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69 離脱した 1
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ブワアアアアーーーー!
火炎放射器さながらに、周囲十メートル四方程度の草が燃え上がらされる。
つまり、一面火の海。
後方の男たちから、悲鳴が上がる。
「わあーー!」
「地面龍の、龍火だあ!」
地面龍?
こいつ、龍種だったらしい。
それにしたって、と思う。
――あんた、特撮怪獣かい!
爬虫類の生態で、何処に火を噴き出す要素があるんじゃ! などとツッコんでもやるかたない。
魔法のある世界なんだ、この龍だか何だかの怪獣も火魔法を身に着けているということだろう。
などと当面急務でもない考察をするうち、周囲の火は勢いを減じていた。
幸い雨に濡れそぼった草原で、大規模な燃え広がりはなかったようだ。
当然ながら、あたしに傷害はない。
腰を抜かした人間二人まで、野火は届かなかったらしい。
ということで、迫力のわりに火炎噴射の被害は軽微だ。
いちばんの悲報は、あたしの姿を隠していた草が消し去られたことか。
実相を視認される前に、全速で敵に接近。
見上げると大きな口は火を吐き出したそのままに開き、長い呼吸を整えるみたいにくり返している。もしかすると、次の火炎放射まで間を置く必要があるのか。
やはりあたしを見つけられなかったようで、視線は焼け野原の上を撫でている。
その、開いた口に向け。
水魔法!
水魔法!
水魔法!
水魔法!
連発、火炎噴射が再開しないうち二分ほども続けていくと、変化が起きた。
ゆっくり、巨大トカゲの四肢が折れ曲がっていく。喘ぐみたいに、口が開き、閉じ。やがて全身鱗の巨体が、横転していた。
「え、何だ?」
「何が起きた!」
後方でほとんど半死半生に見えていた男たちの声が、かまびすしい。
まだ元気があるのなら、あとは自分たちで何とかしなさい。今のうちに逃げるなり、止めを刺すべく立ち向かうなり。
どうしたって声は届けられないのだけど内心呼びかけて、あたしはそのまま現場を離脱した。
「何だおい、あの小さな茶色、走っていくぞ」
「あいつが何かしたのか?」
「それよりあちら、地面龍、動かなくなっています!」
「今のうちか! 剣が入るかもしれんぞ」
「やってみます!」
林に駆け込んで、振り向くと。
上司らしい男の声を受けて、若い男がさっき投げつけた剣を拾い上げていた。
そのまま横転した巨体の背中側に回り、両手で握った剣先を下に、頭部へ向けて飛びついていく。見事そのまま、全体重をかけたと思しき剣は、龍の目玉を刺し貫いていた。
グワアアアアーーーー!
眼球から血飛沫が噴き出し。
先刻までよりは力弱い、咆哮が上がる。
やがて、鱗を纏った巨体が弛緩していった。
「やったか!」
「はい!」
龍の頭部から飛び下りた若い男は、満面の笑みで片手を突き上げた。
あまり年が変わらない外見の上司は、そのまま草の上にへたり座っている。
「やった――命拾い、したか」
「はい、何故この地面龍が動かなくなったのか、理由が分かりませんが」
「あのさっきの、小さな茶色のもののせいか――神の加護、だったのかもしれん」
「そんなことでもなければ、理由がつきませんね」
「まったくだ」
若い男も地面に腰を下ろし、大きく息を落としている。
二人ともから何度も「何だったのか」「何が起きたのか」などと、力入らない言葉がくり返されている。
――まあ、説明のつけようはないだろうね。
火炎放射器さながらに、周囲十メートル四方程度の草が燃え上がらされる。
つまり、一面火の海。
後方の男たちから、悲鳴が上がる。
「わあーー!」
「地面龍の、龍火だあ!」
地面龍?
こいつ、龍種だったらしい。
それにしたって、と思う。
――あんた、特撮怪獣かい!
爬虫類の生態で、何処に火を噴き出す要素があるんじゃ! などとツッコんでもやるかたない。
魔法のある世界なんだ、この龍だか何だかの怪獣も火魔法を身に着けているということだろう。
などと当面急務でもない考察をするうち、周囲の火は勢いを減じていた。
幸い雨に濡れそぼった草原で、大規模な燃え広がりはなかったようだ。
当然ながら、あたしに傷害はない。
腰を抜かした人間二人まで、野火は届かなかったらしい。
ということで、迫力のわりに火炎噴射の被害は軽微だ。
いちばんの悲報は、あたしの姿を隠していた草が消し去られたことか。
実相を視認される前に、全速で敵に接近。
見上げると大きな口は火を吐き出したそのままに開き、長い呼吸を整えるみたいにくり返している。もしかすると、次の火炎放射まで間を置く必要があるのか。
やはりあたしを見つけられなかったようで、視線は焼け野原の上を撫でている。
その、開いた口に向け。
水魔法!
水魔法!
水魔法!
水魔法!
連発、火炎噴射が再開しないうち二分ほども続けていくと、変化が起きた。
ゆっくり、巨大トカゲの四肢が折れ曲がっていく。喘ぐみたいに、口が開き、閉じ。やがて全身鱗の巨体が、横転していた。
「え、何だ?」
「何が起きた!」
後方でほとんど半死半生に見えていた男たちの声が、かまびすしい。
まだ元気があるのなら、あとは自分たちで何とかしなさい。今のうちに逃げるなり、止めを刺すべく立ち向かうなり。
どうしたって声は届けられないのだけど内心呼びかけて、あたしはそのまま現場を離脱した。
「何だおい、あの小さな茶色、走っていくぞ」
「あいつが何かしたのか?」
「それよりあちら、地面龍、動かなくなっています!」
「今のうちか! 剣が入るかもしれんぞ」
「やってみます!」
林に駆け込んで、振り向くと。
上司らしい男の声を受けて、若い男がさっき投げつけた剣を拾い上げていた。
そのまま横転した巨体の背中側に回り、両手で握った剣先を下に、頭部へ向けて飛びついていく。見事そのまま、全体重をかけたと思しき剣は、龍の目玉を刺し貫いていた。
グワアアアアーーーー!
眼球から血飛沫が噴き出し。
先刻までよりは力弱い、咆哮が上がる。
やがて、鱗を纏った巨体が弛緩していった。
「やったか!」
「はい!」
龍の頭部から飛び下りた若い男は、満面の笑みで片手を突き上げた。
あまり年が変わらない外見の上司は、そのまま草の上にへたり座っている。
「やった――命拾い、したか」
「はい、何故この地面龍が動かなくなったのか、理由が分かりませんが」
「あのさっきの、小さな茶色のもののせいか――神の加護、だったのかもしれん」
「そんなことでもなければ、理由がつきませんね」
「まったくだ」
若い男も地面に腰を下ろし、大きく息を落としている。
二人ともから何度も「何だったのか」「何が起きたのか」などと、力入らない言葉がくり返されている。
――まあ、説明のつけようはないだろうね。
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