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明転
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「ふー疲れたー」
今日の部活は特にハードだった。
もう空には星が輝く時間だ。
私は家の鍵を開けて中へ入る。
玄関の人感センサーが帰宅を感知して、足元からリビングまでの廊下を照らし出す。
「ただいまー」
私は部活のユニフォームや運動靴が入ったスポーツバッグをどさっと床へ放り投げ、片手で壁にもたれ掛かりながら靴を脱ぐ。
靴を揃えて玄関を上がり、風呂場への扉を開ける。
扉のすぐ正面、大口を開けたままになっている洗濯機が姿を見せる。
スポーツバッグから取り出した、汗まみれのユニフォームをそのまま洗濯機へと放り込む。
ついでに、靴の中で蒸れ、悪臭を放っているであろう靴下もその中へと投げ入れる。
可憐な女子高生としては、汗だくの体をシャワーで清めたりするべきなのだろうが、生憎私にはそんな女子力は無い。
私はそのままランドリールームを後にして、リビングへの扉を開ける。
真っ暗なリビングの電気を付け、そのまま流れるようにテレビのリモコンを確保し、ソファへと飛び込む。
ソファの手すりにクッションを乗せて枕がわりにすると、片手でテレビの電源を入れ、めぼしいチャンネルを探す。
するとリビングに隣接しているカウンターキッチンから、ハキハキとした声が飛んできた。
「ちょっと、帰って来たばっかでしょ。
テレビは宿題終わってからにしなさい。
ご飯までに終わらせるのよ。」
母だ。
夕食の準備をしながらこちらを覗き込んでいる。
「今日、宿題なーい。お腹空いた。」
大学受験を控えた進学校生なのだ。
宿題がないなんて事があるはずないのだが、不真面目な生徒代表として、今日は宿題はない気分だ。
母は学歴にさして興味がないため、そんな私の嘘を追求してくることはない。
留年せずに、高校さえ卒業してくれれば上出来と思っているのだ。
我ながら適当な母だと思う。
この母にして、この子ありだと。
キッチンからは蒸したじゃがいもの匂いが漂ってくる。
今日はコロッケだろうか、それともポテトサラダか。
優しい薫りに包まれつつ、私はソファで暖かい眠気に襲われた。
―――――――――――――――――――――
(解説)
主人公は部屋に入る時、真っ暗なリビングの電気を付けた。
リビングに併設されているカウンターキッチンに母が居たにも関わらず。
扉で区切られているわけではないカウンターキッチンで、母が電気を付けて料理をしていた。
それならば光がリビングに届いていたはずだ。
さらに、人感センサーで点灯する廊下の電気が消えていたのは分かるが、リビングは人感センサーとは考えにくい。
にも関わらず、電気が消えていた。
母はリビングの電気を付け、キッチンに行った後電気を付け、その後また戻ってリビングの電気を消したというのだろうか。
今日の部活は特にハードだった。
もう空には星が輝く時間だ。
私は家の鍵を開けて中へ入る。
玄関の人感センサーが帰宅を感知して、足元からリビングまでの廊下を照らし出す。
「ただいまー」
私は部活のユニフォームや運動靴が入ったスポーツバッグをどさっと床へ放り投げ、片手で壁にもたれ掛かりながら靴を脱ぐ。
靴を揃えて玄関を上がり、風呂場への扉を開ける。
扉のすぐ正面、大口を開けたままになっている洗濯機が姿を見せる。
スポーツバッグから取り出した、汗まみれのユニフォームをそのまま洗濯機へと放り込む。
ついでに、靴の中で蒸れ、悪臭を放っているであろう靴下もその中へと投げ入れる。
可憐な女子高生としては、汗だくの体をシャワーで清めたりするべきなのだろうが、生憎私にはそんな女子力は無い。
私はそのままランドリールームを後にして、リビングへの扉を開ける。
真っ暗なリビングの電気を付け、そのまま流れるようにテレビのリモコンを確保し、ソファへと飛び込む。
ソファの手すりにクッションを乗せて枕がわりにすると、片手でテレビの電源を入れ、めぼしいチャンネルを探す。
するとリビングに隣接しているカウンターキッチンから、ハキハキとした声が飛んできた。
「ちょっと、帰って来たばっかでしょ。
テレビは宿題終わってからにしなさい。
ご飯までに終わらせるのよ。」
母だ。
夕食の準備をしながらこちらを覗き込んでいる。
「今日、宿題なーい。お腹空いた。」
大学受験を控えた進学校生なのだ。
宿題がないなんて事があるはずないのだが、不真面目な生徒代表として、今日は宿題はない気分だ。
母は学歴にさして興味がないため、そんな私の嘘を追求してくることはない。
留年せずに、高校さえ卒業してくれれば上出来と思っているのだ。
我ながら適当な母だと思う。
この母にして、この子ありだと。
キッチンからは蒸したじゃがいもの匂いが漂ってくる。
今日はコロッケだろうか、それともポテトサラダか。
優しい薫りに包まれつつ、私はソファで暖かい眠気に襲われた。
―――――――――――――――――――――
(解説)
主人公は部屋に入る時、真っ暗なリビングの電気を付けた。
リビングに併設されているカウンターキッチンに母が居たにも関わらず。
扉で区切られているわけではないカウンターキッチンで、母が電気を付けて料理をしていた。
それならば光がリビングに届いていたはずだ。
さらに、人感センサーで点灯する廊下の電気が消えていたのは分かるが、リビングは人感センサーとは考えにくい。
にも関わらず、電気が消えていた。
母はリビングの電気を付け、キッチンに行った後電気を付け、その後また戻ってリビングの電気を消したというのだろうか。
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