転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy

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番外編 後日譚

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   ***

 やはりその周囲に、異状は窺えない。
 晴天の草原で、緑がぼやけ輝くばかり。
 その向こうで、敵の軍がゆっくり前進を再開した。
 すぐに転げ回る百名近い兵たちに近寄り、数名が進み出てそれらを脇へ押しのけた。数兵は剣で命を絶たれているか。
 間に空いた隙間を、整然と全軍が行進してくる。なおも続く弓矢の迎撃を、先頭の盾で受けきっている。

「続け! 敵をこれ以上前進させるな!」
「はっ!」
「全軍で迎え討て!」
「おお!」

 さらに数十名が、剣を構えて駆け出した。その後ろに、絶え間なく兵が続く。
 まだ砦内の全軍は半数も出てきていないが少しずつ補充がされ、このまま数百名は殺到できるはずだ。
 それが、また。
 先頭が敵まで五十ガターを切ったか、というところで。

「ぎゃあーーー!」
「うがあーーー!」

 次々と目鼻を押さえ倒れ伏していく。
 後ろから続く者も、同じ辺りまで達したところで同様の次第となる。
 目に見えない壁でもあるように、同じ付近で何か攻撃を受けたかという反応だ。
 壁――。

「何だ、あれは?」

 目を凝らして。先刻より距離が縮まったので、中隊長の目に認められるものがあった。
 倒れ伏す兵たちの前に、何か緑のものが散り漂っている。それを顔に浴びて、兵たちはもんどり打っているようだ。
 さらに続く兵が、倒れ伏す味方の間を縫うように前に出る。
 その顔前に、改めて緑のものが散り広がった。

「ぎゃあーーー!」
「うがあーーー!」

 たちまちその兵たちも、地に転がる。
 構わず、敵軍は前進を続ける。
 次々と殺到する兵たちが、同じくらいの距離の場所で倒れていく。
 敵の前進に合わせて、味方兵の倒伏場所もこちらに近づいてきた。
 それがやがて、跪く弓隊の位置まで達し。

「ぎゃあーーー!」
「痛えーーー!」

 さらに緑が散って、弓を持つ兵たちも昏倒していた。
 剣を持つ兵たちも次々倒れ、その位置がますますこちらの集結場所まで近づいてくる。
 近づいて、さらに明らかとなってきた。先頭の兵が駆け寄ると、その面前に突然、緑の粉状のものが出現する。次の瞬間、それが周囲に散り広がる。
 どうも目や鼻に刺激を与える粉のようで、兵は全員例外なくのた打つ結果となっている。
 粉の突然の出現は、訳が分からない。しかし次の散り広がりは、原因が察せられた。
 敵軍先頭で盾を持つ数名が、片手を差し伸べている。おそらく風魔法の加護を持つ者だろう。出現した粉を、兵たちの鼻先まで吹き散らしているのだ。
 少しでも状況が分かれば、対処のしようはある。
 中隊長は指示の声を上げた。

「もっと大勢で横に広がり、一斉にかかれ! 目を狙われているぞ、手で覆って防ぐのだ!」
「おお!」

 二百名を超える軍勢が横に広がり、敵軍を囲むべく半円状の形態をとり出した。
 敵の先頭まで、百ガターを切る。
 ますます味方の陣形が定まり、距離を縮めていく。
 ふと中隊長の目に、敵の変化が認められた。
 先刻も気づいたが、盾を並べたすぐ後ろに数台小ぶりの荷車らしきものがあるようだ。弓矢攻撃がなくなったと見て盾が引かれ、二台の荷車が見えてきた。それぞれに、全身金属の鎧を装備しているらしい小柄な人間が乗っている。
 味方の先頭が、囲みを縮める。
 その距離、五十ガター程度まで迫ったか。
 指示の通り兵たちは手で目を覆い、粉の出現に備えている。
 じりじりと迫り。
 次の瞬間。


   ***

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