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67 斬撃した 1
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雨はほぼ止みかかっている。
けれど道横の草叢は濡れそぼっていて、かき分け進むと一面水滴が飛び散り、まるで水中を泳いでいるような景色だ。
見晴らしも悪いし音もよく聞こえなくなるけど、とにかく草をかき分け森を目指す。
木立の並ぶ根元に潜り込むと、頭上は暗く覆われた。上空の枝葉に溜まっていたらしい雨水が滴り落ちて、むしろほとんど雨止みの森の外と裏腹に、豪雨に巻き込まれたかのようだ。
しかしそれもそのうち弱まるだろう、と濡れそぼった地面を踏みしめ奥へと進む。
わずかに木立が途切れ、数十メートル四方ほどの草地に出た。
ここまで入ればどうだろう、と耳を澄ます。間隔を置いて響く雷鳴は、まだかなり遠いようだ。こちらに近づくことはないのだろうか。
やや安堵、していると。違う方向から物音が聞こえていた。何か、喧噪とでも呼べそうな。それが、近づいているような。
わーー、わーー、というような人声。複数人だろうか。
それが近づく。その同じ方向から、いきなり咆哮がいきり上がった。
グワアアアアーーーー!
明らかに、動物の声だ。おそらく、かなり大きい。
様子を見るか、と少し横へ進路を逸れ、木の間に入る。
待つほどもなく。
「うわーーー!」
「急げ、追いつかれる!」
血まみれの男が二人、密集した木の間から駆け出してきた。
何処となくカルステンたちのような、護衛とか兵士とかっぽい服装で、それぞれ抜いた剣を手にしている。
何だろう、と思い巡らす暇もなかった。
その後方の大木が、バリリ、となぎ倒され。
ぐわ、と大きなトカゲのような頭部が現れた。
高さ、二メートルほどか。とは言えそれは、四つ足で這い進む姿勢での体高だ。体長にしたら、十メートルにも及ぶかもしれない。
全身鱗に覆われた、明らかに爬虫類の類いと思われる外観。見かけと裏腹に四つ足を高速で動かし、地を駆ける様相だ。
それが空き地に出た途端さらに前進速度を増し、人間を一呑みにできそうな大口を開いて先行の二人に襲いかかる。
「うわーーー!」
「来るな!」
逃げられない、と観念してか。一人が相棒を庇う姿勢で振り返り、手にしていた剣を投げつけた。
剣先が大トカゲの鼻面に命中。しかし傷を負わすこともできず、虚しく草の上に落ちていく。
グワア、と開いた大口が二人に迫る。覗いた多数の鋭い歯牙は、一瞬で人間を噛み砕きそうだ。
――やべ!
考える余裕もなく、あたしはその横へ走り出していた。
数メートル距離まで駆け寄り、レーザー砲を突き出す。
狙い過たず、水鉄砲は大トカゲの右目を射貫いていた。
――いや、「射貫いた」なんて、格好つけすぎ。
単に推定『高圧洗浄機』相当威力の水流が、目玉に当たった、それだけだ。おそらく、傷をつけてもいない。
それでもそのデカブツに、多少の刺激は与えたみたいだ。
足を止めて何度か目を瞬き、どでかい頭部がこちらに向けられた。
しかし低いながらも草の中、地面の保護色に近い小さな箱型、すぐには認識できないだろう。
視線が彷徨い流れる間に、草の中を全速力、大トカゲの灰色の後ろ足に近づく。
――ここまでする義理はないんだろうけどさ、目の前で人が食われるのを見たくもないからね。
太さ一メートル近くはありそうな後肢に接近。
風魔法を、一閃。
風刃!
斬る!
斬る!
斬る!
――――。
切れない。
傷一つ、つかない。
――うん、分かってた。
以前挑んだ熊魔獣に比べても遥かに大型、表皮の鱗は硬そうだ。
こちらの覚えたてのショボ魔法など、到底通用しそうにない。
しかしとりあえず、最低限の目的は果たせたようだ。
こんなデカブツにも、蚊に刺された程度かそこらの刺激は与えられたか。
すっかり前進は止まり、大きな頭部が振り返って、後足近くを探り見回している。
――今のうちに逃げろ!
けれど道横の草叢は濡れそぼっていて、かき分け進むと一面水滴が飛び散り、まるで水中を泳いでいるような景色だ。
見晴らしも悪いし音もよく聞こえなくなるけど、とにかく草をかき分け森を目指す。
木立の並ぶ根元に潜り込むと、頭上は暗く覆われた。上空の枝葉に溜まっていたらしい雨水が滴り落ちて、むしろほとんど雨止みの森の外と裏腹に、豪雨に巻き込まれたかのようだ。
しかしそれもそのうち弱まるだろう、と濡れそぼった地面を踏みしめ奥へと進む。
わずかに木立が途切れ、数十メートル四方ほどの草地に出た。
ここまで入ればどうだろう、と耳を澄ます。間隔を置いて響く雷鳴は、まだかなり遠いようだ。こちらに近づくことはないのだろうか。
やや安堵、していると。違う方向から物音が聞こえていた。何か、喧噪とでも呼べそうな。それが、近づいているような。
わーー、わーー、というような人声。複数人だろうか。
それが近づく。その同じ方向から、いきなり咆哮がいきり上がった。
グワアアアアーーーー!
明らかに、動物の声だ。おそらく、かなり大きい。
様子を見るか、と少し横へ進路を逸れ、木の間に入る。
待つほどもなく。
「うわーーー!」
「急げ、追いつかれる!」
血まみれの男が二人、密集した木の間から駆け出してきた。
何処となくカルステンたちのような、護衛とか兵士とかっぽい服装で、それぞれ抜いた剣を手にしている。
何だろう、と思い巡らす暇もなかった。
その後方の大木が、バリリ、となぎ倒され。
ぐわ、と大きなトカゲのような頭部が現れた。
高さ、二メートルほどか。とは言えそれは、四つ足で這い進む姿勢での体高だ。体長にしたら、十メートルにも及ぶかもしれない。
全身鱗に覆われた、明らかに爬虫類の類いと思われる外観。見かけと裏腹に四つ足を高速で動かし、地を駆ける様相だ。
それが空き地に出た途端さらに前進速度を増し、人間を一呑みにできそうな大口を開いて先行の二人に襲いかかる。
「うわーーー!」
「来るな!」
逃げられない、と観念してか。一人が相棒を庇う姿勢で振り返り、手にしていた剣を投げつけた。
剣先が大トカゲの鼻面に命中。しかし傷を負わすこともできず、虚しく草の上に落ちていく。
グワア、と開いた大口が二人に迫る。覗いた多数の鋭い歯牙は、一瞬で人間を噛み砕きそうだ。
――やべ!
考える余裕もなく、あたしはその横へ走り出していた。
数メートル距離まで駆け寄り、レーザー砲を突き出す。
狙い過たず、水鉄砲は大トカゲの右目を射貫いていた。
――いや、「射貫いた」なんて、格好つけすぎ。
単に推定『高圧洗浄機』相当威力の水流が、目玉に当たった、それだけだ。おそらく、傷をつけてもいない。
それでもそのデカブツに、多少の刺激は与えたみたいだ。
足を止めて何度か目を瞬き、どでかい頭部がこちらに向けられた。
しかし低いながらも草の中、地面の保護色に近い小さな箱型、すぐには認識できないだろう。
視線が彷徨い流れる間に、草の中を全速力、大トカゲの灰色の後ろ足に近づく。
――ここまでする義理はないんだろうけどさ、目の前で人が食われるのを見たくもないからね。
太さ一メートル近くはありそうな後肢に接近。
風魔法を、一閃。
風刃!
斬る!
斬る!
斬る!
――――。
切れない。
傷一つ、つかない。
――うん、分かってた。
以前挑んだ熊魔獣に比べても遥かに大型、表皮の鱗は硬そうだ。
こちらの覚えたてのショボ魔法など、到底通用しそうにない。
しかしとりあえず、最低限の目的は果たせたようだ。
こんなデカブツにも、蚊に刺された程度かそこらの刺激は与えられたか。
すっかり前進は止まり、大きな頭部が振り返って、後足近くを探り見回している。
――今のうちに逃げろ!
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