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『もしそうだとすると――まったく根拠のない推論なんですけどね――もしハル殿がそのように魔素を利用して動いているのだとすると、その利用範囲を広げて魔法が使えても不思議ではないと思います』
『そうだろうか』
『ぜひ確かめてみたいですね、魔法研究者として、大いに興味があります』
『夜が明けてから、確かめてみることにするか。しかしこの夢らしいものから抜けてしまうと、おそらくあんたと言葉のやりとりはできなくなると思う。その辺は不自由だな』
『そうですねえ』
『それでも何とか、身振りだけでも通じるようにしたいな。言葉が通じるかは分からないが、あんたは何とか話しかけてみてくれ。こちらは上の窓から棒のようなものを出して動かすことならできる。それを縦に振ったら〈はい〉という肯定の返事、横に振ったら〈いいえ〉の否定、ということにしよう』
『分かりました』
『もう一つくらいはあってもいいかな。それを斜めに傾けて止めたら疑問、理解できない、という意味にしよう』
『はい。ああ、私はこの後の夜中、護衛に起こしてもらって二アーダ(時間)ほど見張り番をすることになっています。そのときにいろいろ試してみませんか』
『なるほど、分かった』
夜間の見張りを護衛三時間、エトヴィン二時間、もう一人の護衛三時間、と交代で担当しているらしい。だいたいの時間を砂時計で計るという。
なお今のエトヴィンの発言で、『アーダ』という音が聞こえて同時にあたしの頭に『時間』という意味が浮かんだ。こちらで使われている名称ととほぼ完全に一致する日本語があれば、このように伝わるのか。
さっきの『ムマ』という動物名は日本語に一致するものがないので、音だけで伝わってきたのではないだろうか、と思う。
『ああそれで先のことをお伝えすると、我々は夜明け頃に起床して朝食をとり、また森の奥へ進む予定にしているのです』
『その、薬草探しか。まだ日数がかかる予定なのだろうか』
『予想される生息地まで、あと三日ほどはかかる予定なのです。先ほど、ハル殿を希望する地までお送りすると言いましたが――』
『ああ、もちろんその当初の目的を最優先してもらって構わない』
『恐縮です。ハル殿にはこの辺りで我々の帰還をお待ちいただいても、同行してくださっても構わないのですが』
『邪魔にならないようなら同行の線で考えたいのだが、少しその辺は可能なものか確かめてからだな』
別にこれからの目的も何もないのだから、本来なら同行でも待機でも構わないんだけどね。
森の中の道行きや、おそらく困難を伴うのだろう薬草採取というものに興味惹かれるものがあるので、できるなら見学してみたい。ただこの人たちの面倒を増やすのは本意ではないので、進行を遅らせない程度にこちらも移動できるかという条件の下、ということになる。
もう一つ理由として、せっかくこの人と夢の中限定にせよ意思を通じることができた。おそらく相手が睡眠をとっている間だけと思われるし、この後目が覚めてその次の睡眠でも同じことが可能なのか分からないんだけど、できれば今夜だけで終わらせずに今後もこの世界の情報収集に協力願いたいと思うんだ。そのためには、このまま同行させてもらう必要がある。
『ところでエトヴィンさんはこうして話していて疲れるとか、寝不足になるとかはないのかな』
「初めての経験なので正確には分かりませんが、何となく肉体の方はしっかり眠って休んでいる感覚ですね。あくまで、夢を見ているだけのようです。たぶん何アーダ(時間)こうしていても、寝不足ということにはならないのではないでしょうか』
『そうか。明朝からも体力を使うのだろうから、気をつけて』
その後はまた、この世界の基礎知識を教えてもらった。
時間の単位はさっきも出た『アーダ』。一日は24アーダで、時刻も同じ1アーダ~24アーダで呼ぶ。分に当たる『ミーダ』という単位もあり、当然60ミーダが1アーダになる。秒は『ミン』で、60ミンが1ミーダ。
この辺は日時計で時間を計ることから始めると一日を12か24で分けるのが自然で、偶然地球と一致していても不思議ではないのか。よく分からないけど。
一年は三百六十六日。これを四つの季に分けている。季の名前は何か神の名によるらしく音は長ったらしくて覚えられそうにないけど、自動翻訳で『冬』『春』『夏』『秋』と変換されたので、それで問題ないんだろう。
さらに『冬』の92日分を31日、30日、31日に分け、『冬の一の月』『冬の二の月』『冬の三の月』と呼ぶ。以下同様に31日の月と30日の日が交互に並び、『春の一の月』から『秋の三の月』まで続く。
月の中では『冬の一の月の1日』~『冬の一の月の31日』のように日付を呼ぶ。曜日のような名称はない。
なお『冬の二の月の1日』が最も昼が短い日、つまり地球で言うところの冬至で、これを一年の始まりの日としている。同様に『春の二の月の1日』が春分、『夏の二の月の1日』が夏至、『秋の二の月の1日』が秋分になるようだ。
なお今は春先、夜が明けると『春の二の月の14日』になるという。
『そうだろうか』
『ぜひ確かめてみたいですね、魔法研究者として、大いに興味があります』
『夜が明けてから、確かめてみることにするか。しかしこの夢らしいものから抜けてしまうと、おそらくあんたと言葉のやりとりはできなくなると思う。その辺は不自由だな』
『そうですねえ』
『それでも何とか、身振りだけでも通じるようにしたいな。言葉が通じるかは分からないが、あんたは何とか話しかけてみてくれ。こちらは上の窓から棒のようなものを出して動かすことならできる。それを縦に振ったら〈はい〉という肯定の返事、横に振ったら〈いいえ〉の否定、ということにしよう』
『分かりました』
『もう一つくらいはあってもいいかな。それを斜めに傾けて止めたら疑問、理解できない、という意味にしよう』
『はい。ああ、私はこの後の夜中、護衛に起こしてもらって二アーダ(時間)ほど見張り番をすることになっています。そのときにいろいろ試してみませんか』
『なるほど、分かった』
夜間の見張りを護衛三時間、エトヴィン二時間、もう一人の護衛三時間、と交代で担当しているらしい。だいたいの時間を砂時計で計るという。
なお今のエトヴィンの発言で、『アーダ』という音が聞こえて同時にあたしの頭に『時間』という意味が浮かんだ。こちらで使われている名称ととほぼ完全に一致する日本語があれば、このように伝わるのか。
さっきの『ムマ』という動物名は日本語に一致するものがないので、音だけで伝わってきたのではないだろうか、と思う。
『ああそれで先のことをお伝えすると、我々は夜明け頃に起床して朝食をとり、また森の奥へ進む予定にしているのです』
『その、薬草探しか。まだ日数がかかる予定なのだろうか』
『予想される生息地まで、あと三日ほどはかかる予定なのです。先ほど、ハル殿を希望する地までお送りすると言いましたが――』
『ああ、もちろんその当初の目的を最優先してもらって構わない』
『恐縮です。ハル殿にはこの辺りで我々の帰還をお待ちいただいても、同行してくださっても構わないのですが』
『邪魔にならないようなら同行の線で考えたいのだが、少しその辺は可能なものか確かめてからだな』
別にこれからの目的も何もないのだから、本来なら同行でも待機でも構わないんだけどね。
森の中の道行きや、おそらく困難を伴うのだろう薬草採取というものに興味惹かれるものがあるので、できるなら見学してみたい。ただこの人たちの面倒を増やすのは本意ではないので、進行を遅らせない程度にこちらも移動できるかという条件の下、ということになる。
もう一つ理由として、せっかくこの人と夢の中限定にせよ意思を通じることができた。おそらく相手が睡眠をとっている間だけと思われるし、この後目が覚めてその次の睡眠でも同じことが可能なのか分からないんだけど、できれば今夜だけで終わらせずに今後もこの世界の情報収集に協力願いたいと思うんだ。そのためには、このまま同行させてもらう必要がある。
『ところでエトヴィンさんはこうして話していて疲れるとか、寝不足になるとかはないのかな』
「初めての経験なので正確には分かりませんが、何となく肉体の方はしっかり眠って休んでいる感覚ですね。あくまで、夢を見ているだけのようです。たぶん何アーダ(時間)こうしていても、寝不足ということにはならないのではないでしょうか』
『そうか。明朝からも体力を使うのだろうから、気をつけて』
その後はまた、この世界の基礎知識を教えてもらった。
時間の単位はさっきも出た『アーダ』。一日は24アーダで、時刻も同じ1アーダ~24アーダで呼ぶ。分に当たる『ミーダ』という単位もあり、当然60ミーダが1アーダになる。秒は『ミン』で、60ミンが1ミーダ。
この辺は日時計で時間を計ることから始めると一日を12か24で分けるのが自然で、偶然地球と一致していても不思議ではないのか。よく分からないけど。
一年は三百六十六日。これを四つの季に分けている。季の名前は何か神の名によるらしく音は長ったらしくて覚えられそうにないけど、自動翻訳で『冬』『春』『夏』『秋』と変換されたので、それで問題ないんだろう。
さらに『冬』の92日分を31日、30日、31日に分け、『冬の一の月』『冬の二の月』『冬の三の月』と呼ぶ。以下同様に31日の月と30日の日が交互に並び、『春の一の月』から『秋の三の月』まで続く。
月の中では『冬の一の月の1日』~『冬の一の月の31日』のように日付を呼ぶ。曜日のような名称はない。
なお『冬の二の月の1日』が最も昼が短い日、つまり地球で言うところの冬至で、これを一年の始まりの日としている。同様に『春の二の月の1日』が春分、『夏の二の月の1日』が夏至、『秋の二の月の1日』が秋分になるようだ。
なお今は春先、夜が明けると『春の二の月の14日』になるという。
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