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105 吃驚《きっきょう》した 1
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何を今さら、ではあるけど。
睡眠に悪影響しないということになっているとはいえ強行軍直後の護衛相手にさすがに申し訳ない気もするので、夜を徹するまではせず会話を切り上げた。
夜半を過ぎるかどうかというところで、屋内は完全に静まり返っている。特に静養が必要とされる王子の私室近辺では、誰もが気を遣っているのかもしれないね。
やっぱりエトヴィンとは繋がらないので、あたしはこれ以上会話相手を探すのを断念した。
一人闇の中で、テオバルト王子やカルステンと交わした会話内容について反芻考察してみる。
かなりのところ信じられない、ファンタジーめいたこの世界の中でさえあり得べからざるらしい出来事の数々で、考察しようにもとっかかりがなさ過ぎるわけだけど。それでも最終的に、颯人の生まれ変わりである王子の生命がかかった話になるわけだから、他人事と投げ出すつもりにもなれないんだ。
静かに真っ暗闇の中、時が過ぎていく。
何度目かに時刻を確認すると、四時を過ぎていた。この季節ならそろそろ外が明るくなっているはずだけど、窓のないこの部屋はまだ真っ暗だ。
変わらず、エトヴィンとは繋がらない。陽が昇り次第作業を始めると言っていたから、そろそろ動き出しているのかもしれない。
――とにかくも無事、調薬をなし遂げてもらいたい。
王子の言う破滅の運命回避のためにまだいろいろと解決しなければならない案件はあるみたいだけど、何にせよ最優先は薬を完成させて病気を治すことだ。
考えていると。
部屋の外遠くの方で、かすかな動きの音が聞こえてきていた。
王宮の中で、生活活動が始まっているのか。おそらくのところまず動き出すのは使用人で、身分の高い人々はまだ起き出さないんじゃないかと思う。
実際、第三王子の寝室の方にまだまったく気配の動きはない。
そのまましばらく待機して、一時間も経過したろうか。
何気なく夢会話の探りを入れると、馴染みのある手応えがあった。
――え?
意外、に思ってしまう。
エトヴィンの手応え、なんだ。
この時間はまちがいなく調薬を始めているはずで、夢に繋がるなどあり得ないはずなんだけど。
やや狼狽して、呼びかけていた。
『エトヴィンさん、か?』
『え? あ――ハル殿?』
『どうしたんだ、眠っているのか?』
『え、いや――そんなはずは――え、え? ああ、そうだ!』
『何かあったのか?』
『こうしてはいられない――いや、え? 私はどうして――ああ――たいへんな事態なんだ!』
『落ち着いて。何があったんだ?』
一瞬、寝坊して慌てているのかと思ったんだけど。
どうも何か、思いがけない事態発生、ということのようだ。
『ああ、どうしたら――薬草が失われてしまったのです!』
『何だって? 研究室だっけ、厳重に保管していたはずじゃなかったか』
『そう――絶対安全なはずの自分の研究室で薬草を薬品に漬け、部屋の内外に信頼の置ける護衛を配置していたのです。今朝、陽が昇るのも待ちかねて研究室へ行ったときには無事そこにあり、薬分の抽出も十分、と確認されたのです。護衛にはさらにカルステンも加わり、こちらも信頼の置ける助手二人に手伝わせて、調薬の手順を始めたのです。それなのに――』
『何があったんだ』
『突然助手の一人が錯乱したように暴れ出し、室内に火を放ちました。結果、私ともう一人の助手は難を逃れましたが、薬草を始め付近の道具類はすべて消失、その当人自身も火に巻かれて焼死しました』
『はあ?』
『まったくわけが分かりません。もう五年来私の研究室で働いていて信用置けると考えていましたし、これまで上司の指示に逆らうことはまったくなかった男なのです』
『何と』
睡眠に悪影響しないということになっているとはいえ強行軍直後の護衛相手にさすがに申し訳ない気もするので、夜を徹するまではせず会話を切り上げた。
夜半を過ぎるかどうかというところで、屋内は完全に静まり返っている。特に静養が必要とされる王子の私室近辺では、誰もが気を遣っているのかもしれないね。
やっぱりエトヴィンとは繋がらないので、あたしはこれ以上会話相手を探すのを断念した。
一人闇の中で、テオバルト王子やカルステンと交わした会話内容について反芻考察してみる。
かなりのところ信じられない、ファンタジーめいたこの世界の中でさえあり得べからざるらしい出来事の数々で、考察しようにもとっかかりがなさ過ぎるわけだけど。それでも最終的に、颯人の生まれ変わりである王子の生命がかかった話になるわけだから、他人事と投げ出すつもりにもなれないんだ。
静かに真っ暗闇の中、時が過ぎていく。
何度目かに時刻を確認すると、四時を過ぎていた。この季節ならそろそろ外が明るくなっているはずだけど、窓のないこの部屋はまだ真っ暗だ。
変わらず、エトヴィンとは繋がらない。陽が昇り次第作業を始めると言っていたから、そろそろ動き出しているのかもしれない。
――とにかくも無事、調薬をなし遂げてもらいたい。
王子の言う破滅の運命回避のためにまだいろいろと解決しなければならない案件はあるみたいだけど、何にせよ最優先は薬を完成させて病気を治すことだ。
考えていると。
部屋の外遠くの方で、かすかな動きの音が聞こえてきていた。
王宮の中で、生活活動が始まっているのか。おそらくのところまず動き出すのは使用人で、身分の高い人々はまだ起き出さないんじゃないかと思う。
実際、第三王子の寝室の方にまだまったく気配の動きはない。
そのまましばらく待機して、一時間も経過したろうか。
何気なく夢会話の探りを入れると、馴染みのある手応えがあった。
――え?
意外、に思ってしまう。
エトヴィンの手応え、なんだ。
この時間はまちがいなく調薬を始めているはずで、夢に繋がるなどあり得ないはずなんだけど。
やや狼狽して、呼びかけていた。
『エトヴィンさん、か?』
『え? あ――ハル殿?』
『どうしたんだ、眠っているのか?』
『え、いや――そんなはずは――え、え? ああ、そうだ!』
『何かあったのか?』
『こうしてはいられない――いや、え? 私はどうして――ああ――たいへんな事態なんだ!』
『落ち着いて。何があったんだ?』
一瞬、寝坊して慌てているのかと思ったんだけど。
どうも何か、思いがけない事態発生、ということのようだ。
『ああ、どうしたら――薬草が失われてしまったのです!』
『何だって? 研究室だっけ、厳重に保管していたはずじゃなかったか』
『そう――絶対安全なはずの自分の研究室で薬草を薬品に漬け、部屋の内外に信頼の置ける護衛を配置していたのです。今朝、陽が昇るのも待ちかねて研究室へ行ったときには無事そこにあり、薬分の抽出も十分、と確認されたのです。護衛にはさらにカルステンも加わり、こちらも信頼の置ける助手二人に手伝わせて、調薬の手順を始めたのです。それなのに――』
『何があったんだ』
『突然助手の一人が錯乱したように暴れ出し、室内に火を放ちました。結果、私ともう一人の助手は難を逃れましたが、薬草を始め付近の道具類はすべて消失、その当人自身も火に巻かれて焼死しました』
『はあ?』
『まったくわけが分かりません。もう五年来私の研究室で働いていて信用置けると考えていましたし、これまで上司の指示に逆らうことはまったくなかった男なのです』
『何と』
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