チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

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 あと長さの単位は、正確に一致ではないのかもしれないけど、およそメートルに一致する単位が『ガター』、ミリメートルらしいのが『ミター』と呼ばれる。つまり千ミターが一ガターになる。
 この辺は本当にガター=メートルという保証はないんだけど、まあだいたいということで納得しておく。とにかく自分のサイズが以前と変わっているのだから、正確に一致する必要も少ない気がするし。
 そう考えていると、その後の自動翻訳で『ガター(メートル)』と頭に浮かぶようになった。何この、御都合仕様。
 そんな説明を聞いているうち、エトヴィンの声が乱れ、周囲のぼんやりした薄闇がさらにぼやけてきた。

『あ、起こしに来られたようです。この会話は終了ですね』
『了解』

 そのまま、ぼんやりの世界は消滅した。
 あたしの周囲は元のように、闇に包まれた焚き火の近く、というものに戻る。少し離れて横になっていたエトヴィンが身を起こすところだ。
 時刻を確かめると、23時を過ぎたところだ。
 見張り番を終えた緑騎士が、空いた場所に寝そべる。
 エトヴィンは周囲を見回してからちらりとあたしを見て、焚き火から少し離れた平らっぽい石に腰を下ろした。護衛たちを起こさないように、距離をとるようだ。
 その護衛たちの寝静まりを確認して、やおらあたしは動き出した。小石のでこぼこが多い地面を、キャタピラで踏みしめ移動する。
 近づくと、エトヴィンが目を瞠っているのが分かった。その足元まで進み、停まる。

「本当に、動けるのですね」

 焚き火方向を気にする様子ながらもはっきり音声として発した言葉は、意外なことに意味が聞きとれた。
 もしかしてさっき夢の中で会話したことで、言語認識の回路が通じたとかなんだろうか。さっき使った単語を覚えたという感覚でなく、言語全体を理解して聞きとれるという手応えがある。
 一方で試みてみても、さっきのようなテレパシーみたいな会話はできない。やはり夢の中限定みたいだ。
 仕方なくあたしはマジックハンドを出して上に立て、一度縦に動かした。頷きの動作だ。

「おお、目が覚めてもこちらの言葉は理解できますか」
 頷く。
「失礼ですが、その動く車輪部分を見せてもらうことはできますか。好奇心が抑えられません」
 頷く。

 そっと手を伸ばして、科学者は金属模型を抱え上げた。
 目の高さに持ち上げられたところでキャタピラを動かしてみせると、その口から抑えた驚嘆の声が漏れた。

「何と、こう動くのですか」

 それからしばらく、全身をひねくり回して好奇の観察を受けることになった。
 それこそ元女性の身として耐えがたいものはあるんだけど、もうそんなことを言ってはいられない。ここでこの科学者貴族を味方につけておく価値は大いにあると思われるんだ。
 水中で活動する都合だろう、マジックハンドを突き出した上窓はその支柱をきっちり包んで閉じている。外部の観察はできても中を覗いたり分解を試みたりは難しいはずだ。

「なるほど」ややしばらくして、エトヴィンは深く息をついた。「あなたが不可思議な存在だということは、理解しました。確かに外から何の力も借りずに動くことができているようだ。まちがいなくこの世で、そんな不思議な力は魔法の作用しか思い当たりません」

 そうして、あたしをそっと地面に下ろす。

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