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60 惜別した 2
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「おうハイダ、雨がやんだぞ。外に出てみないか?」
「うん」
娘が腰を上げていると、母親が覗きに来た。
昨日に比べると、晴々とした表情で。
「ああヴィリ、いつもありがとうねえ。ハイダ、少しなら外に行っていいよ。今やってるのがうまくいったら、明後日ぐらいには父ちゃんやみんなで遊べるよ」
「ほんと?」
「今日はヴィリと、危ないとこには行かないようにね。日暮れまでには戻りなさいね」
「あい」
「じゃあ、行こうぜ」
母親は厨房に戻り、子ども二人は駆け出さんばかりに出ていく。
けど、玄関口の手前あたりで立ち止まったみたいだ。「どうした?」とヴィリの尋ねる声が聞こえる。
少しだけ、何やら小声で話し合い。
すぐに、二人は部屋に戻ってきた。
どうしたのかと見ていると、いきなり少年があたしを抱え上げた。
「いいんだな?」
「うん」
外に出て、村の外に向かう。
やがて着いたのは、街道の近くだった。昨日あたしが、二人の捕獲された場所だ。
まさしくその同じ場所に、あたしは下ろされた。
正面から、ハイダが屈んで覗き込む。見ると、両目に光るものが溢れかけている。
震える手を、小さく上げ。
「……ばいばい」
ほとんど聞きとれない、小声が漏れた。
その機能があればあたしも、涙を零したかもしれない。
あたしの嘘を信じ、この子は自分の気持ちを殺して解放してくれたんだ。
――このたいしたことのない二度目の人生(?)、この子の遊び相手になって過ごしても、よかったかもしれないけど。
子どもと遊び、夢の中で親の相談相手になる、という生き方もあったかもしれない。
もしかして、自走できるところを見せれば大喜びしてもらえるかもしれない。
この小さな女の子と、野山を駆け回れるかもしれない。
それはなかなかに楽しい、心惹かれる想像未来絵図だ。
でも。
――あたしは、王都に行かなくては。
唯一の目的を、改めて噛みしめてみる。
颯人の顔が、目に浮かぶ。
そんな思いを、巡らせていると、
ふう、と溜息が聞こえた。男の子の方だ。
「よかったのか、本当に」
「……うん、カメしゃん、おうちに帰るの」
「そうか」
二人の目が、離れた。
それを確認して、あたしは素速く地中に潜った。
載せた土の一部を薄くしたので、声は聞きとれる。
「え、え? あいつ、消えたぞ!」
「カメしゃん、帰った?」
「……そう、みたいだな」
「カメしゃん……ばいばい」
グス、と啜り上げ。声が遠ざかる。
潜望鏡を伸ばすと、手をつないだ二人の後ろ姿が見えた。
――ばいばい。
その姿が見えなくなって少し待ち、あたしは土の中から這い出した。
久しぶりにキャタピラを全速回転させ、街道に戻る。北方向を確認し、進み出す。
――王都へ。
街道の前も後ろも、人の姿は見えない。これから陽が落ちて、ますます通行はなくなるだろう。
遅れを取り戻すべく、あたしは足を急がせる。
「うん」
娘が腰を上げていると、母親が覗きに来た。
昨日に比べると、晴々とした表情で。
「ああヴィリ、いつもありがとうねえ。ハイダ、少しなら外に行っていいよ。今やってるのがうまくいったら、明後日ぐらいには父ちゃんやみんなで遊べるよ」
「ほんと?」
「今日はヴィリと、危ないとこには行かないようにね。日暮れまでには戻りなさいね」
「あい」
「じゃあ、行こうぜ」
母親は厨房に戻り、子ども二人は駆け出さんばかりに出ていく。
けど、玄関口の手前あたりで立ち止まったみたいだ。「どうした?」とヴィリの尋ねる声が聞こえる。
少しだけ、何やら小声で話し合い。
すぐに、二人は部屋に戻ってきた。
どうしたのかと見ていると、いきなり少年があたしを抱え上げた。
「いいんだな?」
「うん」
外に出て、村の外に向かう。
やがて着いたのは、街道の近くだった。昨日あたしが、二人の捕獲された場所だ。
まさしくその同じ場所に、あたしは下ろされた。
正面から、ハイダが屈んで覗き込む。見ると、両目に光るものが溢れかけている。
震える手を、小さく上げ。
「……ばいばい」
ほとんど聞きとれない、小声が漏れた。
その機能があればあたしも、涙を零したかもしれない。
あたしの嘘を信じ、この子は自分の気持ちを殺して解放してくれたんだ。
――このたいしたことのない二度目の人生(?)、この子の遊び相手になって過ごしても、よかったかもしれないけど。
子どもと遊び、夢の中で親の相談相手になる、という生き方もあったかもしれない。
もしかして、自走できるところを見せれば大喜びしてもらえるかもしれない。
この小さな女の子と、野山を駆け回れるかもしれない。
それはなかなかに楽しい、心惹かれる想像未来絵図だ。
でも。
――あたしは、王都に行かなくては。
唯一の目的を、改めて噛みしめてみる。
颯人の顔が、目に浮かぶ。
そんな思いを、巡らせていると、
ふう、と溜息が聞こえた。男の子の方だ。
「よかったのか、本当に」
「……うん、カメしゃん、おうちに帰るの」
「そうか」
二人の目が、離れた。
それを確認して、あたしは素速く地中に潜った。
載せた土の一部を薄くしたので、声は聞きとれる。
「え、え? あいつ、消えたぞ!」
「カメしゃん、帰った?」
「……そう、みたいだな」
「カメしゃん……ばいばい」
グス、と啜り上げ。声が遠ざかる。
潜望鏡を伸ばすと、手をつないだ二人の後ろ姿が見えた。
――ばいばい。
その姿が見えなくなって少し待ち、あたしは土の中から這い出した。
久しぶりにキャタピラを全速回転させ、街道に戻る。北方向を確認し、進み出す。
――王都へ。
街道の前も後ろも、人の姿は見えない。これから陽が落ちて、ますます通行はなくなるだろう。
遅れを取り戻すべく、あたしは足を急がせる。
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