チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

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62 懐疑した 2

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 それに続いて他の件がすべて偶然に起こるなんて、よほど王子かエトヴィンかが地獄の王にでも呪われているんじゃない限り、あり得ないと思う。
 とにかく、これらの経緯を思い返しても。
 こんなことがまだ続くなら防ぐ対策の立てようがない、ということだけは言えそうだ。
 残っている薬草は、エトヴィンが懐に抱えた一束だけ。中ツ森に引き返して採取する時間の余裕はない。

『あと二日、くれぐれも気をつけて、と言うしかないか』
『そうなります。この残る一束、五枚ずつ二つに分けてカルステンと分担しようと思いますが、とにかく死守するしかありません』
『頑張ってくれ』

 とにかく薬草五枚だけでも王宮に持ち込めば、王子の命は救われる、ということだ。
 夢の中だというのにかなり切羽詰まった必死さの籠もる声を、エトヴィンは返してきた。

『この侯爵領から伝書鳩を送って、王宮から追加の護衛を呼び寄せています。慎重の上にも慎重を期して、残りの旅程を急ぐつもりです』
『幸運を祈る』

 通信が切れても、とにかくあたしにできることはない。
 ただ彼の奮闘が実を結ぶことを願いながら、王都に向けて急ぐだけだ。
 次の会話が繋がるはずの五日後にはエトヴィンが王宮に到着し、その結果が出ていることになる。一方、あたしはまだ十日以上旅程を残していることになるだろうか。
 ただただ気が急き、その夜も0時を機に街道をひた走り始めた。

 その日は、拍子抜けするほど何もなかった。
 ほんの時おり旅人と遭遇し、急ぎ脇へと身を潜めてやり過ごす、ということがあった程度だ。
 また夜が更けて森へ入り、充電態勢に入る。
 そうしてからまた念じると、思い通り入ることができた。
 前回から五日経ったはずの、マルガの夢の中だ。

『失礼する』
『あ――こないだのお告げの人かい。また来てくれたんだね、助かったよ』
『先日の結果が気になったのでね』
『ああ本当に、助かったよ。あの麺も焼き物も、代官様に気に入ってもらえたさあ』
『そうか、よかった。もっと難しいことを言われるものかと思ったが』
『あたしたちも、そう簡単に受け入れられないかもって構えていたんだけどねえ。村長の話じゃああの焼き麺を食べて目を丸くして、あとはあっさり上機嫌に認めてくれたんだと。前はものすごい難しい態度だったのが、まるで憑き物が落ちたみたいだったって』
『そうなのか』
『うちの店で旅の客に出してみても、大好評だったしねえ。他にはない料理だからってすこし値段を高くしても、よく出ていくさ。麺の手打ちが間に合わないぐらいだよ。売り上げが増えて、これからも繁盛できそうだ』
『ほう』
『村では、今育てている小麦をそのままでいいことになったしさ。うちの店のこと聞いて代官様は、新しい村の名物にしろって、大乗り気になっていたって』
『よかったな』
『ほんと、あんたが教えてくれたお陰さあ。何かお礼がしたいんだけど――』
『夢の中の住人に、それは無理だ。感謝だけ受けとっておく。それと、娘のハイダは元気か?』
『ああ、元気さあ。昨日は約束してた通り、一日中ふた親で遊んであげたんだけどねえ、大喜びではしゃいでいたさあ』
『それはよかった。では失礼する』
『あ、ほんとにありがとう――』

 まだ礼を続けようとする女の言葉を遮って、通信を切った。
 こちらは好結果だったということで、万々歳だ。
 まあ別にあたしに利益があるわけじゃない、あの拘束から何とか早く解放されたいということでお節介しただけだけど。とにかくも首尾よく終わったという点では、気分がいい。娘もふさいでいないということで、安心だ。
 ちょっと引っかかるのは、代官の態度豹変が極端すぎることだけど。そもそも最初の命令がかなり強引だったことと合わせて、何か事情があるんだろうか。
 とにかくもまあ、上機嫌だったというなら問題はないんだろう。
 あの料理が好評で村の小麦の価値が上がるなら、代官にも利のある結果だということなんだろうと思う。

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