チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

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66 脱出した 2

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 それでも、そんなの見とれている暇はない。
 進行を再開。
 雨に濡れた土の道を、ガタガタぐちゃぐちゃと。
 しばらく進むうち、

 ピカッ

 遥か前方の高所、大きな黒い雲のすぐ下に、光るものが見えた。
 少しを置いて、

 ズズズーーン

 鈍く大地を震わせるような響きが染みてくる。
 バリバリバリバリ、なんていう音も続いたような。
 何だ――と、深く考えるまでもない。
 雷だ。
 今のからして、まだ遠い、けれど。明らかに進行方向、徐々に近づいている、んじゃないか。
 そこは、考えてしまう。

――雨は問題ないけど、この身体、落雷を食らって大丈夫なもんだろうか。

 分からない、けれど。
 曲がりなりにも金属製の車体、もしかすると雷を呼びやすいんじゃないか。
 この身体の動きがどんな機械構造で支えられてるか不明だけど、落雷を受けて無事かどうか、何の知識も経験もない。
 もしかして中に電気回路みたいなのがあって、そこをやられて動けなくなる、なんて可能性もあるかもしれない。
 物は試し、と食らってみるわけにもいかない。
 ここは明らかに、一択――。

――逃げの一手、雷を避ける行動をとるべきだろうね。

 以前の生活で、雷に関する知識は、曖昧だ。
 さすがに「実体験派フリーライター」活動で、「避雷行動講座」みたいなものを受講した経験はない。
 本当に曖昧な、知識だけど。
 いちばん避けるべきは、周囲に何もない場所に留まること、じゃなかっただろうか。代わりに落雷を受けてくれるものが何もない、という意味で。
 今あたしが進行している街道、しばらくは森からも少し離れて、両側に草地が続くばかり。見事に「周囲に何もない場所」に該当しそうだ。
 そいでもってかすかな記憶だと、最も推奨されるのは、コンクリート製などしっかりした建物内への避難、じゃなかったか。
 前後左右を見回す――までもなく。

――ないわ、そんなもん!

 どう見ても人里離れた田舎道、しっかりしたも何も、建物の類いの見つかりようはない。木製や藁葺きみたいな小屋一つさえ、何処にも見当たらない。
 であるからして、建物内避難、不可能。
 それから――何だっけ。
 情けないほどかすか、わずかばかりの記憶から知識を辿る。
 確か、高い木の下なんかに近づくのはダメ、じゃなかったか。梢に落ちた雷が幹を伝って落ちてくる、とか何とか。
 たぶん同じ理由で、森の中なんかでも、安全の保障はない。
 むしろそんな木に囲まれて、四方八方から幹伝いの電撃攻撃を受けそうな気さえしてくる。
 だけどだけど。
 今のあたしにとれる行動選択肢は、ほぼ限られている。
 言ってみれば、このまま街道なり横の草叢なり広い場所に留まるか、少し離れた森の中に避難するか。ほぼその二択のみだ。
 となるとおそらく、少しでも安全寄りなのは森の中、ということになるんじゃないか。
 ここからは調べようも何もない、勝手な想像解釈だけど。
 広い平地で雷に直撃されるのと、森の中、木の間にいて頭の上に落ちるのと、危険確率はほぼ同じだとして。後者の方がまず第一段階、高い木が直撃を引き受けてくれる可能性が高い、と言えるだろう。その直後幹を伝って落ちる電撃を食らう確率、というのが掛け合わされる分、危険率は低くなるんじゃないか。
 また、落雷の最中さなかで森の中に入る危険性と言えば、山火事に巻き込まれる可能性、ということがありそうだけど。この点でおそらく今のあたしに、危険は少ない。この身体で、焼死なんていうのは想像できない。倒木の下敷きになることさえ避ければ、たぶん火の中を突っ切り走ることもできるはずだ。
 というわけで。
 専門家の意見を聞くことも、ネットで検索することもできないけど。ここはもう、思い切るしかない。

――森の中へ。

 避難、する。
 それほど、悠長に構えている暇はない。
 その後も何度か稲光と雷鳴が続き、明らかにその間隔は狭まっている。落雷地点が近づいていること、疑いようもない。
 あたしは、右へと街道を逸れた。

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