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61 懐疑した 1
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単調な旅が続く。
だいたいは右側に森、左に草原の広がり、という同じような風景で、街道は時にうねりながら北に延びていくようだ。
通行人は、増えたり減ったり。たまに左手方向に、畑や集落らしきものが過ぎていく。そうして場所による人口の増減がくり返されるらしい。
未だに、大きな町のようなものには行き当たらない。王都に向かう主要街道ならそうした町に寄るのが当然に思え、それがないのがやや不安に感じられる。
――いやエトヴィンの説明では、大きな町に寄らず北上できるんだったっけか。
それでも何でも、とにかくこの道を進むしかないんだけど。
ハイダの村を去ってから四回目の夜を迎えた。
街道から少し距離のできた森へと逸れ、木の間で充電に入る。
指折り数え、前回のエトヴィンとの通信から五日経ったはず、と確認。念じると、やはり夢に入ることができた。
『エトヴィンさん』
『ああ、ハル殿。ご無事でしたか』
『ああ、そちらはどうだろう。王都まであと二日ほど?』
『ええ、そこは予定通り進んでいます。明後日の夜には、王宮に入れるでしょう』
『それはよかった』
『しかし――何と言うか、とんでもないことが起きています』
『どういうことだ』
『運搬している薬草の十枚の束が残り二つになっていましたが、一昨日その一つが失われました』
『何だって? またか。注意して運んでいたのだろう?』
『ええ、それなのに、です。何と言ったらいいか、ある意味、今まで以上に不可解なことが起きたというか』
『どんなことが?』
『最初に起きたことだけなら、珍しくもないんですがね。一昨日侯爵領の領都に入って大通りを歩いていたところ、カルステンの荷物が掏摸に奪われたのです。それも担いでいた袋でなく、懐に仕舞っていた薬草の包みだけを』
『何とも』
『カルステンは当然鍛えた護衛ですから、すぐにその掏摸に追いすがり、捕縛しようとしました。ところがその掏摸を地面に引き倒そうとしたとき――発火して全身炎に包まれたのです』
『何だって?』
『それで犯人は焼死し、奪われた薬草は永久に使えなくなりました。駆けつけた役人の話では、その掏摸は有名な常習犯の男で、手配されていたとか。今回の結末、本人が火魔法の適性を持っていたということなんでしょうが、加えて燃えやすい油のようなものを身体のあちこちに所持していたらしいと』
『つまり最初から、焼身自殺を目論んでいたと?』
『ええ。それも起きたことだけを辿ると、最初から薬草だけを狙って、それを使えなくするためだけに命を懸けた、としか考えられないのです』
『誰かに薬草を奪う依頼を受けたか、脅迫されたか、ということになるんだろうか』
『そんなことしか考えられませんね。しかし役人の話ではその掏摸、仲間のような者も家族や身寄りも一切いないはずだと。誰かを人質にされて命を懸けなければならなくなった、などという事情は考えにくいようなのです』
『動機がまったく不明なわけだ』
『そういうことです』
――何とも。
不可解な話、ということになる。
しかしそれでも今までの他の件に比べると、王子の命を狙う何か人間の意思が働いている、と考える余地はあるだろうか。
これまで、エトヴィンたちが薬草を失った件。
大雨で薬草を台無しにされた。
黒毛狼の群れに襲われた。
暴風鷲に襲われた。
十人ほどの盗賊集団に襲われた。
掏摸に奪われた。
その他薬草は失わなかったが、大王熊に二度襲われている。
これがすべて誰か人間の意思による、というのはあり得ないだろう。
盗賊や掏摸を雇うことはできるかもしれないけど、それにしても犯行が薬草奪取だけにあまりにもうまく填まりすぎている。
暴風鷲や黒毛狼を操る方法など、知られていない。
ましてや大雨など、人間の意思で起こせるはずもないんだ。
まあ、大雨だけは偶然、という可能性もあるけどね。
だいたいは右側に森、左に草原の広がり、という同じような風景で、街道は時にうねりながら北に延びていくようだ。
通行人は、増えたり減ったり。たまに左手方向に、畑や集落らしきものが過ぎていく。そうして場所による人口の増減がくり返されるらしい。
未だに、大きな町のようなものには行き当たらない。王都に向かう主要街道ならそうした町に寄るのが当然に思え、それがないのがやや不安に感じられる。
――いやエトヴィンの説明では、大きな町に寄らず北上できるんだったっけか。
それでも何でも、とにかくこの道を進むしかないんだけど。
ハイダの村を去ってから四回目の夜を迎えた。
街道から少し距離のできた森へと逸れ、木の間で充電に入る。
指折り数え、前回のエトヴィンとの通信から五日経ったはず、と確認。念じると、やはり夢に入ることができた。
『エトヴィンさん』
『ああ、ハル殿。ご無事でしたか』
『ああ、そちらはどうだろう。王都まであと二日ほど?』
『ええ、そこは予定通り進んでいます。明後日の夜には、王宮に入れるでしょう』
『それはよかった』
『しかし――何と言うか、とんでもないことが起きています』
『どういうことだ』
『運搬している薬草の十枚の束が残り二つになっていましたが、一昨日その一つが失われました』
『何だって? またか。注意して運んでいたのだろう?』
『ええ、それなのに、です。何と言ったらいいか、ある意味、今まで以上に不可解なことが起きたというか』
『どんなことが?』
『最初に起きたことだけなら、珍しくもないんですがね。一昨日侯爵領の領都に入って大通りを歩いていたところ、カルステンの荷物が掏摸に奪われたのです。それも担いでいた袋でなく、懐に仕舞っていた薬草の包みだけを』
『何とも』
『カルステンは当然鍛えた護衛ですから、すぐにその掏摸に追いすがり、捕縛しようとしました。ところがその掏摸を地面に引き倒そうとしたとき――発火して全身炎に包まれたのです』
『何だって?』
『それで犯人は焼死し、奪われた薬草は永久に使えなくなりました。駆けつけた役人の話では、その掏摸は有名な常習犯の男で、手配されていたとか。今回の結末、本人が火魔法の適性を持っていたということなんでしょうが、加えて燃えやすい油のようなものを身体のあちこちに所持していたらしいと』
『つまり最初から、焼身自殺を目論んでいたと?』
『ええ。それも起きたことだけを辿ると、最初から薬草だけを狙って、それを使えなくするためだけに命を懸けた、としか考えられないのです』
『誰かに薬草を奪う依頼を受けたか、脅迫されたか、ということになるんだろうか』
『そんなことしか考えられませんね。しかし役人の話ではその掏摸、仲間のような者も家族や身寄りも一切いないはずだと。誰かを人質にされて命を懸けなければならなくなった、などという事情は考えにくいようなのです』
『動機がまったく不明なわけだ』
『そういうことです』
――何とも。
不可解な話、ということになる。
しかしそれでも今までの他の件に比べると、王子の命を狙う何か人間の意思が働いている、と考える余地はあるだろうか。
これまで、エトヴィンたちが薬草を失った件。
大雨で薬草を台無しにされた。
黒毛狼の群れに襲われた。
暴風鷲に襲われた。
十人ほどの盗賊集団に襲われた。
掏摸に奪われた。
その他薬草は失わなかったが、大王熊に二度襲われている。
これがすべて誰か人間の意思による、というのはあり得ないだろう。
盗賊や掏摸を雇うことはできるかもしれないけど、それにしても犯行が薬草奪取だけにあまりにもうまく填まりすぎている。
暴風鷲や黒毛狼を操る方法など、知られていない。
ましてや大雨など、人間の意思で起こせるはずもないんだ。
まあ、大雨だけは偶然、という可能性もあるけどね。
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