チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

文字の大きさ
17 / 122

17 説明された 1

しおりを挟む
『この森は、あんたの実家の領地内になるのか』
『西側のキュンツェル伯爵領と分け合っている格好ですね。森の中で境界がはっきりしているわけではないが』
『ここへは、薬草採取に来たと』
『そうです』

 エトヴィンは、ある高貴な子息に勉強と魔法の使い方を教える家庭教師をしている。
 その子息が命に関わる奇病にかかり、その治療にこの森にしか生息しない白夢草しろゆめくさという薬草が必要なのだという。
 たいへんな話だけど。それにしても。

――この世界、魔法が存在するのか。まあ異世界としちゃ定番だけどさ。

『私がこれまで生きていた世界には魔法というものがなかったので、どんなものか想像がつかないんだが』
『そうなのですか』

 ということで説明をもらったところ。
 この大陸の中の国では皆共通で、人間の約半数が魔法を使える。
 生まれつき『火』『水』『風』『土』という四属性のうち一~二種を適性として持ち、操ることができる。二属性持ちは比較的貴族に多い。
 名前の通り、『火』属性魔法ならば目の前に火を生み出せる。たいていは人の拳程度の大きさの火球を、石を投げるような感覚で飛ばすことができる。
『水』属性ならば人の拳二つ程度の大きさの水球を生み、飛ばすことができる。
『風』の場合は目に見えないので分かりにくいが、同様に人の拳二つ程度の大きさの風を生み、飛ばすことができる。
『土』属性は少し異なって、目の前の地面から桶一つ分程度の土を掘り、脇に除けることができる。
 当然ながら『火』はまきに火を点けるのに重宝するし、『水』は飲めるので生活用水に使える。
 ただどれも手元に生み出して保持するのは十数えるくらいの間が限界なので、例えば『火』を照明として使うのは現実的でない。
 飛ばす速度も距離も本当に石を投げる程度で、『火』や『水』にしても人や魔獣相手の戦闘で使えるとはいえ強力な武器にはならず、一瞬の脅かし程度だ。実際に石などを投擲する方が、効果は高いと言える。『風』や『土』はほぼそうした役に立たない。
 どの属性魔法も連続して使用できるが、たいてい二~三十回続けると魔力切れを起こして動けなくなる。魔力は空気中の『魔素』を身体に取り入れるもので、場所にもよるが数時間休息すれば回復する。
 どれも貴族なら多少強力に使えるという傾向はあるが、飛び抜けて強い魔法というものの話は聞いたことがない。

――ラノベなんかで見る、生活魔法という感じかな。

『わたしは〈水〉と〈風〉の適性があるのですが、まあ〈水〉はこうした野外活動での飲料水として役に立ちますね。今のような三人程度の分なら、すぐに用意できます』
『そういうことになりそうだな』
『護衛の二人が〈火〉属性だから、焚き火にも困りませんね』
『つまり〈火〉と〈水〉はそういうふうに役に立つ、と。〈風〉は――』
『自分のことではありますが、ほぼ役立たずの属性ということになっています。その辺の埃を払うのがせいぜいで、何か獣とかを吹き飛ばせる力があるわけではない。暑い日に人に向けてぶつけてやれば多少涼しく感じますが、ずっと続けられるものでなし、何かで扇いだ方が現実的です』
『ふうん。〈土〉は穴を掘るのに便利という感じか』

 これが最もラノベ定番とは異なる点で、土で壁や柱などを作るということができるわけではないようだ。
 もう単純に、桶一杯程度の分土を掘ることができる、それだけらしい。

『土を掘るのに便利で、まちがいなく農民にとってありがたい属性でしょうね。ただ畑を耕すのに使えるとは言っても、桶一杯分を二~三十回というのでは、現実の農作業にはまったく足りない。実際にはやはりくわなどで耕して、面倒な箇所だけ魔法を使う、ということになるようです』
『なるほど。まあ、ないよりはあったほうがいい、という感じか』
『一般にそういう常識ですね』
『エトヴィンさんは魔法を教えていると言ったね。初めて使うときは教えてもらわないと難しい?』
『いや、ふつうは子どもの頃から自然と使えるようになって、成人する頃には安定しているものです。私の生徒の場合〈火〉魔法が多少他より強力なので、その制御のようなものを指導しているわけです。私は王宮で魔法について研究しているもので』
『なるほど』

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜

naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。 ※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。 素材利用 ・森の奥の隠里様 ・みにくる様

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

指令を受けた末っ子は望外の活躍をしてしまう?

秋野 木星
ファンタジー
隣国の貴族学院へ使命を帯びて留学することになったトティ。入国しようとした船上で拾い物をする。それがトティの人生を大きく変えていく。 ※「飯屋の娘は魔法を使いたくない?」のよもやま話のリクエストをよくいただくので、主人公や年代を変えスピンオフの話を書くことにしました。 ※ この作品は、小説家になろうからの転記掲載です。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

処理中です...