70 / 122
70 離脱した 2
しおりを挟む
実態は、水魔法の連発なんだけど。
水球も水噴射も見えていない――実際、相手にぶつけていない――んだから、理解のしようがないだろう。
あたしがやったのは。
龍の口から身体の奥にかけて水分を奪い続ける、という作業だ。
水魔法で、狙ったところから水分を奪うことができる。ただし一回で拳二つ分というところだから、多く見積もっても一リットルいくかどうかか。
まったく正確なところは分からないけど、体長十メートル近い爬虫類、体重は五トン程度だとして。
以前「熱中症対策講座」で得た知識によると、これは人間の話だけど、体重の60パーセント程度が水分と言われる。その10~20パーセント程度が失われると脱水症状で筋肉の痙攣などが始まり、そのまま死に至る危険がある、とのこと。
それが単純に龍に当てはまるかは知らないけど、そのまま換算するなら五トンの60パーセントの10パーセントは三百キログラム。一回一リットルの消失で、三百回分。あたしの水魔法は高速連発だと一秒間に三回程度発現できるので、単純計算で百秒以上、ということになる。
まあ計算がどれほど現実に近かったかは不明だけど、実際二分ほども続けて、その動きを奪うことができたわけだ。
――結果オーライと言うか。あのまま火炎噴射を連発させたら、腰を抜かしてた二人の命は保障できなかったからね。
しかし、地面龍って。
以前のエトヴィンの説明では、ここらの森での最強の存在は大王熊ということだったけど。確か、『鑑定』でもそう出ていたし。
でも今の龍、熊の数倍の大きさはあったし、火を噴くことも合わせてどう考えても強さは上に思えるぞ。
そう言えば――ダンジョンの中にはもっと強大なのもいる、ということだったか。まさか、ふつうダンジョンの外に出ないのが出てきたのか?
――考えても、結論は出そうにないけど。
首を振り振り、の気分でその場を離れた。
二人の前に出たくないので、とりあえずさらに森の奥へと進むことになる。
百メートルほども奥に入った、ことになったか。
いきなり、周りの景色が変わった。
いや、もし嗅覚があったり、視線がもっと高ければ早く気がついたのかもしれないけど。
何本もなぎ倒された木々、これは当然あの龍の仕業だろう。
それの下敷きになったり、草や泥にまみれ倒れたり、いくつもの血まみれの死体が転がっていたんだ。
十体以上、まったく一つも動く気配さえない。首や四肢やがあり得ないほどに曲がって、至るところ血が流れ出して、明らかに取り返しのつかない状態だ。
つまりさっきの二人を含め、十人以上の集団であの龍と戦闘した結果なんだろう。
血や泥やで汚れて鮮明には分からないけど、全員さっきの二人と同じく兵士のような服装だったらしい。
――お気の毒に。
一呼吸、頭の中で手を合わせ。
その場に近づく気にもなれず、あたしは大きく横に逸れた。
さっきの二人もかなりの傷を負っていたようで、この後無事生きて人里に戻れるか分かったものではない。でもその点について、あたしが協力できることはない。
傷の治療はおろか、何処かへ救援を呼びに行くこともまずできようがないんだ。冷たいようだけど、そんな時間を浪費するより先を急ぎたい。
上空に、もう稲妻は見えていない。雷鳴も、絶えて聞こえない。
雷が去ったのなら、街道に戻ろうと思う。
大きく迂回した形で元の径路を取り戻し、雲の間に射してきた暮れ近い太陽の存在から、北の方向をしっかり確かめる。
走り出し、間もなく陽は落ちた。しばらく進んで、いつもの頃合いより少し早く、森で充電に入る。魔法の使用のせいか、減りが早いみたいなんだ。
王都まで、あと五~六日という見当か。
この夜は、誰の夢とも繋がらない。
確か、エトヴィンと話してから四日、マルガとは三日、感染症の村人から二日、ということになるはずだ。
エトヴィンは二日前に王都に戻ったことになるはずだけど、王子の治療はできたんだろうか。気になるけれど何にしても、明日までは連絡がとれない。
今は大人しく充電に努め、できるだけ早く旅程を進めたいと思う。
水球も水噴射も見えていない――実際、相手にぶつけていない――んだから、理解のしようがないだろう。
あたしがやったのは。
龍の口から身体の奥にかけて水分を奪い続ける、という作業だ。
水魔法で、狙ったところから水分を奪うことができる。ただし一回で拳二つ分というところだから、多く見積もっても一リットルいくかどうかか。
まったく正確なところは分からないけど、体長十メートル近い爬虫類、体重は五トン程度だとして。
以前「熱中症対策講座」で得た知識によると、これは人間の話だけど、体重の60パーセント程度が水分と言われる。その10~20パーセント程度が失われると脱水症状で筋肉の痙攣などが始まり、そのまま死に至る危険がある、とのこと。
それが単純に龍に当てはまるかは知らないけど、そのまま換算するなら五トンの60パーセントの10パーセントは三百キログラム。一回一リットルの消失で、三百回分。あたしの水魔法は高速連発だと一秒間に三回程度発現できるので、単純計算で百秒以上、ということになる。
まあ計算がどれほど現実に近かったかは不明だけど、実際二分ほども続けて、その動きを奪うことができたわけだ。
――結果オーライと言うか。あのまま火炎噴射を連発させたら、腰を抜かしてた二人の命は保障できなかったからね。
しかし、地面龍って。
以前のエトヴィンの説明では、ここらの森での最強の存在は大王熊ということだったけど。確か、『鑑定』でもそう出ていたし。
でも今の龍、熊の数倍の大きさはあったし、火を噴くことも合わせてどう考えても強さは上に思えるぞ。
そう言えば――ダンジョンの中にはもっと強大なのもいる、ということだったか。まさか、ふつうダンジョンの外に出ないのが出てきたのか?
――考えても、結論は出そうにないけど。
首を振り振り、の気分でその場を離れた。
二人の前に出たくないので、とりあえずさらに森の奥へと進むことになる。
百メートルほども奥に入った、ことになったか。
いきなり、周りの景色が変わった。
いや、もし嗅覚があったり、視線がもっと高ければ早く気がついたのかもしれないけど。
何本もなぎ倒された木々、これは当然あの龍の仕業だろう。
それの下敷きになったり、草や泥にまみれ倒れたり、いくつもの血まみれの死体が転がっていたんだ。
十体以上、まったく一つも動く気配さえない。首や四肢やがあり得ないほどに曲がって、至るところ血が流れ出して、明らかに取り返しのつかない状態だ。
つまりさっきの二人を含め、十人以上の集団であの龍と戦闘した結果なんだろう。
血や泥やで汚れて鮮明には分からないけど、全員さっきの二人と同じく兵士のような服装だったらしい。
――お気の毒に。
一呼吸、頭の中で手を合わせ。
その場に近づく気にもなれず、あたしは大きく横に逸れた。
さっきの二人もかなりの傷を負っていたようで、この後無事生きて人里に戻れるか分かったものではない。でもその点について、あたしが協力できることはない。
傷の治療はおろか、何処かへ救援を呼びに行くこともまずできようがないんだ。冷たいようだけど、そんな時間を浪費するより先を急ぎたい。
上空に、もう稲妻は見えていない。雷鳴も、絶えて聞こえない。
雷が去ったのなら、街道に戻ろうと思う。
大きく迂回した形で元の径路を取り戻し、雲の間に射してきた暮れ近い太陽の存在から、北の方向をしっかり確かめる。
走り出し、間もなく陽は落ちた。しばらく進んで、いつもの頃合いより少し早く、森で充電に入る。魔法の使用のせいか、減りが早いみたいなんだ。
王都まで、あと五~六日という見当か。
この夜は、誰の夢とも繋がらない。
確か、エトヴィンと話してから四日、マルガとは三日、感染症の村人から二日、ということになるはずだ。
エトヴィンは二日前に王都に戻ったことになるはずだけど、王子の治療はできたんだろうか。気になるけれど何にしても、明日までは連絡がとれない。
今は大人しく充電に努め、できるだけ早く旅程を進めたいと思う。
2
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜
naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。
※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。
素材利用
・森の奥の隠里様
・みにくる様
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
指令を受けた末っ子は望外の活躍をしてしまう?
秋野 木星
ファンタジー
隣国の貴族学院へ使命を帯びて留学することになったトティ。入国しようとした船上で拾い物をする。それがトティの人生を大きく変えていく。
※「飯屋の娘は魔法を使いたくない?」のよもやま話のリクエストをよくいただくので、主人公や年代を変えスピンオフの話を書くことにしました。
※ この作品は、小説家になろうからの転記掲載です。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる