9 / 23
9 鑑定した 1
しおりを挟む
そもそもこんな姿で人の前に出て、まともに相手してもらえるとは思えない。戦車装甲車とか模型とか知らない文化だとしたら、魔物か化け物か、と攻撃される羽目になっても不思議ない。
しかし一方でこんな森の中、あの三人の他に人間と出逢える可能性は限りなく小さい気がする。
これが夢として醒めるのでないとしたら、そしてあたしがこの先何らかの行動を続ける気になるとしたら、人間を見ることができる状況は残していた方がよさそうだ。
としたら、彼らに見つからないように、しかし見失わないように、という距離感を保つべきか。
向こうでは、三人の会話が続いている。あの獣の死因の検討や後始末の相談、といったところか。
――それにしても、あの獣はどんなものなんだろう。あの三人は何者なんだろう。人間、ということでまちがいないよね?
そんなことを思っていると。
突然、視界に妙なものが生まれた。
青髪ローブの男の横に、まるで映画の字幕か何かみたいに。
【人間。男】
という文字が。紛れもなく、漢字で。
――へ?
心中思わず、素っ頓狂な声を上げてしまう。実際に音声にならないのが、幸いだ。
――これは何だ、異世界もの定番の、『鑑定』ってやつか?
いわゆる魔法とかスキルみたいな類いの『鑑定』としては、情報がかなりショボいけど。とにかくも、最低限の疑問には答えてくれている。
傍の他の二人に目を移すと、同様に字幕が浮かんだ。
【人間。男】
【人間。男】
まあ、驚きはない。
しかしそうするとこっちはどうだ、と獣の死骸らしきものを注視する。
【大王熊と呼ばれる魔獣。この森の中の動物では最強。今は絶命】
うん本当に、最小限ながら必要な情報が得られるみたいだ。
ラノベに頻出とは言え「魔獣」という見慣れない単語があるけど、意味の調べようがない。ラノベによくある設定準拠でいいんだろうか。たぶんふつうの動物より強いとか凶暴だとかということなんだろうとおもう。
ついでに試しに、周囲の木や草にも試してみると。
それぞれ見たこともない種類名が出た後、【雑草、毒ではないが食用に適さない】などという説明がつく。
おそらくのところほぼ何の役にも立たないので、ふだんはこんな字幕が浮かばない設定になっているんだろう。
とにかくもまあ、やろうと思えば最小限の情報が得られるということらしい。
何というか、夢の中の設定にしては不思議仕様なのに妙に現実的、という感じがしてしまう。
相変わらず、夢なのか現実異世界なのか、決定打に乏しいというか。
ここまで分かったところでも、方針は変わらない。あの男たちとは適度な距離を保つべき、と思う。
――しばらくは、様子見かな。
潜望鏡を下ろし、あたしは向こうの音声で気配を探りながら一度落ち着くことにした。
まだ、夢は醒めない。
万々々々が一の場合への検討を進めておくべきか、と思う。
もしこのままが続くとしたら、あたしはどう行動すべきか。
考えるうち。
不意に、視界の隅に光るものが現れた。
何やら人工的なバーというか、ゲージというか、青い小さな長方形。それがいきなり長さを縮め、赤く点滅を始める。
それは何とも、現実に見えているものではなくただ何処かから視界に加えられているという感覚で。
いかにも非現実的な物体というか何というか、なのだけど。
見覚えというか、似たようなものの心当たりが、ある。
スマホとかに必ずある、充電残量を示すメーターだ。
赤の点滅と言えば疑いの余地なく、残量低下、充電を行ってください、のお知らせだろう。
何というか一気に、背筋に冷たいものが走る。
しかし一方でこんな森の中、あの三人の他に人間と出逢える可能性は限りなく小さい気がする。
これが夢として醒めるのでないとしたら、そしてあたしがこの先何らかの行動を続ける気になるとしたら、人間を見ることができる状況は残していた方がよさそうだ。
としたら、彼らに見つからないように、しかし見失わないように、という距離感を保つべきか。
向こうでは、三人の会話が続いている。あの獣の死因の検討や後始末の相談、といったところか。
――それにしても、あの獣はどんなものなんだろう。あの三人は何者なんだろう。人間、ということでまちがいないよね?
そんなことを思っていると。
突然、視界に妙なものが生まれた。
青髪ローブの男の横に、まるで映画の字幕か何かみたいに。
【人間。男】
という文字が。紛れもなく、漢字で。
――へ?
心中思わず、素っ頓狂な声を上げてしまう。実際に音声にならないのが、幸いだ。
――これは何だ、異世界もの定番の、『鑑定』ってやつか?
いわゆる魔法とかスキルみたいな類いの『鑑定』としては、情報がかなりショボいけど。とにかくも、最低限の疑問には答えてくれている。
傍の他の二人に目を移すと、同様に字幕が浮かんだ。
【人間。男】
【人間。男】
まあ、驚きはない。
しかしそうするとこっちはどうだ、と獣の死骸らしきものを注視する。
【大王熊と呼ばれる魔獣。この森の中の動物では最強。今は絶命】
うん本当に、最小限ながら必要な情報が得られるみたいだ。
ラノベに頻出とは言え「魔獣」という見慣れない単語があるけど、意味の調べようがない。ラノベによくある設定準拠でいいんだろうか。たぶんふつうの動物より強いとか凶暴だとかということなんだろうとおもう。
ついでに試しに、周囲の木や草にも試してみると。
それぞれ見たこともない種類名が出た後、【雑草、毒ではないが食用に適さない】などという説明がつく。
おそらくのところほぼ何の役にも立たないので、ふだんはこんな字幕が浮かばない設定になっているんだろう。
とにかくもまあ、やろうと思えば最小限の情報が得られるということらしい。
何というか、夢の中の設定にしては不思議仕様なのに妙に現実的、という感じがしてしまう。
相変わらず、夢なのか現実異世界なのか、決定打に乏しいというか。
ここまで分かったところでも、方針は変わらない。あの男たちとは適度な距離を保つべき、と思う。
――しばらくは、様子見かな。
潜望鏡を下ろし、あたしは向こうの音声で気配を探りながら一度落ち着くことにした。
まだ、夢は醒めない。
万々々々が一の場合への検討を進めておくべきか、と思う。
もしこのままが続くとしたら、あたしはどう行動すべきか。
考えるうち。
不意に、視界の隅に光るものが現れた。
何やら人工的なバーというか、ゲージというか、青い小さな長方形。それがいきなり長さを縮め、赤く点滅を始める。
それは何とも、現実に見えているものではなくただ何処かから視界に加えられているという感覚で。
いかにも非現実的な物体というか何というか、なのだけど。
見覚えというか、似たようなものの心当たりが、ある。
スマホとかに必ずある、充電残量を示すメーターだ。
赤の点滅と言えば疑いの余地なく、残量低下、充電を行ってください、のお知らせだろう。
何というか一気に、背筋に冷たいものが走る。
0
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる