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その後も直接遭遇するのは兎か鼠程度で、午過ぎまで大きな戦闘をすることなく森の中を進んだ。
林を抜けて小さな草地に入るところで『鑑定』の報せがあり、あたしはエトヴィンの前にハンドを伸ばした。
「え、何ですか?」
足を止める男の前から、左手に向けて指し示す。
高い木々の根本付近に『鑑定』が光り、字幕を見せるものがあるんだ。
覗き込んで、エトヴィンは「おお」と歓声を上げた。
「白夢草だ!」
「え!」
「本当ですか?」
主に続いて、護衛たちもそちらへ駆け寄っていく。
しゃがみ込んで、エトヴィンは低い草の葉を手に取っていた。
「まちがいない。予定の群生地にはまだ達していないが、これだけ採取できれば用途に十分だ」
「予定より早く持ち帰られることになりますね」
「まったくだ」
「ハル殿、報せてくれてありがとう。お前たち前回と同様、採取してくれ。必要な薬のためには葉が四~五枚あれば足りるが、三人で二十枚ずつ持つことにする。十枚ずつ、懐と背負い袋に分けて入れよう」
「はい」
「分かりました」
それぞれ小刀を取り出して、ハート型の葉を茎から切り離している。
集めた葉を油紙のようなもので包み、丁寧に荷物に収める。前回までの失敗に鑑みて水濡れ対策に努めるのと、三人分担して運ぶことで紛失や盗難被害を抑える意図なのだろう。
さっき『鑑定』が【白夢草。体内の魔素を安定させる効果のある薬草】と報せてきたのだから、本物でまちがいないはずだ。
そう思いながら、あたしは何となく傍に近づいて眺めていたんだけど。
いきなり、
“収納”
と、頭の中に響く声があった。
――え?
耳を澄ますけれど、それきり何も聞こえない。
――いや、『収納』って?
あたしはそんな能力を持っていない。もし無自覚に持っていたのだとしても、使い方が分からない。
そもそも何だ、今の声は?
何の意味だ?
傍の三人は何事もなく作業を続けているのだから、今の声を聞いたのはあたしだけらしいんだけど。
――収納――。
今のあたしにできそうなそれに近いことで、思い当たるのは一つだけだ。
上面のスライド窓を開くと、中にレーザー砲と潜望鏡とマジックハンドが収納されている。覗いてよく見ることはできないけど、それらの周りにわずかばかりにも隙間はあるはずだ。
――この葉っぱの十枚くらいなら、入るか。
薬草は三人が採取した後にも十分残っているので、興味半分試してみることにする。
風の刃で葉を切り取り、マジックハンドで摘まんで中に入れる。予想通り、十枚は入れることができる。
この薬草は水に弱いんだそうだけど、水中活動もできるこの車体は防水に優れているはずだ。
まあそんなこんなを合わせて、このささやかな収納運搬機能の是非を確かめるということで、無駄ではないだろう。
そういうことで自己満足に浸っていると、三人は作業を終えて腰を伸ばしていた。
「それでは、急いで戻ろう。これを、一日でも早く王都に届けたい」
「はい」
「帰り道も、くれぐれも気をつけて、ですね」
「当然だ。ハル殿も、ここから引き返すでいいですか?」
頷きを、返す。
「よし、出発だ」
林を抜けて小さな草地に入るところで『鑑定』の報せがあり、あたしはエトヴィンの前にハンドを伸ばした。
「え、何ですか?」
足を止める男の前から、左手に向けて指し示す。
高い木々の根本付近に『鑑定』が光り、字幕を見せるものがあるんだ。
覗き込んで、エトヴィンは「おお」と歓声を上げた。
「白夢草だ!」
「え!」
「本当ですか?」
主に続いて、護衛たちもそちらへ駆け寄っていく。
しゃがみ込んで、エトヴィンは低い草の葉を手に取っていた。
「まちがいない。予定の群生地にはまだ達していないが、これだけ採取できれば用途に十分だ」
「予定より早く持ち帰られることになりますね」
「まったくだ」
「ハル殿、報せてくれてありがとう。お前たち前回と同様、採取してくれ。必要な薬のためには葉が四~五枚あれば足りるが、三人で二十枚ずつ持つことにする。十枚ずつ、懐と背負い袋に分けて入れよう」
「はい」
「分かりました」
それぞれ小刀を取り出して、ハート型の葉を茎から切り離している。
集めた葉を油紙のようなもので包み、丁寧に荷物に収める。前回までの失敗に鑑みて水濡れ対策に努めるのと、三人分担して運ぶことで紛失や盗難被害を抑える意図なのだろう。
さっき『鑑定』が【白夢草。体内の魔素を安定させる効果のある薬草】と報せてきたのだから、本物でまちがいないはずだ。
そう思いながら、あたしは何となく傍に近づいて眺めていたんだけど。
いきなり、
“収納”
と、頭の中に響く声があった。
――え?
耳を澄ますけれど、それきり何も聞こえない。
――いや、『収納』って?
あたしはそんな能力を持っていない。もし無自覚に持っていたのだとしても、使い方が分からない。
そもそも何だ、今の声は?
何の意味だ?
傍の三人は何事もなく作業を続けているのだから、今の声を聞いたのはあたしだけらしいんだけど。
――収納――。
今のあたしにできそうなそれに近いことで、思い当たるのは一つだけだ。
上面のスライド窓を開くと、中にレーザー砲と潜望鏡とマジックハンドが収納されている。覗いてよく見ることはできないけど、それらの周りにわずかばかりにも隙間はあるはずだ。
――この葉っぱの十枚くらいなら、入るか。
薬草は三人が採取した後にも十分残っているので、興味半分試してみることにする。
風の刃で葉を切り取り、マジックハンドで摘まんで中に入れる。予想通り、十枚は入れることができる。
この薬草は水に弱いんだそうだけど、水中活動もできるこの車体は防水に優れているはずだ。
まあそんなこんなを合わせて、このささやかな収納運搬機能の是非を確かめるということで、無駄ではないだろう。
そういうことで自己満足に浸っていると、三人は作業を終えて腰を伸ばしていた。
「それでは、急いで戻ろう。これを、一日でも早く王都に届けたい」
「はい」
「帰り道も、くれぐれも気をつけて、ですね」
「当然だ。ハル殿も、ここから引き返すでいいですか?」
頷きを、返す。
「よし、出発だ」
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