、横領の疑いがあると吹聴され出したとは。



こ、これは、マジでやばいかも・・・



勿論、自分は潔白であるのだが。



アッシュは、机に手をついて立ち上がってはいたが、そこから動き出すことが出来ずに、苦い顔をしたまま立ち尽くしていたのだった。

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