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『ですねえ。あなたがそういう目に触れたくないという思いでしたら、そのように協力しますよ。ただ手前勝手でずるいと思われるかもしれませんが、私にだけは見せてもらって、それなりの判断をさせてもらえばと』
『……あんた、科学者だと言ったな』
『ええ。ですので、そうした好奇心を抑えられないというのは認めます。しかし恩に報いたいというのも本心で、他の者からの見られ方については、最大限あなたの意思を尊重します』
『まあ、確かに。あんたにだけは見てもらわないと、判断の下しようはないか』
『そう思いますよ』
初対面の人物をそんな簡単に信用していいものか、迷うところだけどね。
さっきからのこの不思議空間での会話、何とも表現しにくいんだけど、相手のこのエトヴィンという男が嘘をついていないということが、感じとれる気がするんだ。
予想の通りならここはエトヴィンの夢の中、あたしはある種テレパシーのようなものでそこに侵入している、と思われる。そんな事情でエトヴィンは嘘をつかない、ついたとしたらそれを感じとれる、という感覚なんだと思う。事実の保障は何処にもないんだけど。
それでも、少しは慎重に考慮することにする。
『とりあえずそこは、少し考えさせてほしい』
『そうですか』
『その前にお願いしたいんだが。言ったように私は、この世界のことが何も分からない。その辺、教えてもらえないだろうか』
『ああ、いいですよ。王宮の機密事項以外でしたら』
『助かる』
快く了承してくれたエトヴィンの説明によると。
この国の名は、オイレンベルク王国。現国王の名はマインラート・レーヴェレンツ。六代前の国王がそれまでの王家を攻め滅ぼし、今の地位に就いた。その後百五十年余り、現在の王家が続いている。
オイレンベルク王国は大陸の中央から少し西寄りに位置し、南は海に接する。北、東、西は山地などを挟んでそれぞれ他国と境界を持っている。
大陸にある主要七カ国のうち、国土面積、人口、国力など、ほぼ中頃の存在だ。
国内は今の王家成立前からの有力者と、政変時に新王家に協力して爵位を得た者など、二十数名の貴族が領地を分け合っている。王家が国内全土を有し領主に統治を任せている建前だが、各領の自治はそこそこ強いようだ。
爵位は高位から順に、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。王家の血筋を引く公爵家が三家あり、残りは子爵以上が領地を持つ。男爵と一部子爵は領地を持たず王宮で職位を得るか、侯爵家などの家臣となっている。
なおエトヴィンは今いるハインケス大森林の東に領地を持つラングハンス伯爵家の三男で、24歳だという。
『伯爵家子息――貴族だったのか』
『家を継ぐ可能性はほぼなく、王宮勤めが本職です』
『そうすると貴族でもない身として、敬意をもって接する必要があるんだろうな』
『あなたは命の恩人ですし、このような夢の中でしか話すことができないというのでしょう?』
『ああ。ふだんは見ることと聞くことができるが、話すことはできない』
『でしたら、この場では今のままで構いませんよ。その方が話しやすいのでしょう?』
『ああ、助かる。この国での畏まった話し方などは知らないし』
『話しやすいようにしてください』
正直、言語は自動翻訳されている感触で、日本語で敬語を使えばそれなりの敬意を表す話し方になりそうな気はする。これまでの仕事柄、敬語を使うことだけなら不得意ではない。
ただ問題は、丁寧な話し方をすると女言葉に近くなりそうなことなんだ。自動翻訳でその辺がどうなるものか、保証の限りじゃないわけで。
さっきも考えた事情で、あまり女っぽさを出したくない、という気がする。
本当にこうした夢の中に限られるということなら、本人が許すなら甘えておいていいだろうと思う。少なくとも現状こんな見てくれの存在で、外でうっかり話し方や態度をまちがって誰かに咎められる、などという要素も考えられないし。
『……あんた、科学者だと言ったな』
『ええ。ですので、そうした好奇心を抑えられないというのは認めます。しかし恩に報いたいというのも本心で、他の者からの見られ方については、最大限あなたの意思を尊重します』
『まあ、確かに。あんたにだけは見てもらわないと、判断の下しようはないか』
『そう思いますよ』
初対面の人物をそんな簡単に信用していいものか、迷うところだけどね。
さっきからのこの不思議空間での会話、何とも表現しにくいんだけど、相手のこのエトヴィンという男が嘘をついていないということが、感じとれる気がするんだ。
予想の通りならここはエトヴィンの夢の中、あたしはある種テレパシーのようなものでそこに侵入している、と思われる。そんな事情でエトヴィンは嘘をつかない、ついたとしたらそれを感じとれる、という感覚なんだと思う。事実の保障は何処にもないんだけど。
それでも、少しは慎重に考慮することにする。
『とりあえずそこは、少し考えさせてほしい』
『そうですか』
『その前にお願いしたいんだが。言ったように私は、この世界のことが何も分からない。その辺、教えてもらえないだろうか』
『ああ、いいですよ。王宮の機密事項以外でしたら』
『助かる』
快く了承してくれたエトヴィンの説明によると。
この国の名は、オイレンベルク王国。現国王の名はマインラート・レーヴェレンツ。六代前の国王がそれまでの王家を攻め滅ぼし、今の地位に就いた。その後百五十年余り、現在の王家が続いている。
オイレンベルク王国は大陸の中央から少し西寄りに位置し、南は海に接する。北、東、西は山地などを挟んでそれぞれ他国と境界を持っている。
大陸にある主要七カ国のうち、国土面積、人口、国力など、ほぼ中頃の存在だ。
国内は今の王家成立前からの有力者と、政変時に新王家に協力して爵位を得た者など、二十数名の貴族が領地を分け合っている。王家が国内全土を有し領主に統治を任せている建前だが、各領の自治はそこそこ強いようだ。
爵位は高位から順に、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。王家の血筋を引く公爵家が三家あり、残りは子爵以上が領地を持つ。男爵と一部子爵は領地を持たず王宮で職位を得るか、侯爵家などの家臣となっている。
なおエトヴィンは今いるハインケス大森林の東に領地を持つラングハンス伯爵家の三男で、24歳だという。
『伯爵家子息――貴族だったのか』
『家を継ぐ可能性はほぼなく、王宮勤めが本職です』
『そうすると貴族でもない身として、敬意をもって接する必要があるんだろうな』
『あなたは命の恩人ですし、このような夢の中でしか話すことができないというのでしょう?』
『ああ。ふだんは見ることと聞くことができるが、話すことはできない』
『でしたら、この場では今のままで構いませんよ。その方が話しやすいのでしょう?』
『ああ、助かる。この国での畏まった話し方などは知らないし』
『話しやすいようにしてください』
正直、言語は自動翻訳されている感触で、日本語で敬語を使えばそれなりの敬意を表す話し方になりそうな気はする。これまでの仕事柄、敬語を使うことだけなら不得意ではない。
ただ問題は、丁寧な話し方をすると女言葉に近くなりそうなことなんだ。自動翻訳でその辺がどうなるものか、保証の限りじゃないわけで。
さっきも考えた事情で、あまり女っぽさを出したくない、という気がする。
本当にこうした夢の中に限られるということなら、本人が許すなら甘えておいていいだろうと思う。少なくとも現状こんな見てくれの存在で、外でうっかり話し方や態度をまちがって誰かに咎められる、などという要素も考えられないし。
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