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90 入室した 2
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今日のカルステンが襲われた二件、何となくだけど違和感がないか。
これまでエトヴィンやカルステンたちがたびたび遭った、薬草を台無しにされる被害。いろいろ不思議な要素はあるけど、何より驚くべきはそれがすべてピンポイントに実行されたことだった。
二人のうちどちらが所持しているか同道している護衛にも知らせないようにしていたのに、見事にエトヴィンだけが狙われたとか。
薬草を入れているのが背負い袋なのか懐なのか外観では判別できないはずなのに、しっかり懐を狙われたとか。
それに比べて今日は、最初の掏摸が狙ったのは見当違いの懐の方だった。
――まあ、たまたま偶然かもしれないけどね。
しかしこれまでに比べて、同様の盗聴などはあったにしても情報の流出度が少なく細かい特定はされなかった、という推論は成り立つかもしれないじゃないか。
さらに乱暴に考えれば、今日の件はたまたまカルステンが遠方から戻ってきたのを見つけて、もしかすると薬草を入手したのかもしれないという推測だけで実行された、確かな情報などまったく漏れていなかったという可能性だってあり得る。
これまでは、情報が漏れていた。今日の場合は、漏れていなかった――のかもしれない。
本当に、たまたまなのかもしれないけど。今回のはエトヴィンとカルステンで情報秘匿を徹底したせいなのかもしれないけど。何かその他に、異なる条件はあったのだろうか。
――いやしかし、ここで一人で考えただけじゃ、結論が出るはずもないわなあ。
特にエトヴィンたちの帰路、どのように警戒して具体的にどのように行動したのか、大まかに聞いた程度なんだからさ。
これ以上考えても、仕方ない。けれど、考えること以外することもない。
広い無人の部屋に、一人残されて。
動くことを自分に禁じてしまうと、あたしにできるのは考えることだけ――。
あとあえて言うと、「夢会話」という能力(?)があるけど。
時刻は、まだ夕方。半径一キロ以内に就寝している人間がいそうにはない。
それでも思いついてしまうと、他に暇つぶしの当てもないので。
それこそ当てもなく念じ、ふらふら周囲を探って通信成立の手応えを求めてみる。
何もない、ない。手応え、など。
ない、ない。
三百六十度、一周を終えようとした、とき。
あった。手応えが。
いつもの夢の中のようにぼんやり空間に入った感じじゃないけど、何となくの感覚で誰かと精神が繋がった、というような手応えが。
『え、何だ?』
『え、何?』
『失礼、突然あなたの夢の中に入ってしまった、というようなのだが。お尋ねしていいだろうか、あなたはこの王宮にいる人なのか』
『え、夢――? え、まあ、王宮の住人でまちがいないけど……』
明言しないのはもちろん、警戒してのことだろう。
夢会話ではっきり音声が聞こえるわけじゃないし、いつもと違ってぼんやりとでさえ相手の姿が認識されないんだけど、相手の声はかなり若い印象だ。少年、と思ってまちがいないような。
これが思った通りの人物だとしたら、偶然と言うかご都合主義極まるとしか思えないところだけどさあ。
考えてみると、不思議ないんだ。こんな王宮という場所で、こんな頃合いに夢会話が成立する相手。
仕事をさぼって居眠りしている人間でなければ、病弱で床に着いているというケースくらいしかあり得そうにないじゃない。乳幼児ならまた別だけど、そんな声にも聞こえないしね。
そして今この相手は、「王宮の住人」と言った。
まず「当たり」と判断していいんじゃないかな。
『もしかして、第三王子殿下ですか』
『え、何で分かるの? あなたは何者』
『怪しい者ではない、と言いたいところだけど、そう思うなと言うのが無理でしょうね。とりあえず名乗ると、ハルといいます。旅先でエトヴィン様と知り合って、王宮に招かれました。今はエトヴィン様の執務室におります』
『あ――エトヴィンが先日、今回の遠出の間に驚くべき出会いがあった、事情が許されるようになったら後日詳しいことを話す、と言ってたけど』
『ああ、たぶんその、驚くべき出会いの相手です』
『そうなのかあ。こんな不思議な会話をすることができる、そんな能力を持つのかな』
『まあ、そういうことです』
『なるほどお。そういうことでエトヴィンにとって、驚くべき出会いなのかあ』
これまでエトヴィンやカルステンたちがたびたび遭った、薬草を台無しにされる被害。いろいろ不思議な要素はあるけど、何より驚くべきはそれがすべてピンポイントに実行されたことだった。
二人のうちどちらが所持しているか同道している護衛にも知らせないようにしていたのに、見事にエトヴィンだけが狙われたとか。
薬草を入れているのが背負い袋なのか懐なのか外観では判別できないはずなのに、しっかり懐を狙われたとか。
それに比べて今日は、最初の掏摸が狙ったのは見当違いの懐の方だった。
――まあ、たまたま偶然かもしれないけどね。
しかしこれまでに比べて、同様の盗聴などはあったにしても情報の流出度が少なく細かい特定はされなかった、という推論は成り立つかもしれないじゃないか。
さらに乱暴に考えれば、今日の件はたまたまカルステンが遠方から戻ってきたのを見つけて、もしかすると薬草を入手したのかもしれないという推測だけで実行された、確かな情報などまったく漏れていなかったという可能性だってあり得る。
これまでは、情報が漏れていた。今日の場合は、漏れていなかった――のかもしれない。
本当に、たまたまなのかもしれないけど。今回のはエトヴィンとカルステンで情報秘匿を徹底したせいなのかもしれないけど。何かその他に、異なる条件はあったのだろうか。
――いやしかし、ここで一人で考えただけじゃ、結論が出るはずもないわなあ。
特にエトヴィンたちの帰路、どのように警戒して具体的にどのように行動したのか、大まかに聞いた程度なんだからさ。
これ以上考えても、仕方ない。けれど、考えること以外することもない。
広い無人の部屋に、一人残されて。
動くことを自分に禁じてしまうと、あたしにできるのは考えることだけ――。
あとあえて言うと、「夢会話」という能力(?)があるけど。
時刻は、まだ夕方。半径一キロ以内に就寝している人間がいそうにはない。
それでも思いついてしまうと、他に暇つぶしの当てもないので。
それこそ当てもなく念じ、ふらふら周囲を探って通信成立の手応えを求めてみる。
何もない、ない。手応え、など。
ない、ない。
三百六十度、一周を終えようとした、とき。
あった。手応えが。
いつもの夢の中のようにぼんやり空間に入った感じじゃないけど、何となくの感覚で誰かと精神が繋がった、というような手応えが。
『え、何だ?』
『え、何?』
『失礼、突然あなたの夢の中に入ってしまった、というようなのだが。お尋ねしていいだろうか、あなたはこの王宮にいる人なのか』
『え、夢――? え、まあ、王宮の住人でまちがいないけど……』
明言しないのはもちろん、警戒してのことだろう。
夢会話ではっきり音声が聞こえるわけじゃないし、いつもと違ってぼんやりとでさえ相手の姿が認識されないんだけど、相手の声はかなり若い印象だ。少年、と思ってまちがいないような。
これが思った通りの人物だとしたら、偶然と言うかご都合主義極まるとしか思えないところだけどさあ。
考えてみると、不思議ないんだ。こんな王宮という場所で、こんな頃合いに夢会話が成立する相手。
仕事をさぼって居眠りしている人間でなければ、病弱で床に着いているというケースくらいしかあり得そうにないじゃない。乳幼児ならまた別だけど、そんな声にも聞こえないしね。
そして今この相手は、「王宮の住人」と言った。
まず「当たり」と判断していいんじゃないかな。
『もしかして、第三王子殿下ですか』
『え、何で分かるの? あなたは何者』
『怪しい者ではない、と言いたいところだけど、そう思うなと言うのが無理でしょうね。とりあえず名乗ると、ハルといいます。旅先でエトヴィン様と知り合って、王宮に招かれました。今はエトヴィン様の執務室におります』
『あ――エトヴィンが先日、今回の遠出の間に驚くべき出会いがあった、事情が許されるようになったら後日詳しいことを話す、と言ってたけど』
『ああ、たぶんその、驚くべき出会いの相手です』
『そうなのかあ。こんな不思議な会話をすることができる、そんな能力を持つのかな』
『まあ、そういうことです』
『なるほどお。そういうことでエトヴィンにとって、驚くべき出会いなのかあ』
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