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番外編 後日譚
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エテュアンも大きく頷き、話を続ける。
「そういうことであればなおさら、この作戦を用いた侵攻は早期に行うべきと存じます。砦まで情報が届いて準備されないうちに」
「そういうことになりそうだな」伯爵はゆっくり頷いた。「雪解け頃に向けて準備を進め、直前にはさらに情報の確認をせねばならないだろうが。それで問題なしと判断できれば、最大限オリアーヌ嬢の安全を図るという条件下で、許可しよう」
「オリアーヌ様には、ただ今全身を覆う金属製の鎧を作らせております。かなり重いものになりますがそれを着用の上、荷車のようなものに乗っていただいて進軍にお加わりいただく計画です。これで万が一の場合にも、流れ矢で負傷することも防げるものと考えます。それでなくとも進軍に合わせていただくためには乗り物が必要ですし、鎧で動きがとりにくくなるのはほぼこの計画の妨げにならないと存じます」
「なるほどな」
「その上で閣下、我が伯爵領軍からさらに数百名程度、この百名の進軍に少し遅れて追う形をとるのはいかがかと。万が一の場合数名はオリアーヌ様を連れてこの後続隊に逃げ込むようにしておけば、いっそう安全は担保できるかと思われます。また砦を奪うことに成功した暁には、その後の護りなどに人数が必要になります」
「うむ、もっともな話だな。よく吟味検討しよう」
「は」
エテュアンの説明に続くデフォルジュの提案に、伯爵は頷いた。
司令官と領主で、何度も頷き合っている。
そこへ、オリアーヌが声をかけた。
「もう一つ、なのですが。この進軍にはランベールも伴いたいと考えます。もう少し様子を見てのこととはなりますが」
「何? ランベール君はまだ七歳であろうが。戦に連れ出すには早すぎると思うぞ」
「春先には、八歳になります。加護を受けることのできる年齢ですね。お話ししたようにこのランベールには『豪火』の加護が得られると予想されています。もしその加護が得られれば、先ほどの炎の攻撃の際にふつうの火の加護の者よりも効率的、強力に引火が実現できると思われます」
「ううむ」
「効率だけではありません。何よりも領地を奪還するための戦なのですから、次期領主のランベールが圧倒的な加護の力を見せれば、敵味方の兵や領民たちへの印象は大きく決定づけられると考えます」
「なるほどな」
姉の隣で、ランベール本人も真剣な顔で頷いている。
すでに姉弟で話し合い、覚悟は定まっているのだ。
「しかしこれは、重大な決断だ。オリアーヌ嬢だけでも少数軍の先頭に立つなど本来ならとんでもない、狂気の沙汰と判ぜられるところだ。まだ幼い貴族後継者をそこに加えるなど、過去例がないわけではないかもしれぬが、まずあり得ようがない。十分な検証が必要であろう」
「はい、決断までにはまだ時間があります。春になって加護の結果を確かめ、その上で十分検討を重ねたいと思います」
「私は是非とも、進軍に加わりたいと思います。戦の場で、必ず姉を護る所存です」
「はは、頼もしいな、次期子爵殿は」
ランベールの幼い声の意思表明に、居並ぶ者たちの口元がほころんだ。
そうしてから伯爵は暫時黙考し、小柄な令嬢の乗馬服姿を見直した。
「しかし、まだまだこの作戦には検証が必要であろう。先ほどの方法で敵軍数百名程度を破ったとしても、砦の中にはまだ二千名を越える兵が残っていると考えられる。それらが続けて攻め出てきたら同じ要領で対処できるのかもしれぬが、そのまま籠城に転じられたら難儀することになろう。かの砦と防壁はすでに、こちら南に向けてかなり堅牢に築かれていると聞く。籠城に関しても遺漏はないと思われる」
「そう聞いています」
「では、どうするのだ」
「籠城は、させません」
「そういうことであればなおさら、この作戦を用いた侵攻は早期に行うべきと存じます。砦まで情報が届いて準備されないうちに」
「そういうことになりそうだな」伯爵はゆっくり頷いた。「雪解け頃に向けて準備を進め、直前にはさらに情報の確認をせねばならないだろうが。それで問題なしと判断できれば、最大限オリアーヌ嬢の安全を図るという条件下で、許可しよう」
「オリアーヌ様には、ただ今全身を覆う金属製の鎧を作らせております。かなり重いものになりますがそれを着用の上、荷車のようなものに乗っていただいて進軍にお加わりいただく計画です。これで万が一の場合にも、流れ矢で負傷することも防げるものと考えます。それでなくとも進軍に合わせていただくためには乗り物が必要ですし、鎧で動きがとりにくくなるのはほぼこの計画の妨げにならないと存じます」
「なるほどな」
「その上で閣下、我が伯爵領軍からさらに数百名程度、この百名の進軍に少し遅れて追う形をとるのはいかがかと。万が一の場合数名はオリアーヌ様を連れてこの後続隊に逃げ込むようにしておけば、いっそう安全は担保できるかと思われます。また砦を奪うことに成功した暁には、その後の護りなどに人数が必要になります」
「うむ、もっともな話だな。よく吟味検討しよう」
「は」
エテュアンの説明に続くデフォルジュの提案に、伯爵は頷いた。
司令官と領主で、何度も頷き合っている。
そこへ、オリアーヌが声をかけた。
「もう一つ、なのですが。この進軍にはランベールも伴いたいと考えます。もう少し様子を見てのこととはなりますが」
「何? ランベール君はまだ七歳であろうが。戦に連れ出すには早すぎると思うぞ」
「春先には、八歳になります。加護を受けることのできる年齢ですね。お話ししたようにこのランベールには『豪火』の加護が得られると予想されています。もしその加護が得られれば、先ほどの炎の攻撃の際にふつうの火の加護の者よりも効率的、強力に引火が実現できると思われます」
「ううむ」
「効率だけではありません。何よりも領地を奪還するための戦なのですから、次期領主のランベールが圧倒的な加護の力を見せれば、敵味方の兵や領民たちへの印象は大きく決定づけられると考えます」
「なるほどな」
姉の隣で、ランベール本人も真剣な顔で頷いている。
すでに姉弟で話し合い、覚悟は定まっているのだ。
「しかしこれは、重大な決断だ。オリアーヌ嬢だけでも少数軍の先頭に立つなど本来ならとんでもない、狂気の沙汰と判ぜられるところだ。まだ幼い貴族後継者をそこに加えるなど、過去例がないわけではないかもしれぬが、まずあり得ようがない。十分な検証が必要であろう」
「はい、決断までにはまだ時間があります。春になって加護の結果を確かめ、その上で十分検討を重ねたいと思います」
「私は是非とも、進軍に加わりたいと思います。戦の場で、必ず姉を護る所存です」
「はは、頼もしいな、次期子爵殿は」
ランベールの幼い声の意思表明に、居並ぶ者たちの口元がほころんだ。
そうしてから伯爵は暫時黙考し、小柄な令嬢の乗馬服姿を見直した。
「しかし、まだまだこの作戦には検証が必要であろう。先ほどの方法で敵軍数百名程度を破ったとしても、砦の中にはまだ二千名を越える兵が残っていると考えられる。それらが続けて攻め出てきたら同じ要領で対処できるのかもしれぬが、そのまま籠城に転じられたら難儀することになろう。かの砦と防壁はすでに、こちら南に向けてかなり堅牢に築かれていると聞く。籠城に関しても遺漏はないと思われる」
「そう聞いています」
「では、どうするのだ」
「籠城は、させません」
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