<第一部 完結> お前がなれるわけがない!

mokono

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第1部 第76話

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今日は、ビスタ国全土での「平民議員」選挙の投票日である。



あの嵐?のような告示日から今日まで、長くも短くもある選挙活動だった。



そんな選挙投票日は、快晴で、朝から町に設けられた投票所には、人が絶えることなくやって来ている。



このトウの町では、三箇所に投票所を設置し、住んでる区画で投票場所を区切っていた。



で、どの投票所でも人の入りは好調だ。



まあ、この町ではそもそも決選投票などこれまでした事がなかったのもあり、町全体が初めての経験をしているという訳で、皆、どこか浮足立った感じでいた。



「あっ!、おばあさん、ここでは記入しないで下さいね」



「えっ?用紙がない?」



「そこの、おじいさん!他の人へ書いたの見せたら駄目ですよ!」



「立候補者がわからない?」



「ど、どっちがいいか?ですか?」



選挙運営をする者は、朝からずっとこんな調子で、既に、疲労困憊の顔をしている。



だ、大丈夫だろうか・・・



投票に来た者が、投票所の様子を見て少し不安な気持ちを抱いたりしながらも、選挙投票のこの日、時間がゆっくりと過ぎていく。



そんな投票日、勿論、アッシュたちも朝から事務所に来ていた。



あのガラスや扉が破損された元の事務所に集まっている。



カルロの対応が功を成して、何とか、投票日を事務所で迎えれることが出来たのだった。



その報せに、事務所の者たちは「幸先が良い!」と喜んだのは言うまでもない。



皆が、朝から投票の結果を意識してソワソワする中、アッシュをはじめカルロなどは浮かない顔をしていた。



それは、今のこの時になっても王都からエディの姿も、報せさえも届いていないからであった。



カルロなどは、ここのところ、いつエディが王都から戻っても良いように、部下と共に出迎えの準備をしていたのだが、それに報いるようなことは起きず、今日という日を迎えたのである。



まあ、選挙自体を勝利すれば、ケーシーたちに何を言われようと自分達には身に覚えがないと言い切り、その場を収めるつもりではいるのだが・・・



もし、選挙で負けた時は、ウラスらの不正を暴いて退かせる段取りでもあったが、それはエディが帰ってこない状況では使えない。



まして、思う証人が同行できないとかの事態も同じで、その時はもう、アッシュの勝利は消えたも同然だ。



そんな不安な中、時間は過ぎていく・・・



朝の時間が過ぎ、昼が過ぎた頃、選挙の中間発表がされることになった。



アッシュたちは、役場の方へ出向いて行く。



役場には、既に、ケーシー達が到着しており、アッシュが来るのを待っている様子だった。



アッシュが到着したのを見て、ウラスが「良く、この場に来れたな。不正などしておいて」とわざと聞こえるように声を上げた。



アッシュは、その言葉にカチンときて反射的に言い返そうとしたが、それをカルロに肩を掴まれて止められてしまう。



「やめろ、相手にするな。相手の狙い通りになるぞ」



カルロは小さな声でアッシュに囁いた。



カルロの言葉に、アッシュは周囲を見回し多くの人の目に気付く。



今、この場で、ウラスの挑発に乗れば、多くの人に自分の行動や言動が映る。



それは好意的なものばかりではなく、ここ最近の自分にある噂から悪意を持つものも出てくるだろう。



ウラスは、そこにまた上掛けで批判し、咎めてくるかもしれない。



アッシュは、カルロに決まり悪そうな顔を向けて「すみません」と謝った。



そんなアッシュの様子を、ウラスは、ニヤつきながら見ている。



しかし、息子ケーシーの方は苦い顔を浮かべていた。



「ケーシー候補、アッシュ候補がお揃いになりましたので、中間報告を行いたいと思います」



選挙を運営する者が、各投票場から齎された三枚の用紙を見定めてから



「発表します・・・どこの投票所も僅差ですが、総合して、現時点ではケーシー候補の優勢です」



選挙運営者の声に、人々から歓喜の声や何やら驚きから囁く声など漏れ出している。



「負けている・・・」



アッシュは、力をなくして肩を落とした。



「嘘だ・・」



そんな声と共に、ロビンまでもが目を見開き固まっている。



その二人の落胆ぶりに、他の事務所の者も言葉を無くして立ち竦む。



そんなアッシュたちを見て、ウラスが大きな声を上げて笑い出していた。



「あははは・・皆の気持ちが現れた結果だ。お前みたいな汚職したような人間は、「平民議員」になってほしくないんだよ!」



蔑むような目で、ウラスがアッシュを見つめてくる。



「アッシュ、何を気にしているんだ!これは中間発表だろうが!まだ、最終の結果がでたんじゃないぞ!」



ラドが、美しい顔に怒りを滲ませて、アッシュに向けて叱咤する。



「そうだ!これで決まった訳ではない!最後までまだわからない!」



カルロもラドに続けて、アッシュに向けて言い放つ。



だが、ウラスは尚もニヤニヤと笑い、アッシュを追い込んでくる。



「勝てるつもりか?今のお前が、本当になれると思っているのか?」



ウラスの攻撃に、ラドもカルロも、ロビンも怒りが込み上げてくるが、皆、手で拳を握るなどして、気持ちを紛らわせ我慢しようとしていた。



「なれるんじゃない。私はなるんだ!」



皆が黙って我慢を重ねている時、とうとう、本人であるアッシュがウラスに対して反撃を開始した。



「私は「平民議員」になって、この町がずっと苦しんでいた状況から切り離して見せる。ウラスさん、あなたがしてきた事、全部晒しけだしてやる!」



アッシュはウラスに向けて、珍しく大きな声を上げてみせた。



その声に、ウラスだけではなく、周りのほとんどの者が目を瞠る。



「な、何の事だ!」



ウラスもウラスで、アッシュの言葉に一瞬怯みかけたが、それを跳ね返す様に、声を張り上げて、アッシュから言われた言葉に対して言い返してきた。



「言ってみろ!このわしが何をしているというんだ!言え!」



ウラスは顔を真っ赤にして大きな声を出した。



その威圧で、アッシュを黙らせようとするかのように、更に大きな声で怒鳴り散らしだした。



「言えないのか!貴様と違って、私は何にも悪い事はしていない。やったことは、この町の為、「平民議員」としての立場を守る為、「平民議員」だから出来る事をしたまでだ!」



何が悪いんだ!と、最後は叫ぶようにウラスが言い放つ。



「「平民議員」だから出来る事って、何ですか?「平民議員」は特別なんですか?町で威張り、搾取する。それが「平民議員」の出来る事なんですか?」



だが、アッシュもウラスの威圧的な態度に屈せずに言い返してみせる。



「そもそも、「平民議員」って、町の為に、国の中央へ赴き、町の代表者として政治の場に携わるんじゃないんですか?」



ウラスの強い睨みにも怯むことなく、アッシュはウラスに疑問に感じていたことを問い掛けていく。



「だけど、あなたがしている事は、この町の為に行っている様には、私には見えない!」



「うるさい!貴様に何が解るんだ!」



アッシュに真っ直ぐな目を向けられて、ウラスが息を飲み、そして、大きな声で喚き出した。

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